遊戯王オリジナルstage 【ep-02 サイドM】
青年――永洞戒斗は言った。自分の腕が信じられないような決闘者は、絶対に勝つことができないと。
確かに、戒斗からは己が力への絶対的な自信が溢れ出ている。どこまでも力を追い求める貪欲さが、彼の瞳に輝きを宿しているのだろう。
「俺が先攻をもらうぜ」
高まる緊張感を楽しむような笑みを浮かべた戒斗が、最初のカードをドローする。
「……モンスターをセット。カードを2枚伏せてターンエンドだ」
裏守備モンスターで守りを固め、伏せカードで相手を揺さぶる。模範的なプレイングだ。
しかし――
「どォした? お前のターンだぜ」
何故だろうか。戒斗のフィールドからは、守りの気配が一切感じられない。
セットモンスターも、伏せカードも、全て次なる攻撃への布石――そんな気配が漂っている。
(……考えすぎか。悪い癖だな)
この<ドラグニティ>デッキを使うようになってから、輝王は今まで以上に慎重になった。必要以上に相手の動きを探り、必要以上に先を見据えたプレイングをしてしまう。
「……失敗のビジョンばかり浮かべていては、成功するものもしないか」
「あン?」
「独り言だ。気にするな」
自嘲めいた笑みを作った輝王は、ゆっくりとカードをドローした。
確かに、戒斗からは己が力への絶対的な自信が溢れ出ている。どこまでも力を追い求める貪欲さが、彼の瞳に輝きを宿しているのだろう。
「俺が先攻をもらうぜ」
高まる緊張感を楽しむような笑みを浮かべた戒斗が、最初のカードをドローする。
「……モンスターをセット。カードを2枚伏せてターンエンドだ」
裏守備モンスターで守りを固め、伏せカードで相手を揺さぶる。模範的なプレイングだ。
しかし――
「どォした? お前のターンだぜ」
何故だろうか。戒斗のフィールドからは、守りの気配が一切感じられない。
セットモンスターも、伏せカードも、全て次なる攻撃への布石――そんな気配が漂っている。
(……考えすぎか。悪い癖だな)
この<ドラグニティ>デッキを使うようになってから、輝王は今まで以上に慎重になった。必要以上に相手の動きを探り、必要以上に先を見据えたプレイングをしてしまう。
「……失敗のビジョンばかり浮かべていては、成功するものもしないか」
「あン?」
「独り言だ。気にするな」
自嘲めいた笑みを作った輝王は、ゆっくりとカードをドローした。
【戒斗LP4000】 手札3枚
場:裏守備モンスター、伏せ2枚
【輝王LP4000】 手札5枚
場:なし
場:裏守備モンスター、伏せ2枚
【輝王LP4000】 手札5枚
場:なし
ドローフェイズを終えた輝王は、6枚になった手札を順繰りに見やる。
悪くない初手だが、かといって何の策もないまま強攻に出るのは躊躇われる。
戒斗は輝王が使っているカードを知っているようなことを言っていたが、こちらは相手のデッキに関して何の情報も持ち合わせていない。
「1ターン目から随分と長考じゃねェか。見えねえ敵とでも戦ってンのか?」
戒斗が挑発めいた言葉を吐くが、輝王は応じない。
攻め時を誤るな。慎重になりすぎるのは問題だが、かといって無我夢中で攻め込めばいいというものではない。ここは、相手の出方を窺わせてもらうとしよう。
「モンスターをセットする。カードを1枚伏せて、俺もターンを終了する」
「……なァるほど」
攻撃しなかったことを揶揄されるかと思ったが、戒斗は意味深に頷いただけで、それ以上言葉を続けようとはしなかった。
悪くない初手だが、かといって何の策もないまま強攻に出るのは躊躇われる。
戒斗は輝王が使っているカードを知っているようなことを言っていたが、こちらは相手のデッキに関して何の情報も持ち合わせていない。
「1ターン目から随分と長考じゃねェか。見えねえ敵とでも戦ってンのか?」
戒斗が挑発めいた言葉を吐くが、輝王は応じない。
攻め時を誤るな。慎重になりすぎるのは問題だが、かといって無我夢中で攻め込めばいいというものではない。ここは、相手の出方を窺わせてもらうとしよう。
「モンスターをセットする。カードを1枚伏せて、俺もターンを終了する」
「……なァるほど」
攻撃しなかったことを揶揄されるかと思ったが、戒斗は意味深に頷いただけで、それ以上言葉を続けようとはしなかった。
