にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドS 3-5

「私のターンですね」
 静かにカードをドローしたセラは、ゆっくりと自分の手札を見まわす。
「そうですね……私は<テレキアタッカー>を召喚」
 上半身は赤、下半身は黒、特徴的な色遣いの宇宙服を着たモンスターが、自らの力で呼び起こした雷鳴を操りながら、セラのフィールドに現れる。

<テレキアタッカー>
効果モンスター
星4/地属性/サイキック族/攻1700/守 700
サイキック族モンスターが破壊される場合、
500ライフポイントを払い代わりにこのカードを破壊する事ができる。

「バトルといきましょう。<テレキアタッカー>で<ジェネクス・サーチャー>を攻撃します」
 <テレキアタッカー>の両の掌に電撃が収束し、<ジェネクス・サーチャー>目がけて一斉に放たれる。
 荒れ狂う雷鳴が飛散し、エントランスの床を「削りとった」。
「な――!?」
「創志!」
 ティトが何かに気付いたように声を上げる。
 <テレキアタッカー>の攻撃――立体映像のはずのそれが、現実の物質に干渉している。
 これによく似た現象を、創志は実際に肌で感じていた。
 雷鳴が<ジェネクス・サーチャー>に直撃し、その体を形成していたパーツがバラバラに砕け散る。

【創志LP4000→3900】

「痛ッ!」
 パリッ、という音がしたかと思うと、右手の甲に鋭い痛みが走る。
 皮膚の一部が赤くなっている。<ジェネクス・サーチャー>を葬った雷撃が、創志の元まで飛んできたのだろう。
「まさか、お前も……」
「『氷の魔女』をお迎えに上がるのです。迎えの使者が氷漬けにされてしまいました、では笑い話にもならないでしょう? だからこそ、私が出向く必要があったのです」
 セラは創志の背後にいるティトに視線を移し、眼鏡のつるを押し上げながら、告げる。
「同じ力を持つ、私がね」
 創志の前に立つ男も、氷の魔女と同じサイコデュエリスト――!
 右手をぶらぶらと振って痛みをごまかす。これまでは噂でしか聞いたことのなかったサイコデュエリストと、まさか1日の内に2回も戦うとは……。
(……全く。俺の前に立ちふさがる壁っていうもんは、どうしてこんなに高いんだ)
 自分の運命を呪いながら、しかし視線はしっかりと前を向く。この程度のことで臆している場合ではない。
「<ジェネクス・サーチャー>のモンスター効果発動! サーチャーが戦闘で破壊されたとき、デッキから攻撃力1500以下の<ジェネクス>と名のついたモンスターを特殊召喚する!」
 バラバラになったパーツのひとつ、大きめのパトランプがビープ音とともにチカチカと点灯する。
「来い! <ジェネクス・コントローラー>!」
 その光に導かれるようにして、機械の小人が創志のフィールドにやってくる。

<ジェネクス・コントローラー>
チューナー(通常モンスター)
星3/闇属性/機械族/攻1400/守1200
仲間達と心を通わせる事ができる、数少ないジェネクスのひとり。
様々なエレメントの力をコントロールできるぞ。

「なるほど、チューナーモンスターですか。私はカードを1枚セットしてターンエンドです」
「行くぜ! ドロー!」
 カードを引いた指先から、強い鼓動を感じる。
 それは、フィールドの機械の小人が呼び寄せたのではないかと錯覚するカードだった。
「俺は<ジェネクスウンディーネ>を召喚!」
 ぴちょん、という水音が鳴り、丸底フラスコを中心にした人型ロボットが静かに出現する。

<ジェネクスウンディーネ>
効果モンスター
星3/水属性/水族/攻1200/守 600
このカードが召喚に成功した時、
自分のデッキに存在する水属性モンスター1体を墓地に送る事で、
自分のデッキから「ジェネクス・コントローラー」1体を手札に加える。

 すでにフィールド上に<ジェネクス・コントローラー>がいるので、効果は発動できない。なら、次の段階に進むべきだ。
「<ジェネクスウンディーネ>に<ジェネクス・コントローラー>をチューニング!」
 機械の小人が3つの光球に姿を変え、水の機械兵の中へと宿る。
「原初の煌めきが、新たな力の結晶を生み出す! 集え! 水の力よ!」
 モンスターの姿を隠すように、地面から水柱が噴き出す。
シンクロ召喚! 逆巻け! <ハイドロ・ジェネクス>!!」
 柱を形作っていた水が一瞬にして弾ける。
 そこには、<ジェネクスウンディーネ>の面影を残し、さらなる進化を遂げた水の機械兵の姿があった。

<ハイドロ・ジェネクス>
シンクロ・効果モンスター
星6/水属性/機械族/攻2300/守1800
「ジェネクス・コントローラー」+チューナー以外の水属性モンスター1体以上
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。

「…………」
 微笑を浮かべるセラの感情は読めない。
今は自分のデュエルをするだけだ。
「バトルだ! <ハイドロ・ジェネクス>で<テレキアタッカー>を攻撃! スプラッシュ・ランス!」
 <ハイドロ・ジェネクス>が、先端にフラスコのついた奇妙な形の槍を構える。
 刃の先を目標に向ける。チューブで繋がれた、翼を模したパーツから風が生まれる。
 ドン! という轟音と共に、凄まじい勢いで水流――いや、水柱が発射される。
 <テレキアタッカー>は防ぐ間もなく水柱の直撃を受け、破壊された。

【セラLP4000→3400】

「<ハイドロ・ジェネクス>の効果が発動するぜ! このモンスターが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地に送ったとき、破壊したモンスターの攻撃力分自分のライフを回復する!」
 <テレキアタッカー>を破壊した水流が飛び散り、雨のように創志の元へ降りそそぐ。

【創志LP3900→5600】

 これで、ライフの面ではアドバンテージを得た。
 セラの言葉が正しければ、<サイキック族>のモンスターは効果を発動するのにライフコストが必要なようだし、このアドバンテージは大きいはずだ。

「――それがあなたの全力ですか?」

 それでも、セラの仮面は剥がれない。
 不敵な笑みを保ったまま、長身の男は創志に続きを促す。
「……ちっ、ターンエンドだ」
 現状では、これ以上やることはない。

【セラLP3400】 手札4枚
場:伏せ1枚
【創志LP5600】 手札4枚
場:ハイドロ・ジェネクス(攻撃)、伏せ1枚

「ドロー……なら、あなたに味わっていただきましょう。絶望という感情を」
 そう言って発動させたのは、1枚の魔法カードだった。