にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドS 3-3

「……なん、ですと?」
 聞こえた言葉が信じられなかったようで、セラが問い返す。
「行かない。あるかでぃあ何とかなんてトコ、行きたくない」
 ティトはもう一度、はっきりと自分の意思を告げる。
「ティト……」
「創志、怒ってる。震えてる……わたしは、創志の言葉を信じる」
 ティトの言葉が、創志の耳から全身に沁みわたる。
 創志は、自分の中の怒りがすうっと引いていくのを感じた。
「もう約束したもの。わたしは、創志と一緒にここを出るって」
「……おかしな人ですね、あなたも。どこの馬の骨ともしれない男のいうことを信じるのですか?」
「…………」
 セラの辛辣な言葉に、ティトは視線で答える。
 そこにあるのは、明らかな敵意。
「おかしいといえば、先程のデュエルでも不可解な点がありました。最後のターンであなたの場にあった2枚の伏せカード」
 創志が<サーマル・ジェネクス>を召喚し、<氷結界の虎将グルナード>に攻撃したときのことを言っているのだろう。
「1枚はもちろん<銀幕の鏡壁>でした。しかし、もう1枚の伏せカード……あれは<瞬間氷結>でしたね? なぜ使わなかったのです?」
 <瞬間氷結>――確か、魔法・罠カードの発動を無効にし、伏せ状態に戻すカードだ。
 2枚目を伏せていたのか……。
「<瞬間氷結>で<リミッター解除>を止めていれば、あなたは勝っていました。なぜです?」
 セラの問いに、ティトはちらりと創志を見る。
 そして、少し考えたあと口を開いた。
「わかんない」
 あまりにも簡潔な答えに、セラはおろか創志まで呆気にとられる。
「わかんないけど、あの攻撃は止めちゃいけない気がした……そうとしか言えない」
 言った張本人も首をかしげている。
(……そうか、俺は本当なら負けてたのか)
 ティトは手加減をしたわけではないだろうが、結果的には勝ちを手放したわけだから、同じだ。
 その事実を突き付けられ、創志は少し沈む。
 結局俺は、自分の実力でティトに勝ったわけじゃないのか――
「ついでにもう1つ言っておきますが」
 セラの声が創志の思考に割り込みをかける。
「<ジオ・ジェネクス>で<氷結界の龍グングニール>に攻撃する際、<リミッター解除>を使っていればもっと早く決着がついていましたからね。大方気づいていなかったんでしょうが」
「…………」
 しまった。<ジオ・ジェネクス>を召喚したことに浮かれていて、<リミッター解除>を手札に握っていたことをすっかり忘れていた。
 しかも、そのことをアルカディアムーブメントのヤツに教えられるとは……ますます情けなくなってきた。
「――で、どうすんだよ? ティトは行かないって言ってるぜ?」
 場を仕切りなおすと同時に自分の心を奮い立たせ、創志は告げる。
「……まさか、このまま私が引き下がるとでも?」
 眼鏡のレンズ越しに瞳をぎらつかせながら、ニヤリと笑うセラ。
 それでもまだ、笑顔の裏に隠された本性を見せようとはしない。
「どうやら先程のデュエルが、ティト様を変えた大きな要因である様子……それなら、この取引もデュエルで決着をつけることにしましょうか」
 そう言ったセラは、足元に転がっていたデュエルディスクを手に取る。
(何だ……? あんなところにデュエルディスクがあったか……?)
 創志の探りの視線を気にした風もなく、セラはデュエルディスクを装着する。
「早速始めましょうか。あなたには戦う理由が十分すぎるほどあるでしょう?」
 セラが指さしたのは――
「私が勝ったら、ティト様は我々と一緒に来てもらいます。負ければ、この場はおとなしく引き下がりましょう」
「……上等だ。やってやるよ!」
 指名を受けた創志は、ティトを自分の背後に隠すように立ち上がる。
「創志」
「挑発だってことは百も承知だ。だけど――」
 デュエルディスクが展開する。
 それに合わせて、創志の中で闘志がみなぎってくる。
「ここは引けねぇんだ」
 ティトは創志のシャツの裾を優しくつかみ、
「ん」
 1回だけ頷いた。
「必ず守ってみせる。そんで、一緒にここを出よう」
 目の前に立つ細身の男は、薄気味悪い笑みを浮かべる。
 あんな奴に、ティトを渡すわけにはいかない。