【戒斗LP4000】 手札3枚
場:裏守備モンスター、伏せ2枚
【輝王LP4000】 手札4枚
場:裏守備モンスター、伏せ1枚
場:裏守備モンスター、伏せ2枚
【輝王LP4000】 手札4枚
場:裏守備モンスター、伏せ1枚
「俺は、<幻魔皇ラビエル>を墓地に送る」
「な……!?」
戒斗の一言で、その推測は早くも崩れ去った。
<幻魔皇ラビエル>。
そのカードについて、輝王は詳しい知識を持ち合わせていない。昔、セキュリティのデータベースで浅い情報を閲覧しただけだ。「三幻魔」と呼ばれる3枚のカードの内の1枚で、かつてデュエルアカデミアで起きた事件で恐るべき力を振るったと書かれていた。
詳しい効果は分からなくとも、戒斗の墓地でその存在を誇示し続ける<幻魔皇ラビエル>のプレッシャーが、幻魔の危険性を強引に分からせてくる。
――いや。あのモンスターは、「危険」なんてレベルではない。
それだけ強力なモンスターならば、墓地からの蘇生は容易ではないはずだ。すでに蘇生させる手段は用意している、ということだろうか。
「『ドローに賭ける』なんて真似は、フィクションの世界の主人公がやるもンだ。現実で通用するもンじゃねえ。そう思わねェか?」
そう言って、戒斗は遠くを見るように視線を上げる。
「……一理ある、とだけ言っておこうか」
<幻魔皇ラビエル>の存在に冷や汗を流しながら、それでも輝王は態度を崩さずに言葉を返す。
確かに、漫画やアニメの主人公は、絶体絶命の場面で起死回生のカードをドローし、華麗な逆転劇を演じて見せる。
現実はそう甘くない。いくらデッキを信じてカードをドローしたところで、望んだカードが引けるとは限らない。
だが。
ドロー1つで劣勢を引っ繰り返す決闘者を、輝王は知っていた。
どんなに緻密な戦略を組み立てても、1回のドローで全てを引っ繰り返される。そんな相手と、輝王は毎日デュエルしていたのだ。
だから、戒斗の言葉には頷けない。
「……まだこっちから動くことはしねえ。ターンエンドだ」
それに、輝王自身にも覚えがある。
デッキを信じ、勝利を願い、そうしてドローしたカードが、逆転への鍵になったことを。
戒斗の一言で、その推測は早くも崩れ去った。
<幻魔皇ラビエル>。
そのカードについて、輝王は詳しい知識を持ち合わせていない。昔、セキュリティのデータベースで浅い情報を閲覧しただけだ。「三幻魔」と呼ばれる3枚のカードの内の1枚で、かつてデュエルアカデミアで起きた事件で恐るべき力を振るったと書かれていた。
詳しい効果は分からなくとも、戒斗の墓地でその存在を誇示し続ける<幻魔皇ラビエル>のプレッシャーが、幻魔の危険性を強引に分からせてくる。
――いや。あのモンスターは、「危険」なんてレベルではない。
それだけ強力なモンスターならば、墓地からの蘇生は容易ではないはずだ。すでに蘇生させる手段は用意している、ということだろうか。
「『ドローに賭ける』なんて真似は、フィクションの世界の主人公がやるもンだ。現実で通用するもンじゃねえ。そう思わねェか?」
そう言って、戒斗は遠くを見るように視線を上げる。
「……一理ある、とだけ言っておこうか」
<幻魔皇ラビエル>の存在に冷や汗を流しながら、それでも輝王は態度を崩さずに言葉を返す。
確かに、漫画やアニメの主人公は、絶体絶命の場面で起死回生のカードをドローし、華麗な逆転劇を演じて見せる。
現実はそう甘くない。いくらデッキを信じてカードをドローしたところで、望んだカードが引けるとは限らない。
だが。
ドロー1つで劣勢を引っ繰り返す決闘者を、輝王は知っていた。
どんなに緻密な戦略を組み立てても、1回のドローで全てを引っ繰り返される。そんな相手と、輝王は毎日デュエルしていたのだ。
だから、戒斗の言葉には頷けない。
「……まだこっちから動くことはしねえ。ターンエンドだ」
それに、輝王自身にも覚えがある。
デッキを信じ、勝利を願い、そうしてドローしたカードが、逆転への鍵になったことを。
【戒斗LP4000】 手札3枚
場:裏守備モンスター、伏せ2枚
【輝王LP4000】 手札4枚
場:裏守備モンスター、伏せ1枚
場:裏守備モンスター、伏せ2枚
【輝王LP4000】 手札4枚
場:裏守備モンスター、伏せ1枚