にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドS 3-6

「私は永続魔法<アポート>を使います。相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、800ポイントのライフを支払うことで、手札からサイキック族モンスター1体を特殊召喚します」

<アポート>
永続魔法
相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
800ライフポイントを払う事で手札からサイキック族モンスター1体を特殊召喚する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。


【セラLP3400→2600】

 セラのライフが減ると同時に、ズン! と強烈なプレッシャーがエントランス中を圧迫する。
「ぐっ……!?」
「あ……!」
 体の内側から響いてくる重みに、創志とティトがうめき声を漏らす。

「――来なさい、<マスタージーグ>」

 セラの声が重く響く。
 光の召喚円から現れたのは――巨大な卵型の球体。その頭頂部に人間の頭らしきものが見え、不気味な存在感を放つ「怪物」。奇妙な形の黒衣を纏い、体中から獲物を抉り刺すようなトゲが生えている。

<マスタージーグ>
効果モンスター
星8/地属性/サイキック族/攻2600/守1400
1000ライフポイントを払って発動する。
自分フィールド上に表側表示で存在する
サイキック族モンスターの数だけ、
相手フィールド上に存在するモンスターを破壊する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 <マスタージーグ>から発せられる見えない「何か」がフィールドに立ちこめ、じわじわと創志の体にまとわりつく。ひどく不快な気分になる。
「……苦しいですか? 無理もないでしょう。平凡なデュエリストのあなたなら、見ることも叶わないはずのモンスターですから」
 いつのまにか、全力で走ったあとのように呼吸が荒くなっている。
 怖いとか恐ろしいということではない――人としての本能が、サイキックの帝王を拒絶していた。
「私は、引き金を引くことをためらいませんよ」
 創志と、その後ろにいるティトに向けた言葉。
 その意味を語るかのように、ゴゴゴ……という地響きとともに、<マスタージーグ>の周囲に毒々しい緑色をしたオーラのようなものが収束していく。
「ライフを1000ポイント支払い――<マスタージーグ>の効果を発動」
 そのオーラはセラ自身からも漏れ出て、<マスタージーグ>へと吸収されていく。

【セラLP2600→1600】

 黒衣の中心に光るエメラルドの宝玉にオーラが集まり、強く輝きだす。
「何か来る!」
 同じサイコデュエリストであるティトが何かを感じ取り、短く叫ぶ。
「薙ぎ払いなさい――デストロイ・デザイア」
 カッ、と。
 一瞬だけ、<マスタージーグ>の体に埋め込まれた宝玉が強烈な光を放つ。
「ッ!!」
 視界が真っ白になる。
 空気を切り裂く音が聞こえ、わずかに戻った視界の端で、宝玉と同じ緑色のレーザーが創志のフィールド上を横切ったのが見えた。
 続いて、地面から光の壁がせり上がり、創志とセラの間を隔てる。
「――<ハイドロ・ジェネクス!>!?」
 その光の壁の中で、<ハイドロ・ジェネクス>が苦しそうにもがいている。
 肩、脚、腕と各所のパーツが1つずつ砕け、光の壁が消えるころには<ハイドロ・ジェネクス>の姿はなくなっていた。
「これが<マスタージーグ>の効果。1000ライフを支払うことで、自分フィールド上のサイキック族モンスターの数だけ相手のモンスターを破壊できる――『デストロイ・デザイア』です」
 セラの声が妙に遠くに聞こえる。
 フィールド上のサイキックの帝王が、この場の時空を歪めているのではないかと錯覚してしまう。
 ここで<マスタージーグ>の直撃を受ければ、先程得たライフアドバンテージが一気に無に帰すことになる。
 ――弱気になるな。たかがそれだけじゃないか。
 失ったなら、また取り戻せばいい。まだ創志のデッキには、いくつもの可能性が眠ったままなのだ。それが一つ潰えたくらいで――
「言ったはずですよ」
 ぐわん、とセラの声が頭の中に響き渡る。
「あなたに味わってもらうのは、『絶望』だと」