にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドM 2-5

「俺のターンだな、ドロー!」
 流れる血を実感し、感情が昂ぶる。
 犯罪者との危険なデュエルをいくつもこなしてきた輝王だったが、こんな気分になるのは初めてだった。
 同時に、悔しくもある。
 敵に近づけたことでこんなにも興奮するなんて――それだけ、輝王は親友である高良を大切に思っていたのだ。
「まずは伏せカードを起動する! 永続罠エレメント・チェンジ! このカードの効果で、お前のフィールド上のモンスターはすべて光属性になる!」

<エレメントチェンジ>
永続罠(オリジナルカード・エラッタ)
発動時に1種類の属性を宣言する。
このカードがフィールド上に存在する限り、
相手フィールド上の全ての表側表示モンスターは自分が宣言した属性になる。

「ほう……何をするつもりじゃ?」
 <六武衆―ニサシ>には、自身の代わりに他の六武衆を破壊できる身代わり効果を持つ。
 加えて<六武衆の師範>は、カード効果によって破壊された場合、墓地の<六武衆>を手札に加える効果を持つ。
 つまり、この場を切り開くには<六武衆の師範>を戦闘破壊することが条件。
 輝王の残りLPはたったの700。1つのミスが、即敗北につながる。
「俺はAOJサウザンド・アームズを召喚!」
 フィールドに現れたのは、いくつもの腕に、剣、刀、斧、槍など、様々な得物を構えた機械の戦士。

<A・O・J サウザンド・アームズ>
効果モンスター
星4/闇属性/機械族/攻1700/守   0
このカードは相手フィールド上に表側表示で存在する
光属性モンスターに1回ずつ攻撃をする事ができる。
光属性以外のモンスターと戦闘を行う場合、
そのダメージ計算前にこのカードを破壊する。

「さらに装備魔法ジャスティス・セイバーをサウザンド・アームズに装着!」
 血液を思わせる赤い線が、刃の中心に走る――その正義の剣を<AOJサウザンド・アームズ>の腕の1本が掴む。

ジャスティス・セイバー>
装備魔法(オリジナルカード)
「A・O・J」と名のついたモンスターのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。
このカードを装備したモンスターが破壊され墓地に送られたとき、デッキからレベル4以下の「A・O・J」と名のついたモンスターを特殊召喚できる。

 <ジャスティス・セイバー>の効果で、<AOJサウザンド・アームズ>の攻撃力は2200まで上昇。<六武衆の師範>を上回った。
「行くぞ! サウザンド・アームズで、六武衆の師範を攻撃!」
 黒き機械の戦士が、老いた男へと猛進する。
 迎え撃つ侍は、鞘に収まった刀を手に、居合いの構えを取る。
「サウザンド・ブレイバー!」
 ゴウッ! と風を切り裂く音と共に、あらゆる角度から一斉に襲い掛かる刃。
 ――その刹那、眼帯に隠された右目が、侍の「神技」を呼び起こす。
 白刃が煌めく。
 連続する金属音。
 そして、一瞬の静寂。
 <六武衆の師範>は、<AOJサウザンド・アームズ>の得物を、全て弾き返した。
 はずだった。
 蓄えた白髭が血に染まる。
 侍の腹を、<ジャスティス・セイバー>の黒い刃が貫いていた。
 砕け散る<六武衆の師範>。
「くう……!」

【切LP4000→3900】

 初ダメージだが、傷は浅い。
 切の顔には、その余裕がはっきりと表れていた。
「どうしたのじゃ、輝王! こんなものでは届かぬぞ! 奴らに!」
「――連撃がお前の専売特許だと思うなよ」
「ぬ?」
 <六武衆の師範>を葬った<AOJサウザンド・アームズ>が、次なる標的を捉える。
「AOJサウザンド・アームズは、相手フィールド上の光属性モンスターに、1回ずつ攻撃を行うことができる」
「な、なんじゃと!?」
「六武衆―ニサシを攻撃! サウザンド・ブレイバー!」
 緑の侍は2本の刀で迫る得物を捌こうとするが、地力が及ばない。
 態勢が崩れたところを一気に押し切られ、砕かれる。
「なんと……!」

【切LP3900→3100】

 これで、切のフィールドは空になった。
「カードを1枚セットして、ターンエンドだ」
 形勢逆転、とまではいかないが、少なくとも流れを引き寄せることはできた。
 その証拠に、眉根を寄せて「むむむ……」とうなっている切の顔が見える。
(――まったく。あいつを相手にしていると、調子が狂う)
 デュエル中にあんな間抜けな顔を見せられると、こちらまで気が抜けてしまう。
 思えば、出会ってから今まで、ずっと切のペースに巻き込まれていた。
 ストラも結構強引なほうだが、人の話を聞かない、なんてことはない。
「ぬ、ぬう。さすがじゃな。返しのターンで師範とニサシを倒すとは。じゃが、まだライフ差は開いたままじゃの」
「どうかな。俺の場には伏せカードが1枚ある。警戒を怠らないことだ」
「そ、そんなこと言って、わしを惑わそうとしても無駄じゃぞ!」
 ……目を泳がせながら言っても、説得力が皆無なんだが。レボリューションの中でも実力者、という発言も怪しくなってきた。
 簡単に動揺した切を見て、しかし輝王は気を引き締める。
 再び<六武衆>を展開されれば、こちらの敗北は確実だろう。
 付け入る隙は作った。あとは、相手の手と――
 輝王はデュエルディスクの中で眠るカードたちに目をやる。
 ――俺の「実力」しだいだ。