遊戯王 New stage サイドS 2-3
「先攻はそっちからでいいよ」
「……後悔するなよ! ドロー!」
少女から漂う冷気を肌で感じながら、創志は自分の手札に意識を集中する。
……さっきまでは何の感情も読み取れなかったのに、デュエルが始まったら少し楽しそうに見えるのは、創志の気のせいなのだろうか。
(――くそ! よそ見をしてる場合か!)
首をブンブン振り、強制的に少女から視線を外す。
さっきから――正確には少女を初めて見たときから、創志の頭の中に何かが引っ掛かっている。漠然としたイメージで、うまく言葉にできないのだが……どこかで少女を見たことがあるような……そのもどかしさのせいで、自然に少女の方に意識がいってしまう。
「そういや、名前聞いてなかったな」
あまりにも唐突な話題だったが、
「……ティト。ティト・ハウンツ」
少女――ティトは気にしたふうもなく答える。
もちろん「ティト」という名前に聞き覚えはない。それでは、ティトの姿から感じる既視感は何なのだろう。
……今は考えるだけ無駄だ。それに、他のことに気を取られている状態で勝てる相手ではないはず。創志は気を引き締め直すと、自らの剣を選び取る。
「俺はジェネクス・ニュートロンを召喚!」
創志のデッキの中では、最も頼れる下級アタッカーを呼び出す。漆黒の装甲が月明かりを受けて輝き、人型を形成するパーツの各所が動作を確かめるように動く。
「……後悔するなよ! ドロー!」
少女から漂う冷気を肌で感じながら、創志は自分の手札に意識を集中する。
……さっきまでは何の感情も読み取れなかったのに、デュエルが始まったら少し楽しそうに見えるのは、創志の気のせいなのだろうか。
(――くそ! よそ見をしてる場合か!)
首をブンブン振り、強制的に少女から視線を外す。
さっきから――正確には少女を初めて見たときから、創志の頭の中に何かが引っ掛かっている。漠然としたイメージで、うまく言葉にできないのだが……どこかで少女を見たことがあるような……そのもどかしさのせいで、自然に少女の方に意識がいってしまう。
「そういや、名前聞いてなかったな」
あまりにも唐突な話題だったが、
「……ティト。ティト・ハウンツ」
少女――ティトは気にしたふうもなく答える。
もちろん「ティト」という名前に聞き覚えはない。それでは、ティトの姿から感じる既視感は何なのだろう。
……今は考えるだけ無駄だ。それに、他のことに気を取られている状態で勝てる相手ではないはず。創志は気を引き締め直すと、自らの剣を選び取る。
「俺はジェネクス・ニュートロンを召喚!」
創志のデッキの中では、最も頼れる下級アタッカーを呼び出す。漆黒の装甲が月明かりを受けて輝き、人型を形成するパーツの各所が動作を確かめるように動く。
<ジェネクス・ニュートロン> 効果モンスター 星4/光属性/機械族/攻1800/守1200 このカードが召喚に成功した場合、 そのターンのエンドフェイズ時に自分のデッキから 機械族のチューナー1体を手札に加える事ができる。
「カードを1枚セットして、エンドフェイズに移行。ジェネクス・ニュートロンの効果により、俺はジェネクス・コントローラーを手札に加える」
シンクロモンスターを召喚するために必要なチューナーを、早々に手札に呼び込む。
伏せたカードは<誘導信号>。次のターンでモンスターを展開し、一気に勝負を決める。
「ターンエンドだ」
「……わたしのターン」
細い指先で涼やかにカードを引くティト。たったそれだけの動作に、完成された彫刻のような美しさを感じる。
「モンスターをセット。カードを2枚セットしてターンエンド」
お互いの手の内が分からない序盤。様子見であるだろう布陣を敷いてくる。
「俺のターン!」
ドローしたカードは<ジェネクス・ブラスト>。
シンクロモンスターを召喚するために必要なチューナーを、早々に手札に呼び込む。
伏せたカードは<誘導信号>。次のターンでモンスターを展開し、一気に勝負を決める。
「ターンエンドだ」
「……わたしのターン」
細い指先で涼やかにカードを引くティト。たったそれだけの動作に、完成された彫刻のような美しさを感じる。
「モンスターをセット。カードを2枚セットしてターンエンド」
お互いの手の内が分からない序盤。様子見であるだろう布陣を敷いてくる。
「俺のターン!」
ドローしたカードは<ジェネクス・ブラスト>。
<ジェネクス・ブラスト> 効果モンスター 星4/風属性/魔法使い族/攻1600/守1300 このカードが特殊召喚に成功した時、 自分のデッキから「ジェネクス」と名のついた闇属性 モンスター1体を手札に加える事ができる。
<誘導信号>の効果で特殊召喚することで闇属性モンスターを手札に加え、さらに<ジェネクス・コントローラー>とシンクロすることで風のシンクロジェネクスを呼び出すことができる。
「行くぜ! 俺は永続罠誘導信号を発動! 効果により――」
「待って」
ティトの一言で、創志の動きがびたりと止まる。
魔女――その二つ名を持つにふさわしい、鋭いプレッシャー。
「速攻魔法を発動する。瞬間氷結――魔法・罠の発動を無効にし、伏せ状態にする」
「な……!?」
「その後、3ターンは発動できない」
「行くぜ! 俺は永続罠誘導信号を発動! 効果により――」
「待って」
ティトの一言で、創志の動きがびたりと止まる。
魔女――その二つ名を持つにふさわしい、鋭いプレッシャー。
「速攻魔法を発動する。瞬間氷結――魔法・罠の発動を無効にし、伏せ状態にする」
「な……!?」
「その後、3ターンは発動できない」
<瞬間氷結> 速攻魔法(漫画版GXカード) 魔法・罠カードの発動を無効にし、伏せ状態にする。 その後3ターンは発動できない。
創志のフィールドの伏せカード<誘導信号>が瞬く間に氷漬けになる。
これでは、シンクロを狙うことはできない。
(――なら、別の手だ!)
