にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王オリジナルstage 【ep-09 サイドS】

 創志が戦闘開始を宣言すると、飛翔を続けていた<A・ジェネクストライフォース>が空中で制止した。
 目下には、畏怖をばらまき続ける暴君の姿がある。
「――<トライフォース>で<The tyrant NEPTUNE>を攻撃!」
 創志は右手を天に向けて掲げ、それを勢いよく振り下ろす。
 それを合図にして、上空の<A・ジェネクストライフォース>が標的に向けて急降下を始めた。
「愚カな。殺セ、<The tyrant NEPTUNE>!」
 <The tyrant NEPTUNE>が鋭い咆哮を上げる。
 直後、暴君の周囲に<地天の騎士ガイアドレイク>が手にしていた黒の突撃槍が出現する。その数は1本だけではなく、視界を覆い尽くすほどの無数の槍が<The tyrant NEPTUNE>の周りを囲んでいた。
「インフィニティ・シェイバー」
 ペインの抑揚のない声が響き渡る。
 そして、再びの咆哮。
 中空に制止していた無数の突撃槍が、空を駆ける<A・ジェネクストライフォース>に向けて一斉に放たれる。
「<トライフォース>!」
 創志がその名を叫ぶと、銀色の機械兵はさらに加速した。
 突撃槍の雨が、銀色を塗り潰す。
 それでも、大地の魂を宿した<A・ジェネクストライフォース>は飛翔をやめない。
 避ける。
 避ける。
 避ける。
 ギリギリのところで突撃槍を避け、標的へと猛進する。
 だが。
「終わりダ……!」
 ついに、その動きが突撃槍に捉えられる。
 研ぎ澄まされた矛先が、銀色の機械兵を貫く直前――
「――手札から速攻魔法<イージーチューニング>を発動!」
 創志は、魔法カードを発動した。

<イージーチューニング>
速攻魔法
自分の墓地に存在するチューナー1体をゲームから除外して発動する。
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の攻撃力は、
発動時にゲームから除外したチューナーの攻撃力分アップする。

「なッ……このタイミングで発動スルだと!?」
「墓地のチューナーモンスター、<A・ジェネクス・リモート>を除外して、攻撃力を500ポイントアップさせる!」
 <A・ジェネクストライフォース>のバイザーに光が走り、ブースターから光が溢れる。
 目の前に迫っていた突撃槍は、<A・ジェネクストライフォース>の首筋を掠めただけで、致命傷を与えるには至らない。
「これで、<トライフォース>の攻撃力は4500! <The tyrant NEPTUNE>を上回りました!」
「やってしまうのじゃ! 創志!」
 ギャラリーからの声援が、創志を後押しする。
「いっけええええええええええええええええ!!」
 加速する。
 銃弾のような速度で放たれた突撃槍よりも速く、<A・ジェネクストライフォース>は加速する。
 そして。
 ついに、槍の雨を抜けた。
「クッ……<The tyrant NEPTUNE>!」
 暴君が手にしていた大鎌を構えるが、加速した銀色の機械兵を前にその動作は鈍重すぎる。
 すでに、<A・ジェネクストライフォース>は右腕の砲撃ユニットを構え、攻撃を放つ直前だった。
「食らえ! アース・トライ・バスター!」
 <A・ジェネクストライフォース>の砲口から、光が迸る。
 圧倒的な量の光撃が、<The tyrant NEPTUNE>の目前で放たれた。
 背部のブースターがさらに出力を上げ、砲撃の反動を相殺する。
 回避は不可能。
 防御も、不可能。
 光に呑みこまれた冷たき暴君は、断末魔を上げる暇すらなく消滅していく。
 <The tyrant NEPTUNE>が纏っていた鎧に、大きな亀裂が走る。
 直後、暴君は光の中で爆散した。

【ペインLP3000→2800】

 巻き起こった爆発が土煙を巻き上げ、創志とペインの視界が遮られる。
「よし! <The tyrant NEPTUNE>を倒したのじゃ!」
 さらに、ペインの手札は0枚。ライフはまだ半分以上あるが、この状況を引っ繰り返すのは厳しいはずだ。
「図に乗るナヨ小僧……! <The tyrant NEPTUNE>は倒レタが、俺が負けタわけではナイ!」
 だが、ペインはまだ逆転の手があるとでも言いたげに強気な言葉を吐く。
 それを聞いた創志は、ニヤリと笑った。

「いいや。あんたの負けだぜ」

「ナニ……!?」
 ペインが驚愕の色を含んだ声を漏らす。
 なぜならば。
 土煙を突き破り――攻撃を終えたはずの<A・ジェネクストライフォース>が、目前に迫っていたからだ。
「バカな! 何故!?」
「こいつを使わせてもらった。速攻魔法<エアボーン・アタック>――装備状態の<A・ジェネクス・ストライカー>を墓地に送ることで、選択したモンスターはこのターン2回攻撃ができる!」

<エアボーン・アタック>
速攻魔法(オリジナルカード)
装備カード扱いとして装備されている「A・ジェネクス・ストライカー」を墓地に送り、
自分フィールド上に表側表示で存在する「ジェネクス」と名のついたモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターは、このターン2回攻撃する事ができる。

 ペインの前に着地した<A・ジェネクストライフォース>は、再度攻撃態勢に入る。
「終わりだ! <トライフォース>でダイレクトアタック! アース・トライ・バスター!」
 放たれた光が、ペインを――痛みを与える者を呑み込んだ。

【ペインLP2800→0】









 創志の勝利が確定すると、周囲を取り囲んでいた土の壁がぼろぼろと崩れていく。
 それに合わせるように、麻袋を被った男――ペインの体もまた、風に流される砂のように消えていく。
「待て……!」
 痛みに悲鳴を上げる体を無理矢理動かし、創志はペインの元へと歩を進める。
 まだ、ヤツからは何も聞いていない。
 どうしていきなりデュエルを挑んできたのか。そして、ここは一体どこなのか。
 聞きたいことは山ほどあったが、ペインの体はどんどん消えていく。すでに、右半身が無くなっていた。
「お前は一体――」
「見事ダ。それでこそ、我ガ主の生贄ニふさわシイ」
 その言葉を最後に、ペインは創志の前から姿を消した。
 生贄。
 創志の脳裏に、<次元誘爆>を発動した青年の言葉が蘇る。

 おめでとう。醜い家畜共。貴様らは、俺様に選ばれたのだ――

「創志君!」
 かづなの声で我に返る。
 振り向けば、かづなが心配そうな表情で駆け寄ってくる。その後ろには、切と純也の姿もあった。
「無茶しすぎです! すぐに手当てをしないと……」
「……ワリィ」
 かづなに促され、創志はその場に腰を下ろす。途端に、今まで無視していた疲労がドッと押し寄せてきた。
「さすがじゃと言いたいが……相変わらず危なかっしい戦い方じゃのう」
「ですね。見てるこっちがヒヤヒヤしてしまいました」
「ほっとけ」
 それでも、切や純也の憎まれ口に反撃するくらいの元気はある。
(これからどうするかなぁ……)
 デュエルを終えて気が抜けてしまった創志は、何となく空を見上げる。不安感を煽る灰色の空が、どこまでも続いていた。
 結局、状況整理も出来ていないので、分からないことだらけだ。
「まずは傷口の消毒ですね。確かこの辺に清めの塩が――」
 何やら不穏な単語を呟きながら、自分のディスクをごそごそと漁っているかづな。
 ……とりあえず、これ以上痛い目に合わないことを祈ろう。