遊戯王 New stage 番外編 宝石を継ぐもの-3
◆◆◆
「テルはいーっつも手を抜くです! 何度言っても、リソナと本気でデュエルしてくれないです!!」
「それはよくありませんね……」
老若男女様々な人々で賑わう、飲食店が軒を連ねたラリラリストリート。食欲をそそる魅惑的な香りの中を歩きながらも、リソナはまだ不機嫌だった。
「子供だから、と余計な気を回すのは、その人を侮辱することになりかねません。神楽屋さんには、あとで私のほうから言っておきます」
リソナと手をつないだ盲目の女性、イルミナは真剣な様子で告げるが、
「自分が勝つまでやめないリソナにも問題はあると思いますわ……」
その隣を歩くビビアンは、やや呆れ顔だった。
「だって、負けっぱなしは悔しいです!」
「けど、限度がありますわよ。勝つまでがむしゃらに続けるよりも、何故負けてしまったのか敗因を分析することのほうが重要だと思いますわ」
「相手もつかれちゃうしね」
「むー……」
ビビアンとティト、2人の同意を得られず、リソナはますます唇を尖らせる。
「それでティト。この間のリベンジマッチのことなのですが……」
「……びびあんも負けず嫌いだよね」
「そ、そんなことはありませんわ! デッキを改良したので、実戦できちんと回るかどうかを試したいだけです!」
「ふふ。向上心があるのはいいことだと思いますよ」
「そ、そんなことより! 今日はどこに行きますの!?」
顔を赤くしたビビアンが強引に話題を変えようとするが、
「……テルに本気でデュエルしてもらうには、どうしたらいいです?」
リソナはそれに気付かず、デュエルの話を続行する。ビビアンはますます顔を赤くしたが、深刻な様子のリソナを見て、息を整えて気持ちを切り替えてから答える。
「それはもちろん、相手が本気を出さざるを得ないほど強くなることですわ」
「……ティトもそう思うです?」
「うん」
頷いたティトは、リソナの瞳を真っ直ぐと見つめる。
「かぐらやが、本気で『リソナには負けたくない』って思えば、きっと手加減はしない」
「…………」
「私はカードのことはよく分かりませんが……リソナちゃんの真剣さが伝われば、きっと神楽屋さんも答えてくれますよ」
ティトやイルミナのアドバイスはうれしかったが、具体的にどうすればいいかは分からない。リソナが悶々とした気持ちを抱えていると、ふと前方に人だかりができていることに気付いた。
「あら。何でしょうか」
「デュエルしてるみたいですわね」
ビビアンが呟くと、4人は無意識のうちに人だかりへと歩みを進めていた。
「うー、見えないですー!」
「仕方ないですわね……」
ビビアンがリソナの両脇に手を入れ、持ち上げてくれる。が、いかんせんビビアンもそれほど身長が高いわけでもないので、かろうじて中が見える程度だった。
「何かあったんですか?」
ビビアンとリソナが悪戦苦闘している横で、イルミナが観客の1人に声をかける。
「ああ……あそこでデュエルしてる男が、相手の女の子をナンパしたんだって。女の子は断ってたらしいんだけど、相手があんまりにもしつこいもんだから、デュエルで勝ったら付き合うって条件を出したんだと」
「そうなんですか」
ちょうどリソナの正面に、ナンパを仕掛けた男がデュエルディスクを構えているのが見える。いかにもといった感じのチャラついた格好の若者で、後ろには仲間であろう複数の男たちが野次を飛ばしていた。
一方、相手の女性はこちらに背を向けていて、長い金髪であることくらいしか分からない。
「もう、終わりみたいだね」
ティトの言う通り、デュエルはまさに最終局面のようだ。男の顔には焦りが滲んでいるが、フィールドにはモンスターも伏せカードもない。
「バトルフェイズに入ります」
凛とした女性の声が響き渡り、観客がどよめく。男が「待ってくれ」と叫んだが、金髪の女性は耳を貸す気がないようだ。
「それはよくありませんね……」
老若男女様々な人々で賑わう、飲食店が軒を連ねたラリラリストリート。食欲をそそる魅惑的な香りの中を歩きながらも、リソナはまだ不機嫌だった。
「子供だから、と余計な気を回すのは、その人を侮辱することになりかねません。神楽屋さんには、あとで私のほうから言っておきます」
リソナと手をつないだ盲目の女性、イルミナは真剣な様子で告げるが、
「自分が勝つまでやめないリソナにも問題はあると思いますわ……」
