にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王オリジナルstage 【ep-03 サイドS】

「それじゃ、話を戻しましょう。僕達も創志と同じで、怪しい決闘者が<次元誘爆>を発動したあと、気が付いたらここにいたんです」
「おいちょっと待て」
「……何ですか?」
 せっかく話を仕切り直したというのに、いきなり水を差された。といった感じの不満を顕わにする純也。だがここはツッコんでおかなければなるまい。
「なんで俺のこと呼び捨てにしてるわけ? お前年下だろ?」
「えっ? だってさっき、呼び捨てで構わないって言ったじゃないですか」
「それはかづなに対してだ! お前は男で年下なんだから、ちゃんと『さん』つけろよ」
「……分かりましたよ、創志『さん』」
 ヤケに「さん」を強調し、純也はわざとらしくため息を吐く。
(クソガキィ……!)
 コイツとは根本的に相性が合わない。聞き分けのいい信二とはエライ違いだ。
「じゃ、話を続けますよ。怪しい決闘者が<次元誘爆>を発動した時――」
「ちょっと待つのじゃ!!」
「……何ですか?」
 今度は別の方面からストップがかかり、純也がうんざりとした様子を見せる。
「お主ら、何か大切なことを忘れてないかの?」
 そう言って、切は額に青筋を浮かべながら他の3人を見回す。
「……忘れてること? 何だそりゃ」
 創志は首をかしげる。ジト目で睨まれても、分からないのだから答えようがない。
 すると、かづなが大切なことを思い出したかのように手を叩き、
「そういえば、まだ銃刀法違反さんの名前を聞いてませんでしたね」
「銃刀法違反さんではない! わしには友永切という名前があるのじゃ!」
 フォロー(?)を入れたが、結局切は怒りだしてしまった。
「……ともかく、これで自己紹介は済みましたよね。さっさと状況を整理してしまいましょう」
 純也が再度場を仕切り直す。切はまだ不服そうだったが、かづなになだめてくれたおかげで、余計な口は挟まなかった。
「僕達がこの世界に飛ばされた原因は、<次元誘爆>を使ったあの決闘者の力で間違いないと思います。問題は、ここは一体どこなのかということ。そして……」

「待テ」

「――もう! さっきから何なんですか! 全然話が進まない――」
 三度目の横槍を入れられた純也が、とうとう爆発しそうになる。
 が。
 声の主の姿を確認した瞬間、その表情が凍りついた。
 気配は無かった。
 しかし、創志たちの目の前に、その人物は確かに存在していた。
 首から上は麻袋、首から下は黒のローブにすっぽりと覆われており、一切肌の露出が無い。体格だけ見れば成人男性だと判別できるが、果たしてその中身が本当に人間なのかは定かではない。
「なっ……!?」
「こやつ、いつの間に……!」
 創志は瞬時にローブの人物と距離を取る。
 隣にいた切も、距離を取りつつ腰に差していた刀を抜く。かづなや純也も場慣れしているようで、わざわざ指示を飛ばさずとも的確に動いてくれていた。
 いい意味で緩んでいた空気が一気に引き締まり、嫌が応にも緊張感が高まる。
 突如現れた得体の知れない人物は、スッと左腕を持ち上げる。
 そこには、ごく普通のデュエルディスクが装着されていた。
「デュエルダ」
 麻袋の隙間から、くぐもった声が聞こえてくる。腹の底に響くような低い声からして、やはり中身は男だろうか。
 そう考えた直後、創志たちの周囲の地面がいきなり「せり上がる」。
「これは――!?」
 突然のことに対応が遅れる。
 ゴゴゴと地響きを立てながらせり上がった地面は、創志たちを囲む土の壁を形成していく。
「くそ、逃げ道を塞がれたのか……!?」
「……むむむ。登るのはちょっと厳しそうな高さです」
「創志! かづな! 下がるのじゃ!」
 5メートルはあろうかという壁を見上げていると、切の鋭い声が飛んだ。
 左腕のディスクを展開した切は、1枚のモンスターカード――<六武衆の師範>をセットし、実体化させる。
「頼むぞ<師範>――清流、一閃!」
 現れた隻眼の老将が、切の掛け声に合わせて白刃を煌めかせる。
 その刃は、一瞬のうちに形成された土の壁を切り裂く――
 はずだった。
 ガキィ! と鉄を打ち合わせたような金属音が響き、<六武衆の師範>の刃が弾き返される。
「なっ……!?」
 驚いた創志は、老将の刀が当たった箇所に触れる。その表面は、まるで磨き抜かれた鉄板のように固く、滑らかだった。
「どうやら、あいつが何か小細工をしたみたいですね」
 闘志を顕わにした純也は、ローブの男を睨みつける。
 男はディスクを構えた姿勢のまま、
「デュエルダ」
 もう一度同じ言葉を繰り返した。話し合いに応じる雰囲気はなさそうだ。
「……罠の臭いがぷんぷんするが、ここは応じるしかなさそうじゃな」
 ローブの男とのデュエル。わざわざ壁を作って退路を断ったことを考えれば、その危険は推して測れるだろう。
「……切、ディスク貸してくれ。俺が行く」
「――そうじゃな。ここはお主に任せるとするか」
 一旦ディスクを収納し、左腕から外した切は、それを創志に手渡す。
 受け取ったディスクを装着した創志は、腰に提げたデッキケースから自らのデッキを取り出し、ディスクに収める。
「いいんですか? 何なら、僕が行きますけど」
「いーや。ここは俺が行かせてもらうぜ。どっかのヘボ探偵に負けて、鬱憤が溜まってたところだしな」
 純也の申し出を却下し、創志はローブ男の前に立つ。
 勝ち誇った神楽屋の顔を思い浮かべると、負けた悔しさが蘇ってくる。コイツとのデュエルは、リベンジマッチの前哨戦だ。
「分かってるとは思いますけど……気をつけてください。普通の相手じゃないです」
「おうよ。たまにはこういう命のやり取りも経験しておかないとな」
 かづなが「命のやり取り……ですか」と神妙な顔つきになる。
 そう。レボリューションとの戦い以降、創志はこういった危険な状況に巻き込まれたことがほとんどなかった。
 生命の危機を感じるほどの状況で磨かれる直感。その直感を、鈍らせるわけにはいかない。
「さあ……行くぜ。正体不明野郎!」
「…………」

「デュエル!!」

 2つの声が重なり、新たなる決闘の火蓋が切って落とされた。