にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドS 6-6

「……ッ!」
 優位に立ったはずなのに、精神的に追い込まれているのは創志のほうだった。
(……いや、<ウィンドファーム・ジェネクス>の召喚は正しかったはずだ。先生に反撃の隙を与えないまま、一気にケリをつける!)
 乱れる思考を落ち着かせるように言い聞かせ、創志は自分の伏せカードを確認する。
 1枚は<ジェネクス・スピリッツ>。墓地に存在する<ジェネクス>と名のついたシンクロモンスターを蘇生する罠カード。
 もう1枚は<聖なるバリア―ミラーフォース―>。セラからもらった相手の攻撃モンスターを破壊する罠カードだ。
「<レアル・ジェネクス・マグナ>が破壊されたことにより、僕は手札から<レアル・ジェネクスダークマター>を特殊召喚するよ」
 風の止んだフィールドに現れたのは、不気味な光沢を放つ黒い石だった。

<レアル・ジェネクスダークマター>
効果モンスター(オリジナルカード)
星7/闇属性/機械族/攻0/守 0
このカードは風属性としても扱う。
このカードは通常召喚できない。自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する
「レアル・ジェネクス」と名のついたモンスターが戦闘で破壊された場合のみ、
手札から特殊召喚できる。
このカードをシンクロ素材とする場合、
「レアル・ジェネクス」と名のついたモンスターのシンクロ召喚にしか使用できない。

 岩と呼んだほうがしっくりくる大きさの石だ。表面は不揃いに研磨され、無骨な形ながらもどこか美術品のような美しさを感じさせる。
 光をすべて吸い込んでしまいそうな黒の中心に、わずかに輝く緑の光があった。その緑から聞こえる駆動音によって、<レアル・ジェネクスダークマター>がただの石ではなく、何らかの装置であることが分かる。
「…………」
 レベルこそ高いが、攻守共に0の弱小モンスター。
 しかし、創志の胸の中で渦巻く不安が、<レアル・ジェネクスダークマター>の出現によってさらに膨らんだ。
「さあ、まだ創志のターンだよ。どうするんだい?」
「――ターン、エンドだ」
 得体の知れない脅威を前に、伏せた罠カードを信じつつ、創志はターンを終了した。

【創志LP4000】 手札1枚
場:ウィンドファーム・ジェネクス(攻撃)、伏せ2枚
【光坂LP2400】 手札5枚
場:レアル・ジェネクスダークマター(攻撃)

「さあ、僕のターンだ」
 そう言って、光坂は静かにカードをドローする。
「信二君。そろそろこの場を離れる準備をしておいてくれるかな? 拘置所のほうもカタがつくころだろうから」
「なっ……!」
 光坂の言葉は、このデュエルがもうすぐ終わるということを意味していた。
 絶句する創志をよそに、
「分かりました」
 信二は頷くと、懐から携帯電話を取り出し、どこかに連絡している。
「さて、終わりにしようか、創志。僕は<レアル・ジェネクスコーディネイター>を召喚」
 先のターン<レアル・ジェネクス・マグナ>の効果で手札に加わったチューナーモンスターが、光坂のフィールドに召喚される。

<レアル・ジェネクスコーディネイター>
チューナー(効果モンスター)
星2/闇属性/魔法使い族/攻 200/守 100
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
手札からレベル3以下の「ジェネクス」と名のついた
モンスター1体を特殊召喚する事ができる。

「レベル7の<レアル・ジェネクスダークマター>に、レベル2の<レアル・ジェネクスコーディネイター>をチューニング」
「――ッ!?」
 シンクロ召喚の時に発動する光の柱のエフェクトが、その真下に出現した「黒い沼」に吸い込まれていく。まるで、影を凝縮して出来た水たまりのような、深い黒。
「進化せし鉄よ、魂を絶望に染め上げろ――シンクロ召喚
 その黒い沼から、同じ色のボディを持ったモンスターがゆっくりと這い出てくる。

「蹂躙せよ、<レアル・ジェネクス・クロキシアン>」

 蒸気機関車が変形したような外見のモンスター――<レアル・ジェネクス・クロキシアン>。
 大きさは<ウィンドファーム・ジェネクス>と大差ないのだが、創志はその黒い巨体に押しつぶされるような錯覚を覚える。

<レアル・ジェネクス・クロキシアン>
シンクロ・効果モンスター
星9/闇属性/機械族/攻2500/守2000
「ジェネクス」と名のついたチューナー+チューナー以外の闇属性モンスター1体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、相手フィールド上に表側表示で存在する
レベルが一番高いモンスター1体のコントロールを得る。

「<レアル・ジェネクス・クロキシアン>がシンクロ召喚に成功したとき、相手フィールド上の一番レベルの高いモンスターのコントロールを得ることができるんだ」
 光坂が言ったと同時に、いまだ<レアル・ジェネクス・クロキシアン>の真下に残っていた黒い沼から、触手のような影が何本も放たれる。
「さあ、おいで」
「――<ウィンドファーム・ジェネクス>!?」
 その影が<ウィンドファーム・ジェネクス>の体に絡みつき、強引に光坂のフィールドへと引っ張っていく。
(まずい! このままじゃ――)
 焦る創志だったが、対抗策はない。
 絡みついた影は、装甲の隙間から<ウィンドファーム・ジェネクス>の内部に入り込んでいく。
 やがて、ガクンと両腕を落とし、機能を停止したかに見えたが――
 次の瞬間には、胸のファンを回しながら再起動する。
 しかし、そのモノアイは不気味な紅色の光を放っていた。