即座に思考を切り替え、創志は次のカードを手に取る。
「ジェネクス・ワーカーを通常召喚!」
ホバークラフトの上にいくつものファンと人型の上半身を乗せたロボットが、光の召喚円から勢いよく飛び出す。
これでは、シンクロを狙うことはできない。
(――なら、別の手だ!)
即座に思考を切り替え、創志は次のカードを手に取る。
「ジェネクス・ワーカーを通常召喚!」
ホバークラフトの上にいくつものファンと人型の上半身を乗せたロボットが、光の召喚円から勢いよく飛び出す。
「ジェネクス・ワーカーの効果発動! このカードをリリースすることで、手札から<ジェネクス>と名のついたモンスターを1体特殊召喚する!」
<ジェネクス・ブラスト>を特殊召喚し効果を発動するのも手だが……ここはこっちだ。
「俺は手札からソーラー・ジェネクスを特殊召喚!」
両腕に飛行機の翼を装着し、飛行ユニットから黄金色の光屑を噴射しながら、スマートな人型ロボットが飛翔する。
<ジェネクス・ブラスト>を特殊召喚し効果を発動するのも手だが……ここはこっちだ。
「俺は手札からソーラー・ジェネクスを特殊召喚!」
両腕に飛行機の翼を装着し、飛行ユニットから黄金色の光屑を噴射しながら、スマートな人型ロボットが飛翔する。
<ソーラー・ジェネクス> 効果モンスター 星7/光属性/機械族/攻2500/守1500 このカードは「ジェネクス」と名のついたモンスター1体を リリースして召喚する事ができる。 自分フィールド上に表側表示で存在する「ジェネクス」と 名のついたモンスターが墓地へ送られる度に、 相手ライフに500ポイントダメージを与える。
これで、創志のフィールドにはモンスターが2体。内1体は、攻撃力の高い上級モンスターだ。
「行くぞ! ジェネクス・ニュートロンで伏せモンスターを攻撃! エレメントウェイブ!」
<ジェネクス・ニュートロン>の手のひらにエネルギーが収束し、ティトの伏せモンスター目がけて波動のように発射される。
「…………!」
伏せモンスターがリバースする。<氷結界の番人ブリズド>――体が氷で出来ているかのような美麗な鳥が、波動を受けて破壊される。
「ブリズドの効果発動……戦闘によって破壊され墓地に送られたとき、デッキからカードを1枚ドローする」
「行くぞ! ジェネクス・ニュートロンで伏せモンスターを攻撃! エレメントウェイブ!」
<ジェネクス・ニュートロン>の手のひらにエネルギーが収束し、ティトの伏せモンスター目がけて波動のように発射される。
「…………!」
伏せモンスターがリバースする。<氷結界の番人ブリズド>――体が氷で出来ているかのような美麗な鳥が、波動を受けて破壊される。
「ブリズドの効果発動……戦闘によって破壊され墓地に送られたとき、デッキからカードを1枚ドローする」
<氷結界の番人ブリズド> 効果モンスター 星1/水属性/水族/攻 300/守 500 このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、 自分のデッキからカードを1枚ドローする。
もう1枚の伏せカードを使わなかったのは、このドローが目的だったのか、それとも攻撃反応型カードではないのか。しかし、このまま<ソーラー・ジェネクス>のダイレクトアタックをやすやすと通したりはしないはず……。
(――ちっ、らしくねぇよ!)
慎重になりすぎている自分の思考に苛立つ。
いつもは信二にプレイングの軽率さを指摘されてばかりだったが、即決速攻が創志の戦い方なのだ。
相手の戦略を考えるのはいい。しかし、それにとらわれすぎて自分のプレイスタイルを失ってしまっては勝てる戦いも勝てなくなる。
(そうだろ、先生――!)
(――ちっ、らしくねぇよ!)
慎重になりすぎている自分の思考に苛立つ。
いつもは信二にプレイングの軽率さを指摘されてばかりだったが、即決速攻が創志の戦い方なのだ。
相手の戦略を考えるのはいい。しかし、それにとらわれすぎて自分のプレイスタイルを失ってしまっては勝てる戦いも勝てなくなる。
(そうだろ、先生――!)