遊戯王 New stage サイドＭ １－２

「先行はもらうぞ。ドロー」
　相手の雰囲気に呑まれないようにしながら、輝王は冷静にカードをドローする。
　宇川の思惑がどうであれ、奴をこの場に拘束できていることは僥倖だ。しかし、あまり時間をかけ過ぎれば、他のセキュリティがここまでたどり着いてしまうかもしれない。そうなれば、「レボリューション」を探る上で大きな痛手を負うことになる。
「俺はモンスターをセット。カードを１枚セットしてターンエンドだ」
「くふ。慎重ですね」
　――それに、アイツの笑い方は不愉快だ。
　さっさと決着をつけるに越したことはないだろう。
「私のターンですね。ドロー」
　宇川は手札を舐めるように見わたしたあと、ゆっくりとカードを選び取る。
「それでは、エーリアン・ソルジャーを召喚しますね」

＜エーリアン・ソルジャー＞
通常モンスター
星４/地属性/爬虫類族/攻1900/守 800
謎の生命体、エーリアンの上級戦士。
比較的高い攻撃力を持つが、反面特殊な能力は身に付けていない。

　黒の鎧をまとった四足のリザードが、大剣を軽々と右手で振り回す。
「バトル！　エーリアン・ソルジャーで伏せモンスターを攻撃！」
　雄叫びを上げた＜エーリアン・ソルジャー＞が、輝王のフィールドの伏せモンスターに迫る。
「永続罠カード発動。エレメントチェンジ」

＜エレメントチェンジ＞
永続罠（オリジナルカード）
発動時に１種類の属性を宣言する。
このカードがフィールド上に存在する限り、
フィールド上の全ての表側表示モンスターは自分が宣言した属性になる。

　伏せカードがゆっくりと頭をあげ、存在をあらわにする。
「エレメントチェンジ……？　攻撃反応型罠ではない？」
「そうだ。俺はこのカードの効果により、フィールド上のモンスター全ての属性を『光』に変える」
　場の＜エーリアン・ソルジャー＞の属性が、地から光に変わる。
「――エーリアン・ソルジャー！　伏せモンスターを破壊しなさい！」
　エーリアンの戦士は、白刃をきらめかせ、輝王の伏せモンスターを切り裂く。
　その攻撃によってカードがリバースし、正体が明らかになる。裂かれたのは、紫色の光を放つ球体だった。
　真っ二つになった球体は、ジジジ……と回路が焼き切れるような音を立てて、盛大に爆発する。
「なっ……！？」
「俺の伏せモンスターはＡ・ボム。このカードは、光属性モンスターとの戦闘で破壊され墓地に送られたとき、フィールド上のカード２枚を破壊する」

＜Ａ・ボム＞
効果モンスター
星２/闇属性/機械族/攻 400/守 300
このカードが光属性モンスターとの戦闘によって
破壊され墓地へ送られた時、フィールド上のカード２枚を破壊する。

　＜エーリアン・ソルジャー＞が爆発に巻き込まれ、粉々に砕け散る。
「ッ……ですが、Ａ・ボムはあなたのカードも破壊しますよ！？」
　宇川の言うとおり、輝王の＜エレメントチェンジ＞も＜Ａ・ボム＞の爆発によって破壊される。
「……ターンを終了するのか？」
　輝王は顔色一つ変えずに、宇川に問いかける。
「――ええ、ターンを終了します」
「俺のターンだな。ドロー」
　ドローしたカードは＜リミッター解除＞。なるほど、さっさとケリをつけろということか……。
　宇川の使う＜エーリアン＞の能力には底知れぬものを感じる。相手の術中にはまる前に、勝たせてもらう。
「俺はモンスターをセットする。カードを２枚セットし、ターンエンドだ」
　1ターン前を巻き戻しで見ているかのような輝王のプレイングに、宇川は疑念のこもった視線を向けながら、
「どうしました？　デッキが思うように回っていないようですね」
　口では輝王を挑発する。
「……ターンエンドだ」
「それでは、遠慮なく攻めさせてもらいますよ。ドロー！」
　宇川はドローしたカードを見て、ニヤリと口元を歪める。
「まずは伏せカードを発動します。光の護封剣！」
「――ッ！？」

＜光の護封剣＞
通常魔法（制限カード）
相手フィールド上に存在するモンスターを全て表側表示にする。
このカードは発動後、相手のターンで数えて３ターンの間フィールド上に残り続ける。
このカードがフィールド上に存在する限り、
相手フィールド上に存在するモンスターは攻撃宣言をする事ができない。

　宇川の前に３本の光の剣が降り注ぎ、楯のようにその身を守る。さらに剣から発する強烈な光が、輝王の伏せモンスターの存在を明らかにする。
「ＡＯＪアンリミッターですか。なるほど、そのカードを壁にしなければならないほど切迫しているようですね」

