にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドS 5-3

 ――こいつは、強い。
 決して侮っていたわけではないが、創志は輝王正義というデュエリストの強さを改めて実感していた。
 ティトのような、相手を寄せ付けない強さとは違う。
 セラのような、相手を畏怖させる強さとも違う。
 どんな相手にも、どんな戦術にも揺るがない強さ。
 短い攻防の間で、創志はそう感じ取っていた。
「俺のターン。ドロー」
 引いたカードは<ジェネクスウンディーネ>。
 それを手札に加えたのち、創志は1枚のカードに指をかける。
 ……このモンスターなら、<AOJリーサル・ウェポン>を倒せる。
 そのまま召喚しようとしたところで、創志の脳裏にある言葉が蘇った。
 創志にデュエルを教えてくれた師匠ともいえる存在で、彼が「先生」と慕う光坂慎一の言葉だ。

「急いちゃダメだよ、創志。先を見据えるんだ」

 <AOJリーサル・ウェポン>を倒すことで、この場は切り抜けられるかもしれない。
 しかし、その後は?
 輝王が次に繰り出してくるモンスターの攻撃を、迎え撃つことはできるだろうか?
(俺は――)
 創志のデッキの中核とも言える<ジェネクス・コントローラー>。
 まだそのカードは山札の中に眠ったままだ。
 そして、手札にはその眠りを覚ますカードがある。<ジェネクスウンディーネ>だ。
 だが、このカードの効果を使えば、<AOJリーサル・ウェポン>の前に攻撃力の低い<ジェネクスウンディーネ>を晒すことになる。輝王が後続のモンスターを召喚しようものなら、そこで決着がつく可能性もある。
「大丈夫だよ、そうし」
 今まで黙って戦いを見守っていた銀色の少女が、清らかな声を発する。
「そうしのデッキは、必ず応えてくれる。わたしは、信じてる」
 創志を安心させるために、笑顔らしき表情をぎこちなく浮かべるティトを見て、
「――俺も信じるぜ。自分のデッキを」
 賭けに打って出た。
「<ジェネクスウンディーネ>を召喚し、効果を発動するぜ! デッキから水属性の<ジェネクス・アクア>を墓地に送り、手札に<ジェネクス・コントローラー>を加える!」

<ジェネクスウンディーネ>
効果モンスター
星3/水属性/水族/攻1200/守 600
このカードが召喚に成功した時、
自分のデッキに存在する水属性モンスター1体を墓地に送る事で、
自分のデッキから「ジェネクス・コントローラー」1体を手札に加える

 創志のフィールドに現れた女性型のロボット<ジェネクスウンディーネ>の効果によって、手札に機械の小人が加わる。
 このターンで出来ることはここまでだ。あとは相手の動きと、次のドローに賭けるしかない。
「……ターンエンドだ」

【輝王LP3300】 手札2枚
場:AOJリーサル・ウェポン(攻撃・ジャスティス・セイバー装備)、リミット・リバース(発動済み)、伏せ1枚
【創志LP1400】 手札3枚
場:ジェネクスウンディーネ(攻撃)、伏せ2枚

「――ドロー」
 幾分かの間を置き、輝王がデッキからカードを引く。
 無意識のうちに創志の拳に力がこもる。果たして、モンスターを召喚してくるか否か――!
 ごくり、と息を飲んだ次の瞬間だった。
「……これが通れば、俺の勝ちだな。<AOJリーサル・ウェポン>で<ジェネクスウンディーネ>を攻撃する!」
 再びドリルが高速回転を始め、兵器の塊が<ジェネクスウンディーネ>に迫る。
(けど――!)
 一発までなら、耐えられる!
「リバースカードオープン! 罠カード<スクラップ・シールド>!」
 創志の前に、がらくたを接ぎ合わせた即席の盾が出現する。

<スクラップ・シールド>
通常罠(オリジナルカード)
自分の墓地に「ジェネクス」と名のついたモンスターが3体以上存在するときに発動できる。
このカードを発動したターン、自分の受ける戦闘ダメージは半分になる。

「このカードは自分の墓地に<ジェネクス>と名のついたモンスターが3体以上いるときに発動でき、戦闘ダメージを半分にする!」
 <ジェネクスウンディーネ>が<AOJリーサル・ウェポン>のドリルに貫かれ、爆散する。
「ぐうっ……!」
 それによって生まれた衝撃波を、ツギハギの盾が防いだ。

【創志LP1400→650】

「凌いだか」
 まるでこの展開を予想していたかのように、輝王は短く言葉を紡ぐ。
「だが、もう残りライフは少ないぞ。足掻きが終わるのも時間の問題だな……ターンエンドだ」
 久しぶりの皮肉と共に、創志にとっての苦境が終了した。

【輝王LP3300】 手札3枚
場:AOJリーサル・ウェポン(攻撃・ジャスティス・セイバー装備)、リミット・リバース(発動済み)、伏せ1枚
【創志LP650】 手札3枚
場:伏せ1枚

 そして、次の苦境がやってくる。
 手札にある<ジェネクス・コントローラー>の真価であるシンクロ召喚を行うためには、「あの」カードを引かなければならない。
 ――運を天に任せるんじゃない。
 信じるんだ。
 自分は、ここで立ち止まるわけにはいかないのだから。
「俺のターン……ドロー!」
 創志の引いたカードは――