遊戯王 New stage サイドS 9-6
「―――」
神楽屋の黒い瞳の奥には、押し殺した悲しみの色が見えたような気がした。
ゆえに、創志は反論できない。
「知ってるか? 約束は、人に希望を与えると同時に、絶望も与えるんだぜ。大事な人と、信じていた人と交わした約束――それが、破られたときの絶望。それがどんなものか、お前は考えたことがあるか?」
内に秘めた感情を表に出さないようにしながら、神楽屋は言葉を紡ぐ。
「守ると約束したのに、守れなかった。守ってくれると約束したのに、守ってくれなかった。そのとき感じる絶望に、お前は耐えられるのか? 責任を取れるのか?」
創志の脳裏に浮かぶのは、竜美の<ジュラック>に傷つけられたティトの姿だ。
鋭い爪で腹を浅く裂かれ、血を流す少女の姿。
――俺は。
炎に包まれるセキュリティ第17支部。もし宇川に助けてもらえなければ、創志はそこで命を落としていただろう。
ティトとの約束を果たせないまま。
何も、出来ないまま。
「…………」
創志は神楽屋から視線を外し、うつむいて歯噛みする。
あのとき感じた自分の不甲斐なさは、一生忘れない。
「身の程を知れ、坊主。自分の背丈を越えた約束はするもんじゃない。お互いに傷つくだけだ」
やんちゃな子供を諭すような口調で、神楽屋は告げる。
「先輩からの忠告だ。ここらで手を引いてお家に帰りな」
「……今なら傷が浅くて済む、と言いたいのかの?」
創志の代わりに発言したのは、ポニーテールの少女だ。
「わしは――」
神楽屋に食ってかかろうとする切。
「待ってくれ」
それを、創志は右手で制した。
「創志……」
「忠告ありがとうよ、先輩。だがな――」
創志は顔を上げる。神楽屋の視線を真っ向から受け止める。
神楽屋の黒い瞳の奥には、押し殺した悲しみの色が見えたような気がした。
ゆえに、創志は反論できない。
「知ってるか? 約束は、人に希望を与えると同時に、絶望も与えるんだぜ。大事な人と、信じていた人と交わした約束――それが、破られたときの絶望。それがどんなものか、お前は考えたことがあるか?」
内に秘めた感情を表に出さないようにしながら、神楽屋は言葉を紡ぐ。
「守ると約束したのに、守れなかった。守ってくれると約束したのに、守ってくれなかった。そのとき感じる絶望に、お前は耐えられるのか? 責任を取れるのか?」
創志の脳裏に浮かぶのは、竜美の<ジュラック>に傷つけられたティトの姿だ。
鋭い爪で腹を浅く裂かれ、血を流す少女の姿。
――俺は。
炎に包まれるセキュリティ第17支部。もし宇川に助けてもらえなければ、創志はそこで命を落としていただろう。
ティトとの約束を果たせないまま。
何も、出来ないまま。
「…………」
創志は神楽屋から視線を外し、うつむいて歯噛みする。
あのとき感じた自分の不甲斐なさは、一生忘れない。
「身の程を知れ、坊主。自分の背丈を越えた約束はするもんじゃない。お互いに傷つくだけだ」
やんちゃな子供を諭すような口調で、神楽屋は告げる。
「先輩からの忠告だ。ここらで手を引いてお家に帰りな」
「……今なら傷が浅くて済む、と言いたいのかの?」
創志の代わりに発言したのは、ポニーテールの少女だ。
「わしは――」
神楽屋に食ってかかろうとする切。
「待ってくれ」
それを、創志は右手で制した。
「創志……」
「忠告ありがとうよ、先輩。だがな――」
創志は顔を上げる。神楽屋の視線を真っ向から受け止める。
「もう一度言うぜ――俺は無茶するためにここに来た。無理を通して、無茶をして、約束を果たすために来たんだ!!」
変わってしまった信二の姿が網膜の裏に蘇る。
今の信二に、創志の言葉は届かないだろう。
それでも諦めない。
絶対に信二を連れ戻す。そう宣言した。そう約束した。
「アンタ言ったよな、約束は人を強くするって! もし俺の力が足りないなら、強くなるまでだ! 約束を果たせる強さまで!」
言い切り、創志は自然と右拳を握っていた。
神楽屋の言った「絶望」を感じないためにも、強くなる。
光坂よりも、神楽屋よりも、信二よりも強くなると決めたのだ。
創志は自分の言葉を裏切りたくなかった。
もしここでサレンダーをしてしまえば、ティトや仲間たちだけでなく、自分自身をも裏切ったことになる。
「――ハッ。眩しいな、坊主」
神楽屋は脱ぎ捨てた帽子を拾い、もう一度被る。
「言っても分からねえんなら、実力行使だ。その青くせえ自信を砕いてやるよ。カードを1枚セット。ターンエンドだ」
今の信二に、創志の言葉は届かないだろう。
それでも諦めない。
絶対に信二を連れ戻す。そう宣言した。そう約束した。
「アンタ言ったよな、約束は人を強くするって! もし俺の力が足りないなら、強くなるまでだ! 約束を果たせる強さまで!」
言い切り、創志は自然と右拳を握っていた。
神楽屋の言った「絶望」を感じないためにも、強くなる。
