にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage 番外編 ジェムナイトは砕けない-23

 ――この戦いが終わったら、お前にしかできないことを一緒に探してやる。
 言いかけた言葉を飲みこんで、神楽屋は豹里へと視線を戻す。
「……3日で築いたとは思えないほど美しい絆ですね。いやはや、立派なことだ。さすが正義の味方の先輩は私のような新参とは違いますね」
 ハハハ、と渇いた笑い声を漏らした豹里は、常に浮かべていた笑みを消した。
「だが、人の絆など罪の前では関係ない。罪を犯した人間は、どのような背景があろうとも、等しく罰せられるべきです」
「だから、このデュエルをやめる気はないって言いたいんだろ? ごたくはいい。さっさとデュエルを続けるぜ」
 強気な発言を返すものの、以前としてほたるを助ける具体案は思いつかない――
(……偽善者ぶってる場合じゃないか)
 正確には、ひとつだけ案はある。
 それは、豹里のライフを一撃でゼロにすると同時、最後の攻撃を実体化させ、豹里の意識を奪うことだ。サイコパワーは術者の意識が途切れると効果が消失するものがほとんどであり、ほたるを縛っている鎖は今なお豹里のコントロール下にあることから、豹里の意識を奪うことで鎖が勝手に暴走――なんて事態にはならないはずだ。デュエルが始まる直前の<ジェムナイト・ルビーズ>の攻撃や、先のターンの<ジェムナイト・パーズ>の連撃では、意識を奪う前に豹里がアクションを起こしてしまう危険性があった。
 問題は、実体化させる攻撃だ。首の後ろをトンと叩いて気絶させる、といった器用な真似はできない。やるとすれば、意識を失うほどの強烈な痛みを与えるしかない。今の神楽屋にとって、デュエル中に攻撃を実体化させるだけでもかなりの抵抗を感じるのだが、手段を選んでいる場合ではない。
「俺のターン、ドロー」
 痛む体に鞭打ち、神楽屋はカードをドローする。
 方法は決まった。あとは、相手に大きな傷を与えることへの覚悟のみ――
「俺は墓地の<ジェムナイト・ルマリン>を除外して<フュージョン>を手札に加える。そして、そのまま発動! 手札の<ガネット>と<エメラル>を融合させる!」

<ジェムナイト・ガネット>
通常モンスター
星4/地属性/炎族/攻1900/守   0
ガーネットの力を宿すジェムナイトの戦士。
炎の鉄拳はあらゆる敵を粉砕するぞ。

<ジェムナイト・エメラル>
効果モンスター
星4/地属性/岩石族/攻1800/守 800
自分フィールド上に表側表示で存在する通常モンスター1体と
このカードをゲームから除外し、自分の墓地に存在する
「ジェムナイト」と名のついた融合モンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを墓地から特殊召喚する。

 呼び出すのは、いくつもの戦場を共に駆け抜けてきた、最も信頼を置く相棒。
「真炎の輝きを焼きつけろ! 融合召喚……<ジェムナイト・ルビーズ>!」
 神楽屋のフィールドに真紅の輝きを放つ宝石が現れ、その中心から槍が突き出す。宝石が砕け、真紅の甲冑を纏った騎士――<ジェムナイト・ルビーズ>が姿を現した。

<ジェムナイト・ルビーズ>
融合・効果モンスター
星6/地属性/炎族/攻2500/守1300
「ジェムナイト・ガネット」+「ジェムナイト」と名のついたモンスター
このカードは上記のカードを融合素材にした融合召喚でのみ
エクストラデッキから特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する
「ジェム」と名のついたモンスター1体をリリースして発動する事ができる。
このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで
リリースしたモンスターの攻撃力分アップする。
また、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

「来ましたね。神楽屋君のエースモンスターが」
「ああ。お前の正義とやらを焼き尽くすためにな」
 一撃で葬る。そのために、神楽屋は伏せカードを起動する。
「さらにリバースカード<廃石融合>を発動! 墓地の<エメラル>と<ジェムレシス>を除外し――来い! <ジェムナイト・ジルコニア>!」

<廃石融合>
通常罠
自分の墓地から、融合モンスターカードによって決められた
融合素材モンスターをゲームから除外し、
「ジェムナイト」と名のついたその融合モンスター1体を融合召喚扱いとして
エクストラデッキから特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。

