オリジナルstage 【EP-17 サイドM】
コツ、と革靴が石畳を踏みしめた。
トカゲ頭に誘導された先にあった装置――それは確かに転送装置だったようだ。
外に出た輝王の視界に広がる景色は、先程までいた「井戸」の中とは似ても似つかない。
ただ、広かった。
石畳の地面と、低い灰色の天井がどこまでも続いており、四方を見回しても壁はおろか何一つ見当たらない。太平洋のど真ん中にいきなり放り込まれたような感じだった。
(やはり、罠だったか……?)
トカゲ頭の話では、転送された先に「主」が待っており、その「主」を倒せば元の世界に帰れるとのことだったが……。
主らしき人物の姿は見えず、人の気配は皆無。
加えて、どちらに向かって歩けばいいのかも定かではない。
「…………」
輝王はジャケットのポケットから方位磁石を取り出す。方位が分かったとしても気休めにしかならないが、ただ歩き回るよりもマシだ。
そう考えたのだが、肝心の方位磁石は狂ったようにぐるぐると回転しているだけで、明確な方位を指し示してはくれなかった。
転送装置に戻ってパネルを叩いてみるが、反応は無し。一度きりという言葉に偽りはなかったようだ。
(さて、どうしたものか……)
戒斗や愛城、ティトを助けに向かう代わりにここに来ているのだ。呆けている暇はない。
とりあえず、周囲の様子を探ってみることにした。
転送装置が見える範囲を歩き回り、変わったものはないかどうか目を凝らす。
(何も無い……か。まるで今の俺のようだな)
探索を続けながら、輝王は物思いにふける。
かつて、輝王の原動力となっていたのは復讐心だった。
親友である高良火乃……彼を殺した犯人を見つけ出し、必ず裁きを与えると息巻いていた。
その次は、少女を手助けしたいというお節介だ。
偽りの記憶を持ちながらも、仲間を助けたいと願った少女に、力を貸したいと思った。そのために、輝王は再び剣を取った。
では、今は?
では、それ以前は?
輝王は「市民の安全を守るため」なんてお題目のためにセキュリティに入ったのではない。
人を救いたいという思いは確かにあった。
けど、それ以上に――
トカゲ頭に誘導された先にあった装置――それは確かに転送装置だったようだ。
外に出た輝王の視界に広がる景色は、先程までいた「井戸」の中とは似ても似つかない。
ただ、広かった。
石畳の地面と、低い灰色の天井がどこまでも続いており、四方を見回しても壁はおろか何一つ見当たらない。太平洋のど真ん中にいきなり放り込まれたような感じだった。
(やはり、罠だったか……?)
トカゲ頭の話では、転送された先に「主」が待っており、その「主」を倒せば元の世界に帰れるとのことだったが……。
主らしき人物の姿は見えず、人の気配は皆無。
加えて、どちらに向かって歩けばいいのかも定かではない。
「…………」
輝王はジャケットのポケットから方位磁石を取り出す。方位が分かったとしても気休めにしかならないが、ただ歩き回るよりもマシだ。
そう考えたのだが、肝心の方位磁石は狂ったようにぐるぐると回転しているだけで、明確な方位を指し示してはくれなかった。
転送装置に戻ってパネルを叩いてみるが、反応は無し。一度きりという言葉に偽りはなかったようだ。
(さて、どうしたものか……)
戒斗や愛城、ティトを助けに向かう代わりにここに来ているのだ。呆けている暇はない。
とりあえず、周囲の様子を探ってみることにした。
転送装置が見える範囲を歩き回り、変わったものはないかどうか目を凝らす。
(何も無い……か。まるで今の俺のようだな)
探索を続けながら、輝王は物思いにふける。
かつて、輝王の原動力となっていたのは復讐心だった。
親友である高良火乃……彼を殺した犯人を見つけ出し、必ず裁きを与えると息巻いていた。
その次は、少女を手助けしたいというお節介だ。
偽りの記憶を持ちながらも、仲間を助けたいと願った少女に、力を貸したいと思った。そのために、輝王は再び剣を取った。
では、今は?
では、それ以前は?
輝王は「市民の安全を守るため」なんてお題目のためにセキュリティに入ったのではない。
人を救いたいという思いは確かにあった。
けど、それ以上に――
憧れていたのだ。高良火乃に。
彼のようになりたかった。彼のように生きてみたかった。
だから、彼の後を追って、セキュリティに入った。
そして、今。
輝王は彼が使っていたデッキ<ドラグニティ>を手にし、迷いを抱いている。
自分は、本当にこのデッキを使いこなせているだろうか。
火乃とは別の形で、<ドラグニティ>のカードを生かすことができているのだろうか。
答えなど無い。カードの生かし方などデュエリストによって千差万別だし、どれが正解というわけでもない。
それでも考えてしまうのは、「芯の通った強さ」を目にしたからだ。
愛城、戒斗、ティト……彼らは強い。その強さは、輝王が持ち合わせていないものだ。
自分の力を信じ、己が道を突き進む。
輝王は、その道が見えていないのだ。
この空間のように、方角も分からないままただ漠然と広がっている。
だから、彼の後を追って、セキュリティに入った。
そして、今。
輝王は彼が使っていたデッキ<ドラグニティ>を手にし、迷いを抱いている。
自分は、本当にこのデッキを使いこなせているだろうか。
火乃とは別の形で、<ドラグニティ>のカードを生かすことができているのだろうか。
答えなど無い。カードの生かし方などデュエリストによって千差万別だし、どれが正解というわけでもない。
それでも考えてしまうのは、「芯の通った強さ」を目にしたからだ。
愛城、戒斗、ティト……彼らは強い。その強さは、輝王が持ち合わせていないものだ。
自分の力を信じ、己が道を突き進む。
輝王は、その道が見えていないのだ。
この空間のように、方角も分からないままただ漠然と広がっている。
……こんな俺が、主に勝てるのか?
気がつくと、無意識のうちに小石を蹴飛ばしていた。
跳んだ小石が、何かに当たって跳ね返る。
(――跳ね返る?)
輝王がうつむき気味だった姿勢を真っ直ぐ戻すと同時、
跳んだ小石が、何かに当たって跳ね返る。
(――跳ね返る?)
輝王がうつむき気味だった姿勢を真っ直ぐ戻すと同時、
「――相変わらず小難しいこと考えてやがるな? 正義」
ひどく懐かしい声が、響いた。