その隣を歩くビビアンは、やや呆れ顔だった。
「だって、負けっぱなしは悔しいです!」
「けど、限度がありますわよ。勝つまでがむしゃらに続けるよりも、何故負けてしまったのか敗因を分析することのほうが重要だと思いますわ」
「相手もつかれちゃうしね」
「むー……」
ビビアンとティト、2人の同意を得られず、リソナはますます唇を尖らせる。
「それでティト。この間のリベンジマッチのことなのですが……」
「……びびあんも負けず嫌いだよね」
「そ、そんなことはありませんわ! デッキを改良したので、実戦できちんと回るかどうかを試したいだけです!」
「ふふ。向上心があるのはいいことだと思いますよ」
「そ、そんなことより! 今日はどこに行きますの!?」
顔を赤くしたビビアンが強引に話題を変えようとするが、
「……テルに本気でデュエルしてもらうには、どうしたらいいです?」
リソナはそれに気付かず、デュエルの話を続行する。ビビアンはますます顔を赤くしたが、深刻な様子のリソナを見て、息を整えて気持ちを切り替えてから答える。
「それはもちろん、相手が本気を出さざるを得ないほど強くなることですわ」
「……ティトもそう思うです?」
「うん」
頷いたティトは、リソナの瞳を真っ直ぐと見つめる。
「かぐらやが、本気で『リソナには負けたくない』って思えば、きっと手加減はしない」
「…………」
「私はカードのことはよく分かりませんが……リソナちゃんの真剣さが伝われば、きっと神楽屋さんも答えてくれますよ」
ティトやイルミナのアドバイスはうれしかったが、具体的にどうすればいいかは分からない。リソナが悶々とした気持ちを抱えていると、ふと前方に人だかりができていることに気付いた。
「あら。何でしょうか」
「デュエルしてるみたいですわね」
ビビアンが呟くと、4人は無意識のうちに人だかりへと歩みを進めていた。
「うー、見えないですー!」
「仕方ないですわね……」
ビビアンがリソナの両脇に手を入れ、持ち上げてくれる。が、いかんせんビビアンもそれほど身長が高いわけでもないので、かろうじて中が見える程度だった。
「何かあったんですか?」
ビビアンとリソナが悪戦苦闘している横で、イルミナが観客の1人に声をかける。
「ああ……あそこでデュエルしてる男が、相手の女の子をナンパしたんだって。女の子は断ってたらしいんだけど、相手があんまりにもしつこいもんだから、デュエルで勝ったら付き合うって条件を出したんだと」
「そうなんですか」
ちょうどリソナの正面に、ナンパを仕掛けた男がデュエルディスクを構えているのが見える。いかにもといった感じのチャラついた格好の若者で、後ろには仲間であろう複数の男たちが野次を飛ばしていた。
一方、相手の女性はこちらに背を向けていて、長い金髪であることくらいしか分からない。
「もう、終わりみたいだね」
ティトの言う通り、デュエルはまさに最終局面のようだ。男の顔には焦りが滲んでいるが、フィールドにはモンスターも伏せカードもない。
「バトルフェイズに入ります」
凛とした女性の声が響き渡り、観客がどよめく。男が「待ってくれ」と叫んだが、金髪の女性は耳を貸す気がないようだ。
「――<ジェムナイトマスター・ダイヤ>でダイレクトアタック」
リソナの全身を衝撃が駆け巡り、心臓の鼓動が急に速くなったのを感じる。
剣閃を振り下ろす白銀の騎士は、神楽屋輝彦だけが使えるのだと思っていたモンスターだったからだ。
剣閃を振り下ろす白銀の騎士は、神楽屋輝彦だけが使えるのだと思っていたモンスターだったからだ。
<ジェムナイトマスター・ダイヤ> 融合・効果モンスター 星9/地属性/岩石族/攻2900/守2500 「ジェムナイト」と名のついたモンスター×3 このカードは融合召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚できる。 このカードの攻撃力は、自分の墓地の「ジェム」と名のついた モンスターの数×100ポイントアップする。 また、1ターンに1度、自分の墓地のレベル7以下の「ジェムナイト」と名のついた 融合モンスター1体をゲームから除外して発動できる。 エンドフェイズ時まで、このカードは除外したモンスターと同名カードとして扱い、 同じ効果を得る。
<ジェムナイトマスター・ダイヤ>は男のライフを削りきり、デュエルは金髪の女性の勝利で幕を閉じた。