にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドS 3-4

 先程のデュエルの余韻か、冷気が充満するエントランスで、2人の男が向かい合う。
 セラは涼やかな微笑を崩さぬままで、創志は闘志をむき出しにして相手を睨みつける。
「一応、私は挑戦者ということになるのですかね」
「ああ?」
「さしずめ、人間の皮をかぶった悪い狼に騙されてしまった、かわいそうなお姫様を助ける騎士といったところでしょうか」
「てめえ!」
「冗談ですよ。どうかお気になさらずに」
 そう言って笑いをこらえるセラ。完全に創志をおちょくっている。
「創志……」
 創志の後ろに立つ銀髪の少女が、不安げに声を漏らす。
「……悪りぃ。ちょっとカッカしちまった」
 このデュエルの目的を見失ってはならない。
 ティトとの戦いでは、例え敗北したとしても自分が氷漬けになるだけで済む話だったが、今回は違う。
 創志が負ければ、ティトの運命は大きく揺り動くことになる。
 ――自分がティトを連れ出すことが、彼女にとって最良なのかどうかは分からない。
 ここで「魔女」を続けていたほうが幸せだったのかもしれないし、セラと共にアルカディアムーブメントに行く方が不自由なく暮らせるのかもしれない。

「創志の拳はたくさんの人を守れる。父さんはそう思うよ」

 でも、今は迷わない。
 迷えば、守れるはずのものが守れなくなってしまうから。
 今まで創志はそうやって生きてきた。
 後で悔いると書いて後悔。
 悔むのは全部後回しだ。
 創志の視線に何かを感じ取ったのか、セラの纏う空気が変わる。
「……戦いの幕を開けましょう」
 自分に敵意がないことをアピールするためのものから、限界まで研ぎ澄まされた刃のように鋭敏なものへと。
 その雰囲気に気圧されないよう、創志は歯を食いしばる。
「挑戦者は挑戦者らしく、先攻をもらうとします。構いませんね?」
「ああ」
「では行きます――ドロー!」
 セラが自らのデッキからカードを引く。
 アルカディアムーブメントの使者……セラは、一体どんなカードを使うのだろうか。
「……モンスターをセット。これでターンエンドです」
 フィールドに裏側守備表示のモンスターがセットされ、セラのターンが終了する。
 魔法・罠の伏せもない。思うようにデッキが回っていないのか。それとも――
「俺のターンだな。ドロー!」
 ドローしたカードを手札に加える。創志の初手には、<ジェネクス・サーチャー>がいる。このモンスターなら、例え戦闘破壊されても、後続のモンスターを召喚できる。
 もう1つの選択肢としては、<ジェネクス・ワーカー>を召喚し、その効果で手札の<ジェネクス・ブラスト>を特殊召喚する手もある。<ジェネクス・ブラスト>の効果を発動させ、早急に<ジェネクス・コントローラー>を手札に加えられる。
「俺は<ジェネクス・サーチャー>を召喚!」

<ジェネクス・サーチャー>
効果モンスター
星4/地属性/機械族/攻1600/守 400
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキから攻撃力1500以下の「ジェネクス」と名のついた
モンスター1体を自分フィールドに表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。

 モンスターを展開する上で重要なカード<誘導信号>を引いていない今は、手札の「ジェネクス」を温存しておいた方がいい。
「行くぜ! ジェネクス・サーチャーで伏せモンスターを攻撃!」
 ガチャガチャとやかましい音を立てて、<ジェネクス・サーチャー>が無骨な腕を振るう。
 殴られたのは、電球がいくつもついたヘルメットをかぶった、白衣の小人だった。
「攻撃されたのは<カバリスト>――このモンスターが戦闘によって破壊され墓地に送られた時、デッキからサイキック族モンスターを1体手札に加えることができます」
 キキィー! という奇怪な悲鳴を上げて、<カバリスト>が砕け散る。
「しかし、その効果を使うには800ポイントのライフコストが必要――よって、私は<カバリスト>の効果を使いません」

<カバリスト>
効果モンスター
星1/地属性/サイキック族/攻 100/守 100
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
800ライフポイントを払う事で自分のデッキから
サイキック族モンスター1体を手札に加える。

「な……!?」
 <サイキック族>――創志が初めて見る種族だ。
 加えて、セラは効果を発動しなかった。デュエルはまだ始まったばかり。ライフは十分にある。<カバリスト>の効果を使うために、伏せたんじゃないのか――!?
「戸惑っていますね」
 困惑する創志の脳内を見透かしたように、セラは告げる。
「サイキック族のモンスターは、効果の発動にライフコストがかかるものがほとんど……そのタイミングは慎重に見極めなければなりません。あなたのような単純思考では到底使いこなせないでしょう」
 人を小馬鹿にしたような口調に、創志の怒りが一気に頂点まで達する。
「……」
 が、寸前のところで怒りをセーブすることができた。
 ……相手に惑わされるな。
 ティトの存在が、創志にいい緊張感を与えてくれる。このデュエルには彼女の命運がかかっているのだ。安い挑発に乗るのは、この勝負を受けたことで終わりにしなければならない。
「カードを1枚セットして、ターンエンドだ」

【セラLP4000】 手札5枚
場:なし
【創志LP4000】 手札4枚
場:ジェネクス・サーチャー(攻撃)、伏せ1枚