にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドS 2-5

(――落ち着け! 落ち着けッ! 両足が動かなくなっただけだ!)
 氷漬けになった両足は動かすことができなかったが、感覚はある。おそらくは本当に氷漬けになっているわけではなく、ティトの力でそれに近い状態にしているのだろう。
 そして、ライフが削られるたびに氷の浸食が進んでいき――ゼロになったとき、創志はエントランスに飾られる氷像たちの仲間になる。
「怖い?」
 創志の困惑を見透かしたかのように、ティトがつぶやく。
「ここに並んでいる氷像たちは、体は仮死状態みたいなものだけど、意識がある。つまり――」
 続く言葉を、創志は心中で拒んだ。が、ティトの口は動き続け、
「生きたまま、永遠に閉じ込められるの」

 ――その瞬間、広間の氷像たちの目が一斉に創志に向いた。

 そんな錯覚に陥る。
「……怖いわけ、あるかよ。要は勝てばいいんだろ」
 精一杯の虚勢を張る。
「そう」
 少女は表情を変えることなく、たった2文字の答えを返す。
「――ひとつ、いいか」
「なに?」
 創志は気持ちを切り替える意味で、大きく深呼吸する。
「俺が勝ったら、ここにいる人たちを全員解放してくれ」
「…………?」
 意味が分からなかったようで、ティトは首をかしげる
「……どういうこと?」
「そのまんまの意味だ。ここで氷漬けになっている人たちを、元に戻してくれ」
「……別にいいけど。わたしは負けないから」
 言葉こそ強気だったが、創志がどうしてこんなことを言い出したのか理由が分からず、ティトは困惑していた。
「よし!」
 ――これで、ますます負けられなくなった。
 元々、創志は人のために動く人間だ。信二の行方に加えて、氷漬けにされている人々の救出――敗北できない理由を増やして、無理矢理恐怖心を抑え込む。
「……わたしのターンは終わり」
「俺のターンだ! ドロー!」
 せっかく気持ちを切り替えたというのに、ドローしたカードは<リミッター解除>。<氷結界の虎将グルナード>を倒せる切り札だが、<氷結界の封魔団>の効果で魔法は封じられている。
(あいつは予知能力も持ってるのかよ)
 創志は舌打ちをする。まるで、<リミッター解除>をドローすることを読んでいたかのように、<氷結界の封魔団>を召喚した。
 魔法ロック効果は、<氷結界の封魔団>がフィールド上に表側表示で存在しなければ適用されない。手札の<ジェネクス・コントローラー>を召喚し、<氷結界の封魔団>を倒してから<リミッター解除>を使う手もある。
 創志のフィールドががら空きになってしまうが、手札には<正統なる血統>がある。これを伏せておけば、<ジェネクス・コントローラー>を蘇生し、相手モンスターを迎撃することができる。
 しかし、そんな手が通るだろうか。
 2ターン目とは状況が違う――即決速攻が売りとはいえ、甘い考えに身をゆだね詰めを誤れば、そこに待っているのは「生きたままの死」である。
<氷結界の虎将グルナード>の反撃は痛いが、ここは<ジェネクス・ニュートロン>で<氷結界の封魔団>を倒す。
「バトルフェイズだ! 俺は――」
「待って」
 再びティトの制止が入る。
「罠カードを使う。魂の氷結。バトルフェイズをスキップ」

<魂の氷結>
通常罠
自分のライフポイントが相手のライフポイントより
2000以上少ない時に発動する事ができる。
相手の次のバトルフェイズをスキップする。

 強制的にメインフェイズ2に移行する。攻撃ができなかったのであれば、守りを固めるしかない。
(さっきダイレクトアタックを受けたのはこのためだったのか……?)
「モンスターをセット。ジェネクス・ニュートロンを守備表示にし、カードを1枚セットしてターンエンドだ」
「わたしのターン」
 ドローしたカードを見たティトの瞳がわずかに揺らめく。
 そこにある感情は――
「わたしは氷結界の風水師を召喚」
 りぃん……という鈴の音が響き、鏡を提げた水色の巫女が現れる。

<氷結界の風水師>
チューナー(効果モンスター)
星3/水属性/魔法使い族/攻 800/守1200
手札を1枚捨て、属性を1つ宣言して発動する。
宣言した属性のモンスターはこのカードを
攻撃対象に選択する事ができない。
この効果はこのカードがフィールド上に
表側表示で存在する限り1度しか使用できない。

(チューナーモンスター――まさか!?)
「氷結界の封魔団に、風水師をチューニング」
 <氷結界の風水師>の持つ鏡が光を放ち、<氷結界の封魔団>と共に、光の中に包まれる。
「――全てを貫く絶氷の槍」
 大気が震える。これは錯覚なんかじゃない――!
 光の中からバキバキィ! と音を立て、氷の塊が刃のように突き出てくる。まるで氷山を作り上げるかのごとく、無数に生え出る氷塊。
 見上げるほど広がったそれが――

シンクロ召喚。輝け――氷結界の龍グングニール」

 一瞬にして、砕け散った。
 氷の屑が雪のように降り注ぐ中で、その存在を顕示する、朱の光を宿した氷の龍。
 創志を敗北へと導く象徴が、啼いた。

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