にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage 番外編 氷点下の結び目-4

 昼休み。
 創志の作ってくれたお弁当を食べ終えたティトは、第二デュエル場へと足を運ぶ。
 そこには、すでに対戦相手である金髪の少女が待ち構えていた。
「フフフ……待ちくたびれましたわよ、ティト・ハウンツ――ってほっぺにご飯粒が付いていますわよ」
「どこ?」
 ビビアンの指摘を受け、ティトはぺたぺたと自分の頬を触るが、なかなかご飯粒を見つけることができない。
「ああもうそこじゃありませんわ。仕方ないですわね。ちょっと動かないでいただけます?」
 制服のポケットからレースで縁取られた純白のハンカチを取り出したビビアンは、ティトの眼前まで近づくと、手にしたハンカチで頬を拭う。
「取れましたわ。全く、緊張感の欠片もありませんわね」
「ごめんなさい。それと、ありがとう」
「べ、別に礼を言われるほどのことではありませんわ」
 視線を泳がせたビビアンは、逃げるように身を翻して離れて行く。そして、ティトから適度に距離を取ったところで立ち止まり、デュエルディスクを展開した。
「それでは、始めますわよ。準備はよろしくて?」
「うん」
 左腕に装着したデュエルディスクを展開したティトは、デッキを装着したあと、静かに頷く。
 以前はコントロールすることが難しかったサイコパワー――デュエルモンスターズのカードを実体化させたり、カードの効果を現実に干渉させたりする力――だが、あれから訓練を重ねたことで、今ではその力を制御することができる。
(サイコパワーは、絶対に使わないようにしないと)
 自らの力が露見することを恐れるのではなく、純粋に相手の身を気遣うことで、ティトはサイコパワーの封印を固く心に誓う。
「野次馬が多いことが気になりますが……今は良しとしましょう。私が貴女より強いという事実を証明する人間は、多いに越したことはありませんし」
 第二デュエル場には、ティトとビビアンのデュエルの話を聞きつけ、観戦しようとする生徒がちらほらと見かけられた。昼食後の暇つぶしにはちょうどいいといったところだろう。
「では――開戦といきましょう!」
「デュエルスタート、だね」
 片方は仰々しく、片方は間延びした声で、それぞれデュエルスタートの言葉を告げる。
「私が先攻をもらいますわ。ドロー!」
 彫刻のように整ったビビアンの指先が、カードをドローする。
「フフ、素晴らしい手札ですわね。私はモンスターをセットし、ターンを終了しますわ」
 ビビアンの場にセットモンスターが現れる。おそらくは、リバース効果を持ったモンスターかリクルーターをセットしたのだろう。彼女の自信満々といった表情から、苦し紛れの様子見ではないことは容易に想像がつく。

【ビビアンLP4000】 手札5枚
場:裏守備モンスター
【ティトLP4000】 手札5枚
場:なし

「わたしのターン。ドロー」
 対し、ティトの初手はそれほど恵まれているとは言えない。
 しかし、最初にドローしたカードで、早くもそれは覆された。
「<強欲なウツボ>を発動。手札の水属性モンスター2体……<氷結界の御庭番>と<氷結界の決起隊>をデッキに戻して、3枚のカードをドローする」

<強欲なウツボ>
通常魔法
自分の手札から水属性モンスター2体をデッキに戻し、
自分のデッキからカードを3枚ドローする。

「<氷結界>……それが、貴女の使う氷デッキでしたわね。しかも、氷帝様の使う『インフィニット・ドライブ』を再現するとは、なかなかやりますわ」
 「インフィニット・ドライブ」が何を指しているかは分からなかったが、とりあえず2体の水属性モンスターを戻し、3枚のカードを引く。
「<氷結界の武士>を召喚」
 ティトが呼びだしたのは、東洋の鎧を纏った武士だ。その鎧は氷で出来ており、荒々しく研磨されている。手にする刀の刃も氷で、<氷結界の武士>はその刀を正眼に構える。

<氷結界の武士>
効果モンスター
星4/水属性/戦士族/攻1800/守1500
フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが表側守備表示になった時、
このカードを破壊し、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 攻撃力は1800。ティトが使う<氷結界>の下級モンスターの中では、最高クラスの攻撃力を持つモンスターだ。切り込み隊長としてはうってつけである。
「バトルフェイズに。<氷結界の武士>で伏せモンスターを攻撃」
 攻撃宣言を受けた氷の武士が、スゥ、と足音ひとつなく相手に接近していく。
 動作は摺り足だ。大地を蹴るのではなく滑ることによって、移動を行っている。
 まるでリンクの上を滑るスケート選手のように移動した<氷結界の武士>は、滑る勢いのまま伏せモンスターを斬りつける。
 氷の刃が、セットモンスターを両断する――
 が。
「迂闊ですわよ」
 突如、<氷結界の武士>の姿が消える。
 正確に表すなら、「喰われた」のだ。
 カードがリバースし、現れたのは微笑ましささえ感じさせる雪だるまだった。
 だが、胴体の最下部――そこには、雪だるまを隠れ蓑とする獰猛な魔物の牙が見えていた。
「<スノーマンイーター>がリバースした時、表側表示で存在するモンスター1体を破壊しますの。さらに、<スノーマンイーター>の守備力は1900。<氷結界の武士>では戦闘破壊できませんわ」

<スノーマンイーター>
効果モンスター
星3/水属性/水族/攻   0/守1900
このカードがリバースした時、
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して破壊する。

【ティトLP4000→3900】

 モンスターを失ったばかりか、微量とはいえ反射ダメージも受けた。完全にこちらの攻撃を受け流された形である。
「……カードを2枚伏せて、ターンエンド」
 実力者、という話は本当のようだ。まだ1度の攻防を終えただけだが、ティトにはそれだけで十分だった。
 ビビアン・サーフは強い。そう確信した。

【ビビアンLP4000】 手札5枚
場:スノーマンイーター(守備)
【ティトLP3900】 手札3枚
場:伏せ2枚