遊戯王 New stage サイドM プロローグ
「――なあ、お前はどうしてセキュリティに入ったんだ?」
湿気を多分に含んだぬるい風が、屋上に吹き抜けた。
夕日に照らされた友の顔を見て、しかし輝王正義(きおうまさよし)はすぐには答えられなかった。
転落防止用の柵に寄り掛かる友の隣に並び、眼下に広がるシティの街並みを眺める。
「……たくさんの人を守りたい、から」
ようやく絞り出したのは、本心とは程遠い答えだった。
「ハッ。お前のガラじゃないだろ」
まさか即答されるとは思わなかった。
輝王は愉快気に忍び笑いを漏らす友人を睨みつける。
「そういうお前はどうなんだ。なぜセキュリティに入った?」
お前こそ、セキュリティの人間になるようなガラじゃないだろ、とは言わなかった。
輝王の問いに、友人は忍び笑いをぴたりと止めると、真っ直ぐにこちらを見据えた。
……長い付き合いだが、こいつのこんな顔は久しぶりに見た。
首筋にじわりと汗が浮かぶのが分かった。ぬるい風がうっとうしく感じる。
輝王が前髪をかきあげたとき、友人はぽつりと、しかしはっきりと告げた。
「――決まってる。私怨さ」
半年後、昔馴染みで同期の友人――高良火之(たからひの)は、事件捜査中に命を落とした。
現場には血にまみれたデュエルモンスターズのカードが散らばっており、死亡する直前まで何者かとデュエルを行っていた形跡が残っていた。
高良の葬式に出席した日、輝王はようやく「私怨」の意味を理解した。
湿気を多分に含んだぬるい風が、屋上に吹き抜けた。
夕日に照らされた友の顔を見て、しかし輝王正義(きおうまさよし)はすぐには答えられなかった。
転落防止用の柵に寄り掛かる友の隣に並び、眼下に広がるシティの街並みを眺める。
「……たくさんの人を守りたい、から」
ようやく絞り出したのは、本心とは程遠い答えだった。
「ハッ。お前のガラじゃないだろ」
まさか即答されるとは思わなかった。
輝王は愉快気に忍び笑いを漏らす友人を睨みつける。
「そういうお前はどうなんだ。なぜセキュリティに入った?」
お前こそ、セキュリティの人間になるようなガラじゃないだろ、とは言わなかった。
輝王の問いに、友人は忍び笑いをぴたりと止めると、真っ直ぐにこちらを見据えた。
……長い付き合いだが、こいつのこんな顔は久しぶりに見た。
首筋にじわりと汗が浮かぶのが分かった。ぬるい風がうっとうしく感じる。
輝王が前髪をかきあげたとき、友人はぽつりと、しかしはっきりと告げた。
「――決まってる。私怨さ」
半年後、昔馴染みで同期の友人――高良火之(たからひの)は、事件捜査中に命を落とした。
現場には血にまみれたデュエルモンスターズのカードが散らばっており、死亡する直前まで何者かとデュエルを行っていた形跡が残っていた。
高良の葬式に出席した日、輝王はようやく「私怨」の意味を理解した。