光坂よりも、神楽屋よりも、信二よりも強くなると決めたのだ。
創志は自分の言葉を裏切りたくなかった。
もしここでサレンダーをしてしまえば、ティトや仲間たちだけでなく、自分自身をも裏切ったことになる。
「――ハッ。眩しいな、坊主」
神楽屋は脱ぎ捨てた帽子を拾い、もう一度被る。
「言っても分からねえんなら、実力行使だ。その青くせえ自信を砕いてやるよ。カードを1枚セット。ターンエンドだ」
【創志LP700】 手札4枚
場:伏せ1枚
【神楽屋LP3700】 手札1枚
場:ジェムナイト・ルビーズ(攻撃)、伏せ1枚
場:伏せ1枚
【神楽屋LP3700】 手札1枚
場:ジェムナイト・ルビーズ(攻撃)、伏せ1枚
「俺のターン!」
<ジェムナイト・ルビーズ>の攻撃を受けた箇所はまだ痛みが残るが、創志の体がふらつくことはない。神楽屋との問答のおかげと言うべきか、戦意が満ち溢れてくる。
「俺は<A・ジェネクス・ドゥルダーク>を召喚!」
創志の場に召喚されたのは、朱色のバイザーに黒のボディを持つ機械兵だ。ボディの各部には青色の紋様が浮き出ている。
<ジェムナイト・ルビーズ>の攻撃を受けた箇所はまだ痛みが残るが、創志の体がふらつくことはない。神楽屋との問答のおかげと言うべきか、戦意が満ち溢れてくる。
「俺は<A・ジェネクス・ドゥルダーク>を召喚!」
創志の場に召喚されたのは、朱色のバイザーに黒のボディを持つ機械兵だ。ボディの各部には青色の紋様が浮き出ている。
<A・ジェネクス・ドゥルダーク> 効果モンスター 星4/闇属性/機械族/攻1800/守 200 1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動する事ができる。 このカードと同じ属性を持つ、相手フィールド上に表側攻撃表示で存在する モンスター1体を選択して破壊する。 この効果を発動するターン、このカードは攻撃する事ができない。
「<ドゥルダーク>は1ターンに1度、自分と同じ属性の表側攻撃表示のモンスターを破壊できる」
「<ジェムナイト・ルビーズ>の属性は地だ。<A・ジェネクス・ドゥルダーク>の効果は使えないぜ?」
創志が次の手を用意していることを見越したかのように、神楽屋が続きを促す。
「手札から<A・ジェネクス・ケミストリ>を捨てることで効果発動! <ドゥルダーク>を地属性に変更させる!」
「<ジェムナイト・ルビーズ>の属性は地だ。<A・ジェネクス・ドゥルダーク>の効果は使えないぜ?」
創志が次の手を用意していることを見越したかのように、神楽屋が続きを促す。
「手札から<A・ジェネクス・ケミストリ>を捨てることで効果発動! <ドゥルダーク>を地属性に変更させる!」
<A・ジェネクス・ケミストリ> チューナー(効果モンスター) 星2/闇属性/機械族/攻 200/守 500 属性を1つ宣言し、このカードを手札から捨てて発動する。 自分フィールド上に表側表示で存在する 「ジェネクス」と名のついたモンスター1体の属性は宣言した属性になる。 この効果は相手ターンでも発動する事ができる。
紫色の小型の機械兵が、手にしたスプレーガンを吹き付けると、<A・ジェネクス・ドゥルダーク>のバイザーの奥に浮かぶ文字列が変更された。
「<ドゥルダーク>の効果を使うぜ! <ジェムナイト・ルビーズ>を破壊する! エナジーブレイク!」
黒の機械兵が、右の平手を前に突き出す。
ヴゥゥゥン、と低音が響き、不可視の力が<A・ジェネクス・ドゥルダーク>の平手に集っていく。
そして、機械兵は右手を強く握る。
バチン! 風船が破裂するような音が生まれた刹那、紅蓮の騎士が砕け散った。
「さすがに大言を吐いただけはあるか……」
神楽屋が感心したように呟く。
「<ドゥルダーク>は効果を使用したターン、攻撃することができない。カードを1枚セットしてターンエンドだ」
<ジェムナイト・ルビーズ>を破壊したとはいえ、以前状況は厳しい。
創志の残りライフは700。さらなる融合モンスターを召喚されたら、耐えきれない可能性が高い。
「<ドゥルダーク>の効果を使うぜ! <ジェムナイト・ルビーズ>を破壊する! エナジーブレイク!」
黒の機械兵が、右の平手を前に突き出す。
ヴゥゥゥン、と低音が響き、不可視の力が<A・ジェネクス・ドゥルダーク>の平手に集っていく。
そして、機械兵は右手を強く握る。
バチン! 風船が破裂するような音が生まれた刹那、紅蓮の騎士が砕け散った。
「さすがに大言を吐いただけはあるか……」
神楽屋が感心したように呟く。
「<ドゥルダーク>は効果を使用したターン、攻撃することができない。カードを1枚セットしてターンエンドだ」
<ジェムナイト・ルビーズ>を破壊したとはいえ、以前状況は厳しい。
創志の残りライフは700。さらなる融合モンスターを召喚されたら、耐えきれない可能性が高い。