にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドS 1―2

「先攻はもらうぜ! ドロー!」
 創志は勢いよくデッキからカードをドローする。そういえば、デュエルディスクを付けてデュエルをするのは初めてだ。信二が昔持っていたから、使い方は何となく覚えているが。
「俺はジェネクス・サーチャーを召喚!」
 ソリッドビジョンシステムがカードのデータを読み取り、<ジェネクス・サーチャー>の姿――様々な機械が寄せ集まって形成されている人型ロボットが、創志の真横に出現した光の輪から現れる。

<ジェネクス・サーチャー>
効果モンスター
星4/地属性/機械族/攻1600/守 400
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキから攻撃力1500以下の「ジェネクス」と名のついた
モンスター1体を自分フィールドに表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。

「カードを一枚セットし、ターンエンドだ」
 当たり前のことだが、先攻1ターン目は攻撃することができない。
 相手の攻撃で<ジェネクス・サーチャー>が倒されてしまったとしても、リクルート効果によって後続のモンスターを召喚できる。悪くない選択のはずだ。
「俺のタァーン!!」
 豪快に宣言した金髪ツンツン男――金盛(かねもり)は、へっへっへと不敵に笑う。
「そのカードは『戦闘破壊』されないと効果を発動できねぇよな……なら、コイツだ!」
 金盛は手札の中から一枚のカードを選び取り、ディスクにセットする。
「魔法カード地砕きを発動! ジェネクス・サーチャーを破壊するぜ!」
「何!?」

<地砕き>
通常魔法(制限カード)
相手フィールド上に表側表示で存在する守備力が一番高いモンスター1体を破壊する。

 フィールドに無数の亀裂が走り、その中に<ジェネクス・サーチャー>が飲み込まれる。
「さらにデーモンソルジャーを召喚! そのままダイレクトアタックだ!!」

<デーモンソルジャー>
通常モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻1900/守1500
デーモンの中でも精鋭だけを集めた部隊に所属する戦闘のエキスパート。
与えられた任務を確実にこなす事で有名。

 映し出された悪魔の騎士が、携えた剣で創志の体を切り裂く。
「ぐあっ……」
【創志LP4000→2100】
 立体映像とはいえ、体の中を鋼の刃が通るのは気分のいいものではない。
 わずかに走った痛みに顔をしかめながら、しかし創志は金盛から視線を外さない。
「カードを一枚セットして、ターンエンドだ」
 悠々とエンド宣言をする金髪野郎を見て、創志の中に新たな怒りが生まれる。
「てめえ……まさかそのカードは!」
 <デーモンソルジャー>……それは、信二が使うデッキのアタッカーだった。
「さっすがお兄ちゃんは鋭いな。ご想像通り、これは弟くんのデッキだ」
「ふざ……けるな!!」
 創志は今すぐにでも金盛に殴りかかりたい衝動を必死に抑えながら、全力で吠える。
 なんで信二のデッキを、この野郎が使ってるんだ。どうして!!
 金盛は手札のカードを見下したように眺めたあと、
「正直、どうしてこんなクズカードばかり入ってるのか疑問だが……ま、この俺が使うことによって、ただの紙束も立派な『デッキ』に進化するのさ」
 そう吐き捨てた。
「てめえに味あわせてやるよ。俺というデュエリストのプレイングの――」

「黙れ」

 一言だけ、低い声で創志は告げた。
 最早吠える気にも、殴る気にもなれない。カードをクズ扱いするデュエリストの風上にもおけない野郎は――

 潰す。

 それだけだ。
「俺のターン!」
 煮えたぎる怒りがこもった指先で、カードをドローする。
 その怒りに応えるように、ドローしたカードは<デーモンソルジャー>を打ち破るためのキーカードだった。
「――俺はジェネクスウンディーネを召喚!」
 丸底フラスコを中心に、体の各所にチューブが伸びた女性型のロボットが召喚される。
「ジェネクスウンディーネの効果を発動! デッキから水属性モンスターを墓地に送ることによって、自分のデッキからジェネクス・コントローラーを手札に加える!」

<ジェネクスウンディーネ>
効果モンスター
星3/水属性/水族/攻1200/守 600
このカードが召喚に成功した時、
自分のデッキに存在する水属性モンスター1体を墓地に送る事で、
自分のデッキから「ジェネクス・コントローラー」1体を手札に加える。

 創志はデッキから水属性の<ジェネクス・アクア>を墓地に送り、<ジェネクス・コントローラー>を手札に加える。
 このモンスターこそ、創志のデッキの中核。
「さらに伏せカードオープン! 永続罠誘導信号を発動! ライフを500ポイント支払い、手札からレベル4以下のジェネクス特殊召喚する!」

<誘導信号> 
永続罠(オリジナルカード)
500ライフポイントを払って発動する。
自分の手札からレベル4以下の<ジェネクス>と名のついたモンスターを1体特殊召喚する。
このカードの効果は1ターンに1度、自分のメインフェイズでしか発動できない。

