遊戯王 New stage サイドS 2-2
「……!?」
創志は驚いて目を見開く。幼さの残る顔立ち――雪のように白い肌に、半分ほど開いた灰色の瞳、鈍く輝く銀髪は、細い首のあたりで切りそろえられている。身長は150あるかないかぐらいだろうか。身につけた紺色のブレザーと灰色のプリーツスカートは、どこかの学校の制服を思わせる。
こんな異様な空間には似つかわしくない可愛らしい少女だったが、それでいて漂わせる神秘的な雰囲気は、この空間の主であることを現しているようでもあった。
少女は小さな口を動かし、
「……だれ?」
もう一度訊いてきた。
「あ……えっと……」
女の子が出てきたことに面食らい、頭の中がぐちゃぐちゃになってしまった創志は、答えを返すことができない。
「…………」
そんな創志の様子を見て、少女は三度目の問いを投げかける。
「…………だれ?」
「お、俺は創志。皆本創志だ。弟の信二を探してここまで来たんだけど……」
言ってから、何を馬鹿正直に自己紹介しているんだとさらに混乱する。
少女は少し首をかしげ、創志の顔をじっと見つめる。
感情の読み取れない灰色の瞳が近づき、創志は無意識のうちに後ずさる。
美少女に見つめられて恥ずかしいということもある。だがそれ以上に、この少女からは得体のしれない「何か」を感じるのだ。
「……あなた、レボリューションの人じゃないの?」
「れぼりゅーしょん? なんだそりゃ」
レボリューションっていうのは確か……創志は言葉の意味を考え始めるが、そこに別の単語が割り込みをかける。
組織。
「レボリューション」というのは、信二をさらった組織の名前ではないのか?
「……違うの? だったらどうしてこんなところに?」
「さっき言っただろ。弟を探しに来たんだ。ここに連れてこられてるはずなんだけど……皆本信二っていうヤツ知らないか?」
「知らないし、今日は誰も来てない」
少女は創志から視線を外さぬまま、無表情で答える。
「……その、『レボリューション』っていうのは何なんだ?」
ようやく落ち着いてきた頭で考えながら、今度は創志から問う。
少女が彼らの仲間であるなら、答えが返ってくるのは期待できない。
しかし、少女は何のためらいもなくすらすらと話し始めた。
「レボリューションは、レビンがまとめてるデュエリストの集団。たくさんデュエリストを集めて何かしようとしているみたいだけど、詳しいことはわたしも知らない。わたしの役目は――」
少女は一旦言葉を区切り、一呼吸置いて告げる。
創志は驚いて目を見開く。幼さの残る顔立ち――雪のように白い肌に、半分ほど開いた灰色の瞳、鈍く輝く銀髪は、細い首のあたりで切りそろえられている。身長は150あるかないかぐらいだろうか。身につけた紺色のブレザーと灰色のプリーツスカートは、どこかの学校の制服を思わせる。
こんな異様な空間には似つかわしくない可愛らしい少女だったが、それでいて漂わせる神秘的な雰囲気は、この空間の主であることを現しているようでもあった。
少女は小さな口を動かし、
「……だれ?」
もう一度訊いてきた。
「あ……えっと……」
女の子が出てきたことに面食らい、頭の中がぐちゃぐちゃになってしまった創志は、答えを返すことができない。
「…………」
そんな創志の様子を見て、少女は三度目の問いを投げかける。
「…………だれ?」
「お、俺は創志。皆本創志だ。弟の信二を探してここまで来たんだけど……」
言ってから、何を馬鹿正直に自己紹介しているんだとさらに混乱する。
少女は少し首をかしげ、創志の顔をじっと見つめる。
感情の読み取れない灰色の瞳が近づき、創志は無意識のうちに後ずさる。
美少女に見つめられて恥ずかしいということもある。だがそれ以上に、この少女からは得体のしれない「何か」を感じるのだ。
「……あなた、レボリューションの人じゃないの?」
「れぼりゅーしょん? なんだそりゃ」
レボリューションっていうのは確か……創志は言葉の意味を考え始めるが、そこに別の単語が割り込みをかける。
組織。
「レボリューション」というのは、信二をさらった組織の名前ではないのか?
「……違うの? だったらどうしてこんなところに?」
「さっき言っただろ。弟を探しに来たんだ。ここに連れてこられてるはずなんだけど……皆本信二っていうヤツ知らないか?」
「知らないし、今日は誰も来てない」
少女は創志から視線を外さぬまま、無表情で答える。
「……その、『レボリューション』っていうのは何なんだ?」
ようやく落ち着いてきた頭で考えながら、今度は創志から問う。
少女が彼らの仲間であるなら、答えが返ってくるのは期待できない。
しかし、少女は何のためらいもなくすらすらと話し始めた。
「レボリューションは、レビンがまとめてるデュエリストの集団。たくさんデュエリストを集めて何かしようとしているみたいだけど、詳しいことはわたしも知らない。わたしの役目は――」
少女は一旦言葉を区切り、一呼吸置いて告げる。
「処刑人、だから」
あらゆる感情が消えた冷たい瞳に射抜かれ、創志の全身に怖気が走る。
遅れて、心臓が危険を訴えているかのように早鐘を打つ。創志は震えそうになる体を抑えるために、デュエルディスクを装着した左腕に力を込める。
「処刑人……?」
「そう。わたしの役目は、組織で不要になった人間を、ここで処刑すること」
にわかには信じられない言葉だ。こんな少女が、人間を処刑しているだって――?
