にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage2 サイドM 2-1

「おめでとう、ミハエル・サザーランド君。これが約束の品だ」
 デュエルアカデミアで行われた実技試験。
 それぞれ異なったデッキを使う教師3人を相手にデュエルを行い、その内容によって得点を付ける、というものだった。教師陣のデッキ内容はあらかじめ公示されており、その場のプレイングだけでなく、相手の戦術を予測し、有利な状況を作り出す洞察力や、デッキ構築力が試される。
 得点は、あくまで「デュエルの内容」によって審査され、勝敗は関係ない。もちろん、負けるよりは勝った方が優れた内容になることは当たり前だが、圧倒された状況からどれくらい挽回することができたか等も評価の対象となる。
 その実技試験で、ミハエルは3戦全勝した。
 文句のつけようのない、完璧な勝利だった。一切の無駄を省いたプレイングで、教師陣を寄せ付けなかった。
 ミハエルは「ありがとうございます」と一礼すると、担任から1枚のカードを受け取る。
 <光帝クライス>。教師全員に勝利した者に贈られる報奨だった。
 教室のあちこちから、ミハエルの偉業を褒め讃えたり、羨む声が聞こえてくる。
 他人からの評価など興味はなかったが、悪い気分ではなかった。
 他の追随を許さない圧倒的な強さ――それがミハエルの目指す「プロデュエリスト」。<光帝クライス>を手にしたことによって、自分はさらに強くなれる。
 ――もっと強く。
 ミハエルの父親はプロデュエリストだった。
 特筆するような技量はなく、一時しのぎの小技だけで何とか連敗を避けるような地味な決闘者だ。年を重ねることに負け数が混み、そのまま引退に追い込まれた。
 自分は父親のように落ちぶれたデュエリストにはならない……ミハエルが強さを求める理由だ。よくある話だと自分でも思う。
 今の実力なら、現役時代の父親など軽くひねり潰せるだろう。
 だが、まだ足りない。
 ――もっと強く。
 ミハエルは、貪欲に強さを求めていた。
 プロデュエリストとなり、頂点を極めるために。

「――テメエの勝ち方は気に食わねえ。モンスターは道具じゃねえんだぞ! 一緒に戦ってくれる仲間なんだ!!」

 その男に出会ったのは、いつだっただろうか。
 顔も思い出せないその男は、ミハエルに対して敵意をむき出しにして叫んだ。
「仲間……?」
 当時のミハエルには、その単語の意味を理解する事はできなかった。
「ああそうだ。デッキを信じ、カードを信じ、共に戦う……それがデュエリストってもんだろうが! それを、テメエは――」
 男が挙げたのは、ミハエルのプレイングだった。
 <デモンズ・チェーン>によって効果と攻撃を封じられたモンスター。ミハエルはそのモンスターを<サンダー・ブレイク>で躊躇なく破壊し、その破壊によって墓地から特殊召喚できるモンスターを呼びだした。
 他にもいくつかのプレイングを指摘されたが、ミハエルは男が何を言いたいのか全く分からなかった。
「いいか、テメエのプレイングは、勝つことしか考えてないんだ! テメエは……モンスターたちの悲鳴が聞こえねえのかよッ!」
 男の言葉には溢れんばかりの熱が込められていたが、
「……俺が責められているのは理解してるんだが、その理由はさっぱり分からない。俺にとってデュエルってのは勝つことだ。俺は勝つために必要なことをした。それの何が悪い?」
 ミハエルには一ミリも伝わっていなかった。
「――テメエッ!」
「俺が間違っているというのなら、デュエルで証明してみせろよ。その方が手っ取り早い。お前の言うカードを信じるってことがいかに重要なのか……俺に見せてくれよ」
 顔色一つ変えずに、ミハエルはデュエルディスクを展開させる。
 男は憤怒の形相を浮かべ、勢いよくディスクを振りかざした。











「<光帝クライス>でダイレクトアタックだ。俺の勝ちだな」
 わずか3ターンで決闘は終了した。
 無傷のまま勝利したミハエルは、両膝をついてうなだれる男の脇を通り過ぎる。
 男からの声はなかった。
 だから、

「これが、俺の信じるデュエリストの強さだ」

 ミハエルは男に言葉を投げた。