にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドM 5-1

 少年は、かけていた眼鏡を外して投げ捨てる。
 黒い瞳の奥には、相応の決意が感じられた。
 輝王が創志の挑戦を受けたのには理由がある。
 情報を聞き出すためではない。
 精神をぶちのめすわけではない。
 ましてや、自分の心を落ち着かせるためでもない。
 ――重なったからだ。
 輝王の親友であり、憧れの存在であった、高良火乃の姿が。
 自分の背に少女を隠し、彼女を守るために少年は戦うことを決めた。
(――――)
 輝王の思い出の中にいる高良もまた、誰かのために戦える男だった。
「……俺が先攻をもらうぞ。構わないな?」
 デュエルの開始を告げる輝王の言葉に、創志は慎重に頷く。
(だが、こちらも引き下がるわけにはいかない)
 創志がティトを守るように、輝王にもまた譲れないものがあるのだ。このデュエルで負けてやるわけにはいかない。
「俺のターン。ドロー」
 輝王が自分のデッキからカードを引き、静かに戦いの幕が上がる。
「モンスターをセット。カードを1枚セットしてターンエンドだ」
 輝王のフィールドに2枚の伏せカードが現れる。まずは様子見、といった手だ。
「さあ、見せてみろ。お前のデュエルを」

【輝王LP4000】 手札4枚
場:裏守備モンスター、伏せ1枚
【創志LP4000】 手札5枚
場:なし

「ぬかせ! 俺のターン!」
 輝王の言葉を挑発と受け取ったのか、創志が気合十分のドローを見せる。
「そうし……」
 ティトは先程までと同じ無表情で、少年の名を呼ぶ。
「心配すんな、ティト。お前は俺が守る」
「……うん」
 輝王の目には、少女の表情が変わったようには見えない。
 しかし、創志の瞳に宿る決意の光が、より一層輝いた。
「行くぜ! まずはカードを1枚伏せる!」
 モンスターを召喚する前にカードを伏せる――普通に考えれば、セットしなければ発動できない罠カードだ。
「<ジェネクス・ニュートロン>を召喚!」

<ジェネクス・ニュートロン>
効果モンスター
星4/光属性/機械族/攻1800/守1200
このカードが召喚に成功した場合、
そのターンのエンドフェイズ時に自分のデッキから
機械族のチューナー1体を手札に加える事ができる。

 創志のフィールドに、漆黒の装甲を持つ人型の機械兵が出現する。淀みのない黒は、夕焼けの赤い光まで吸いこんでしまいそうだった。
「バトルだ! <ジェネクス・ニュートロン>で伏せモンスターを攻撃! エレメント・ウェイブ!」
 <ジェネクス・ニュートロン>の手のひらに水色の光が収束する。その光が輪のような波動を形成し、輝王の伏せモンスター目がけて発射される。
 波動は容赦なく伏せモンスターを砕くが――
「出来すぎだな」
「あん?」
 創志が眉をひそめた瞬間、<ジェネクス・ニュートロン>の周囲に紫色の球体が現れる。
「これは――!?」
「破壊されたモンスターは<A・ボム>。このカードが光属性モンスターとの戦闘によって破壊された場合、フィールド上のカード2枚を破壊する。俺が選択するのは、当然<ジェネクス・ニュートロン>とお前の伏せカードだ」

<A・ボム>
効果モンスター
星2/闇属性/機械族/攻 400/守 300
このカードが光属性モンスターとの戦闘によって
破壊され墓地へ送られた時、フィールド上のカード2枚を破壊する。

 輝王が<ジェネクス・ニュートロン>を指差したのを合図に、球体が爆発する。
「ぐっ――!」
 <A・ボム>の爆発によって、創志のフィールドの<ジェネクス・ニュートロン>、そして伏せカードが破壊される。
「……<ジェネクス・ニュートロン>の効果は、召喚したターンのエンドフェイズに発生する。確かにアタッカーとしては十分な打点を持つモンスターだが、俺の場には伏せカードもある。ここは効果の発動を優先すべきだったんじゃないのか?」
「――ッ」
 輝王の指摘に創志が言い返してこなかったのは、戦術を誤った自覚があるからだろう。
 最も、輝王の狙いは<A・ボム>を墓地に送ることだった。相手モンスターの属性を変える<エレメントチェンジ>が無い今、<A・ボム>の効果を使うことは難しいだろうと考えていたのだが――
(僥倖だな)
 創志が操る<ジェネクス>モンスター。前に一度、セキュリティ本部のデータベースで閲覧したことがある。確か、多種多様な属性・種族が揃うモンスター群だったはずだ。主に光属性モンスターを相手に効果を発揮する<AOJ>にとっては、戦いやすい相手とはいえない。なるべく早く、<エレメントチェンジ>を手札に加えたいところだ。
「……俺はカードをもう1枚セットし、ターンエンドだ」
 召喚権を使ってしまった以上、壁を作ることもままならない創志は、悔しそうにターンを終了する。

【輝王LP4000】 手札4枚
場:伏せ1枚
【創志LP4000】 手札3枚
場:伏せ1枚