【創志LP2100→1600】
「来い! ジェネクス・コントローラー!」
 頭でっかちな機械の小人が、光の輪から姿を現す。
「ジェネクス・コントローラー……チューナーだと!?」

<ジェネクス・コントローラー>
チューナー(通常モンスター)
星3/闇属性/機械族/攻1400/守1200
仲間達と心を通わせる事ができる、数少ないジェネクスのひとり。
様々なエレメントの力をコントロールできるぞ。

「レベル3のジェネクスウンディーネに、同じくレベル3のジェネクス・コントローラーをチューニング!」
 <ジェネクス・コントローラー>の頭についたランプが点灯し、3つの光の玉にその姿を変える。
 <ジェネクスウンディーネ>の周りに回転する輪のエフェクトが出現し、光の玉がその体に重なる。
「原初の煌めきが、新たな力の結晶を生み出す! 集え! 水の力よ!!」
 <ジェネクスウンディーネ>の体がまばゆい光の柱に包まれ、辺りの闇を裂く。

シンクロ召喚! 逆巻け! ハイドロ・ジェネクス!!」


<ハイドロ・ジェネクス>
シンクロ・効果モンスター
星6/水属性/機械族/攻2300/守1800
「ジェネクス・コントローラー」+チューナー以外の水属性モンスター1体以上
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。

 光が四散した後に現れたのは、先端についたフラスコから水の刃を伸ばした槍を持ち、肩や肘に同じようなフラスコをつけた、機械の戦士だった。
「ぐっ……シンクロ召喚!? まさか、てめえが……」
 金盛の両目が驚愕に見開かれる。だが、もう遅い。
 ――俺は、これ以上ないってくらい怒ってるんだ。
「ハイドロ・ジェネクスでデーモンソルジャーを攻撃! スプラッシュ・ランス!!」
 先端の水の刃が渦巻き、巨大な水柱になって<デーモンソルジャー>に襲い掛かる。
 圧倒的な量の水流に押し潰され、そのまま粉々に砕け散る。
「ぐうっ……!」
【金盛LP4000→3600】
「ハイドロ・ジェネクスの効果発動! 破壊した相手モンスターの攻撃力分ライフを回復する!」
 <デーモンソルジャー>を葬った水流が創志の周りで渦巻き、失ったLPを回復する。
【創志LP1600→3500】
「これで形勢逆転だな。カードを1枚セットして、ターンエンド――」
「調子に乗るなよ!!」
 苦痛というよりも、遅れをとった悔しさをにじませながら、金盛が吠えた。
「俺はてめえのエンドフェイズに伏せカードの終焉の焔を発動! 場に2体の黒焔トークンを呼ぶぜ!」

<終焉の焔>
速攻魔法
このカードを発動する場合、
自分は発動ターン内に召喚・反転召喚・特殊召喚できない。
自分のフィールド上に「黒焔トークン」
(悪魔族・闇・星1・攻/守0)を2体守備表示で特殊召喚する。
(このトークンは闇属性モンスター以外の生け贄召喚のための生け贄にはできない)

 フィールドに不気味な黒い炎に包まれたトークンが出現する。顔の部分に浮かぶ一つ目が、ぎょろりと創志を凝視した。
「俺のターンだ! ドロー!!」
 乱暴にカードを引いた金盛は、それには目もくれずに手札から1枚のカードを選ぶ。
「黒焔トークン2体をリリース! 来やがれ! 魔王ディアボロス!!」
 フィールド上空に出現した渦巻き状の暗雲に、黒焔トークンが吸い込まれていく。
 雷光が走り、暗雲の中心から巨大な『何か』が降りてくる。
「グアアアアアアアッ!!」
 鎖が巻きついた鎧を纏った黒竜――<魔王ディアボロス>の咆哮が、創志の鼓膜を震わす。
 信二のヤツ、こんなカードまで――

<魔王ディアボロス>
効果モンスター
星7/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守1000
このカードは特殊召喚できない。
このカードを生け贄召喚する場合の生け贄は闇属性モンスターでなければならない。
相手ドローフェイズのドロー前に相手のデッキの一番上のカードを確認して
デッキの一番上または一番下に戻す。
このカードは他のカードの効果によって生け贄に捧げる事はできない。

ディアボロス! そのうざってぇ機械の塊を粉砕しろ! デモニック・バースト!!」
 <魔王ディアボロス>の口から黒い炎が吐き出され、<ハイドロ・ジェネクス>を飲み込もうとする。
(まずいッ――!)
 創志は瞬時に手札に目を滑らせ、反撃のための一手に考えを巡らせる。
 現状では<魔王ディアボロス>を倒す手段はない。
 伏せてある罠カードを起動すれば、フィールドの<ハイドロ・ジェネクス>は守ることができる。だが、対価として大きな代償を支払うことになる。

 迷っている暇はない――