にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドM 8-11

「……俺のターンだったな。ドロー」
 少しの間目を閉じていたジェンスが動きを見せる。
 静かにカードをドローした彼の周囲の空気が、音もなく震える。そんな感じがした。
「罠カード<ガトムズの緊急指令>を発動。フィールド上に<X-セイバー>と名のついたモンスターが表側表示で存在するとき、墓地から<X-セイバー>と名のついたモンスターを2体特殊召喚する。俺が蘇生させるのは、<アナペレラ>と<エアベルン>だ」

<ガトムズの緊急指令>
通常罠
フィールド上に「X-セイバー」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、
自分または相手の墓地に存在する 「X-セイバー」
と名のついたモンスター2体を選択して発動する。
選択したモンスター2体を墓地から自分フィールド上に特殊召喚する。

 金髪の女戦士と獣の戦士が、墓地から蘇る。
 ジェンスの場にはチューナーモンスターが2体。再びシンクロ召喚を狙うのだろうか。
「<パシウル>を攻撃表示に変更。そして魔法カード<セイバー・スラッシュ>を使う!」

<セイバー・スラッシュ>
通常魔法
自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する
「X-セイバー」と名のついたモンスターの数だけ、
フィールド上に表側表示で存在するカードを破壊する。

 3体の<X-セイバー>……それぞれが持つ獲物に、光が収束していく。
「これは……!?」
「<セイバー・スラッシュ>は、自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する<X-セイバー>の数だけ、フィールド上に存在する表側表示のカードを破壊する。俺の場に<X-セイバー>は3体……よって、3枚の表側表示カードを破壊する!」
 ジェンスが右手を振るうと、3体の<X-セイバー>が刃を煌めかせる。
 刃に収束していた光が放たれ、<六武衆ニサシ>、<六武衆ヤリザ>、そして<AOJカタストル>に直撃する。
「うぬっ……!」
「くっ……」
 <セイバー・スラッシュ>の効果により、輝王と切のモンスターが一掃された。これでは、切の<一族の結束>は役に立たない。
「まだ終わりではないぞ――<アナペレラ>に<パシウル>をチューニング。剣に導かれし猛き戦士たちよ! その刃を手にとり、道を阻む障害を薙げ!」
「さらにシンクロ召喚……!」
 輝王、切のライフは、共にデッドラインを超えている。下級モンスターの直接攻撃が通っただけで、戦いから脱落してしまう。
 これは――ジェンス・マクダーレンは、ここで勝負を決める気なのか?
シンクロ召喚! 払え、<XX-セイバー ヒュンレイ>!」
 エフェクト光が飛散する。薄い金色の鎧を纏い、刃が弧を描いているサーベルを手にした剣士が、ジェンスの場に現れる。性別ははっきりしないが、髪を2つに分けて団子状に結っていることから、女剣士とも見て取れる。

<XX-セイバー ヒュンレイ>
シンクロ・効果モンスター
星6/地属性/戦士族/攻2300/守1300
チューナー+チューナー以外の「X-セイバー」と名のついたモンスター1体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、
フィールド上に存在する魔法・罠カードを3枚まで選択して破壊する事ができる。

「<ヒュンレイ>がシンクロ召喚に成功したとき、フィールド上に存在する魔法・罠カードを3枚まで破壊できる。俺が選択するのは……」
 <セイバー・スラッシュ>でモンスターを全滅させ、今度は<XX-セイバー ヒュンレイ>で魔法・罠カードまで壊滅させる気か……戦場に佇む剣士の姿を見ながら、輝王は乱れそうになる心中を落ち着ける。
 輝王の場には<エレメントチェンジ>と伏せカードが1枚。切の場には<一族の結束>と伏せカード1枚。<XX-セイバー ヒュンレイ>の効果では、全てを破壊することはできない。
 考える時間は1分にも満たなかっただろうが、それでもジェンスが迷いを見せたのが分かった。
「<エレメントチェンジ>と<一族の結束>。そして輝王の場の伏せカードを破壊だ」
 <XX-セイバー ヒュンレイ>はその場で跳躍すると、空中で舞うようにサーベルを振るう。
「砂塵演舞!」
 生まれた斬撃が形となり、場のカードを切り裂いた。
 衝撃波が黒の長髪を揺らす中。
「――決着をつけに来たかと思ったが、また随分と慎重な策を取ったものだ」
 挑発とも取れる輝王の言葉が響き渡る。
「……何だと?」
 それに対し、ジェンスは眉をピクリと動かす。
「この状況で、<エレメントチェンジ>と<一族の結束>を破壊するメリットはほぼ無いと言っていい。場にモンスターがいないのだからな。ひとつあるとすれば――後続のモンスターが出てきたときのサポートを潰せることだ」
 ――つまり、ジェンスは後続のモンスターが出てくることを恐れていたということ。伏せカードの破壊にチェーンして何らかの蘇生カードを使われる可能性を考慮し、その場合に<エレメントチェンジ>や<一族の結束>が場に残っていることを危険視したのだろう。
「…………」
 輝王の言いたいことを理解したのか、ジェンスが口をつぐむ。

「勝つことを怖がっているんじゃないのか? ジェンス・マクダーレン」