<ジェムナイト・ジルコニア>
融合モンスター
星8/地属性/岩石族/攻2900/守2500
「ジェムナイト」と名のついたモンスター+岩石族モンスター

 丸みを帯びた岩のような巨体の騎士が、剛腕を打ち鳴らし、<ジェムナイト・ルビーズ>の隣に並んだ。
「なるほど。伏せカードは<廃石融合>でしたか」
 <神聖騎士パーシアス>の攻撃力を上回る<ジェムナイト・ジルコニア>が召喚されても、豹里は動きを見せない。神楽屋のことを調べたのなら、当然<ジェムナイト・ルビーズ>の効果も知っているはずだ。
 豹里の場にある伏せカードは1枚。動きたくても動けなかったのか、それともこちらの攻撃を誘っているのか。
「考えても埒が明かねえか。行くぜ、<ルビーズ>の効果発動! <ジルコニア>をリリースして、エンドフェイズまで攻撃力を2900ポイントアップさせるぜ!」
 <ジェムナイト・ジルコニア>の体が炎に包まれ、燃え盛る紅の中に溶けていく。
 その炎は<ジェムナイト・ルビーズ>の槍に宿り、さらに激しく燃え上がる。
「――バトルフェイズ。<ジェムナイト・ルビーズ>で<神聖騎士パーシアス>を攻撃!」
 豹里の態度を見るに、彼が無策とは考えられない。
 だが、ここで攻撃を躊躇する気はなかった。
 攻撃力5400の<ジェムナイト・ルビーズ>の攻撃が通れば、残り2600ポイントしかない豹里のライフは尽きる。神楽屋の目論見通り、一撃で決着がつくのだ。
「クリムゾン・トライデントッ!」
 槍の穂先から放たれた炎が、三つ叉に分かれる。龍を模した炎の刃は、神聖騎士の構える盾をすり抜け、群青の鎧に深々と突き刺さる――
「――待っていましたよ。この一撃を!」
 瞬間。豹里の伏せカードが頭を上げる。
 パン! と音を立てて炎の龍が弾け、細かな粒子へと分解される。その粒子はゆるやかに流れながら、豹里の体に吸い込まれていった。
「防がれた――!?」
「防いだだけではありませんよ。私が発動した罠カード<ドレインシールド>は、攻撃を無効にし、その攻撃力分だけ自分のライフを回復します」

<ドレインシールド>
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
攻撃モンスター1体の攻撃を無効にし、
そのモンスターの攻撃力分だけ自分のライフを回復する。

「なっ……」
「<ルビーズ>の攻撃力は5400。私はその数値分だけライフを回復させていただきます」

【豹里LP2600→8000】

 豹里の顔に笑みが戻る。対照的に、神楽屋は顔をしかめるしかなかった。
 何らかの罠を伏せてあるだろうとは思っていたが、まさか<ドレインシールド>だとは思わなかった。<ジェムナイト・ルビーズ>の攻撃力を上げたことが裏目に出てしまった。豹里のライフは初期の倍にまで上昇し、<神聖騎士パーシアス>も健在。
(くそっ、<ジルコニア>で攻撃するべきだったか……)
 豹里の意識を奪うほどの攻撃。それにこだわったのがアダとなった。
「フフ、ここまで上手くいくとは予想外でしたね。先程の<ジェムナイト・パーズ>の攻撃の際、使おうかどうか迷ったのですが、温存しておいて正解でした。神楽屋君なら、確実に<ジェムナイト・ルビーズ>を出してくると思っていましたから」
「…………ッ」
 まんまと豹里の術中に嵌まってしまい、反論のしようがない。
「……俺は<パーズ>を守備表示に変更。カードを1枚伏せて、ターンエンドだ」
 たった一度の攻撃で、大きく戦局が傾いた。神楽屋は悔しさをこらえつつ、ターンを終了した。

【豹里LP8000】 手札2枚
場:神聖騎士パーシアス(攻撃)
【神楽屋LP700】 手札0枚
場:ジェムナイト・パーズ(守備)、ジェムナイト・ルビーズ(攻撃)、伏せ1枚