＜Ａ・Ｏ・Ｊアンリミッター＞
効果モンスター
星２/闇属性/機械族/攻 600/守 200
このカードをリリースして発動する。
自分フィールド上に表側表示で存在する「Ａ・Ｏ・Ｊ」
と名のついたモンスター１体の元々の攻撃力を
このターンのエンドフェイズ時まで倍にする。

「……どうかな」
　宇川の言葉に、輝王は短く答えを返す。
「いいでしょう。私はエーリアン・ウォリアーを召喚！」
　光輪から現れたのは、筋骨隆々の体を白い鎧で包んだリザードの闘士だ。

＜エーリアン・ウォリアー＞
効果モンスター
星４/地属性/爬虫類族/攻1800/守1000
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
このカードを破壊したモンスターにＡカウンターを２つ置く。
Ａカウンターが乗ったモンスターは、
「エーリアン」と名のついたモンスターと戦闘する場合、
Ａカウンター１つにつき攻撃力と守備力が３００ポイントダウンする。

「エーリアンと名のついたモンスターの召喚に成功したとき、このカードは手札から特殊召喚できます。来なさい！　エーリアン・ドッグ！」
　＜エーリアン・ウォリアー＞が放り投げた骨に飛びつくように、同じく白い鎧をまとった＜エーリアン・ドッグ＞がフィールドに出現する。

＜エーリアン・ドッグ＞
効果モンスター
星３/光属性/爬虫類族/攻1500/守1000
自分が「エーリアン」と名のついたモンスターの召喚に成功した時、
このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
この効果で特殊召喚に成功した時、相手フィールド上に
表側表示で存在するモンスターにＡカウンターを２つ置く。

「エーリアン・ドッグの効果発動！　手札からの特殊召喚に成功したとき、相手フィールド上の表側モンスターにＡカウンターを２つ置きます！」
　＜ＡＯＪアンリミッター＞に、紫色のスライムが２体、べちゃりと音を立てて付着する。
「さらに行きますよ！　私はＡカウンターを２つ取り除き、このカードを特殊召喚します！」
「ちっ……１ターンで３体のモンスターを並べてくるか！」
「しのぎ切れますか！　来なさい、エーリアン・リベンジャー！！」
　スライムが光の輪に吸い込まれ、中から鋭い爪を生やした６本の腕を持つ上級エーリアンが、強烈なプレッシャーをまき散らしながらその姿を現す。

＜エーリアン・リベンジャー＞
効果モンスター
星６/闇属性/爬虫類族/攻2200/守1600
このカードはフィールド上に存在するＡカウンターを２つ取り除き、
手札から特殊召喚する事ができる。
１ターンに１度、相手フィールド上に表側表示で存在する
全てのモンスターにＡカウンターを１つ置く事ができる。
Ａカウンターが乗ったモンスターは、
「エーリアン」と名のついたモンスターと戦闘する場合、
Ａカウンター１つにつき攻撃力と守備力が３００ポイントダウンする。
「エーリアン・リベンジャー」は自分フィールド上に１体しか表側表示で存在できない。

　＜エーリアン・リベンジャー＞の体からパリパリと雷鳴が走り、＜エーリアン・ウォリアー＞は両手の爪をギチギチと研ぎ澄ませる。
　対して、輝王のフィールドには守備表示の＜ＡＯＪアンリミッター＞１体。
「…………」
　しかし、２枚の伏せカードがある。迂闊に攻撃を仕掛ければ、フィールド上のモンスターが全滅する可能性も捨てきれない――そう考えているのか、宇川はバトルフェイズへの移行をとどまっていた。
「来ないのか？」
　輝王は軽く誘いを投げかける。挑発に乗るような相手ではないことは分かっていたが、それでも相手の思考を少しでも乱せれば御の字だ。
「――バトルフェイズに入ります。エーリアン・ドッグでアンリミッターを攻撃！」
　＜エーリアン・ドッグ＞が、＜ＡＯＪアンリミッター＞目がけて大地を駆ける。
「罠カード発動！　攻撃の無力化！」

＜攻撃の無力化＞
カウンター罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
相手モンスター１体の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する。

「やはり……そう簡単には通りませんか」
「エーリアン・ドッグの攻撃を無効にし、貴様のバトルフェイズを終了する」
　目の前に出現した黒い穴におびえ、キャンキャンと鳴きながら＜エーリアン・ドッグ＞が戻っていく。
「ターンエンドするしかないですね」
「俺のターン！」
　輝王は力強く宣言すると、カードをドローする。
　相手のフィールドにはエーリアンが３体。しかも＜光の護封剣＞によってこちらの攻撃は封じられている。
　明らかに不利な状況だが、輝王の瞳には勝利を確信した光が宿っていた。