少女の視線が動く。それを追いかけると、いくつもの氷像が目に入った。
創志の脳裏に、金盛の言葉がよみがえる。
遅れて、心臓が危険を訴えているかのように早鐘を打つ。創志は震えそうになる体を抑えるために、デュエルディスクを装着した左腕に力を込める。
「処刑人……?」
「そう。わたしの役目は、組織で不要になった人間を、ここで処刑すること」
にわかには信じられない言葉だ。こんな少女が、人間を処刑しているだって――?
少女の視線が動く。それを追いかけると、いくつもの氷像が目に入った。
創志の脳裏に、金盛の言葉がよみがえる。
魔女。
そこで、創志は少女がデュエルディスクを身に付けていることに気づいた。
聞いたことがある。このネオ童実野シティには、カードの力を実体化させる「サイコデュエリスト」と呼ばれる人々がいることを。
「まさか……!」
この氷像たちは、少女が「処刑」した結果だっていうのか……!?
創志の考えを肯定するように、少女はこくりと頷く。
そこには、何の感情も浮かんではいない。
金盛を相手にしたときのような怒りは沸いてこなかった。その代わりにやりきれなさが体を支配する。
どうしてこんな女の子が、人を氷漬けにするような真似をッ……!!
「それじゃ、そろそろ始めよう?」
そう言って、少女はデュエルディスクを構える。
「……どういうことだ?」
「あなたが組織の人間であろうとなかろうと関係ない。この館に足を踏み入れたものは――」
パキパキ、と音を立てて少女が立つ周囲の絨毯が凍り始める。銀髪が冷たい風に揺れ、エントランスをさらなる異空間へ変貌させようとしている。
これが、少女の……サイコデュエリストの力なのか。
「処刑、する」
少女の鋭い眼光が、創志を射抜く。
「……処刑ってのは、デュエルのことなのか?」
「うん。わたしに負ければ、ああなる」
少女が指さしたのは、人間が中に入った氷像だ。
「なるほど」
それを聞いて、創志の体から恐怖が消えた。問答無用で氷漬けにされるのでなければ、むやみに怯える必要はない。
俺には、この「ジェネクス・デッキ」がある。
「で、俺が勝ったらどうなるんだ? ここから出してもらえるのか?」
「……? どうしてそんなこと訊くの?」
少女は心の底から理解できないと言わんばかりに問い返してくる。
「どうしてって――」
聞いたことがある。このネオ童実野シティには、カードの力を実体化させる「サイコデュエリスト」と呼ばれる人々がいることを。
「まさか……!」
この氷像たちは、少女が「処刑」した結果だっていうのか……!?
創志の考えを肯定するように、少女はこくりと頷く。
そこには、何の感情も浮かんではいない。
金盛を相手にしたときのような怒りは沸いてこなかった。その代わりにやりきれなさが体を支配する。
どうしてこんな女の子が、人を氷漬けにするような真似をッ……!!
「それじゃ、そろそろ始めよう?」
そう言って、少女はデュエルディスクを構える。
「……どういうことだ?」
「あなたが組織の人間であろうとなかろうと関係ない。この館に足を踏み入れたものは――」
パキパキ、と音を立てて少女が立つ周囲の絨毯が凍り始める。銀髪が冷たい風に揺れ、エントランスをさらなる異空間へ変貌させようとしている。
これが、少女の……サイコデュエリストの力なのか。
「処刑、する」
少女の鋭い眼光が、創志を射抜く。
「……処刑ってのは、デュエルのことなのか?」
「うん。わたしに負ければ、ああなる」
少女が指さしたのは、人間が中に入った氷像だ。
「なるほど」
それを聞いて、創志の体から恐怖が消えた。問答無用で氷漬けにされるのでなければ、むやみに怯える必要はない。
俺には、この「ジェネクス・デッキ」がある。
「で、俺が勝ったらどうなるんだ? ここから出してもらえるのか?」
「……? どうしてそんなこと訊くの?」
少女は心の底から理解できないと言わんばかりに問い返してくる。
「どうしてって――」
「わたしが負けることなんて、ないもの」
だから、創志が勝ったときの話など、無意味……そう言いたいわけか。
「――言ったな!!」
悪いが、手加減はできない。というか、手加減などしている場合ではないだろう。
信二を助けるためにも、立ち止まっているわけにはいかなかった。
「――言ったな!!」
悪いが、手加減はできない。というか、手加減などしている場合ではないだろう。
信二を助けるためにも、立ち止まっているわけにはいかなかった。