にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage 21

 創志が光坂と出会ったのは、随分前のことだ。
 ごろつきに襲われそうになっていた彼を助け、お礼にデュエルモンスターズのデッキをもらった。
 信二に勝つために、何度も光坂に教えを請いた。
 何度も練習相手になってもらった。
 突然姿を消した「先生」は、創志に絶望をもたらすために突然現れた。
 彼の手を取ることを拒み、命を落としかけた。
 そして今。
 決着をつけるために、創志は光坂と向かい合っている。
 彼の瞳は――
 今まで見たことのないほど、冷たい光を湛えていた。




「僕のターン。ドロー」
 淡々とカードを引いた光坂は、ドローしたカードをじっと見つめる。
「……レビン」
 唐突にパートナーの名を呼ぶ。
「――何だ?」
 光坂の様子がおかしいのに気がついたのか、レビンが訝しげに返事をする。
 それを聞き、光坂は深く息を吐いてから、

「君は、何人の仲間を犠牲にしてきた?」

 抑揚のない声で呟いた。
「……?」
 レビンが光坂の言葉の意味を考えようとしたときだった。
「――魔法カード<ミラクルシンクロフュージョン>を発動」
 問いを発した当人が動いた。
 全く予想していなかったカードの発動に、光坂以外の全員が不意をつかれる。

<ミラクルシンクロフュージョン>
通常魔法
自分のフィールド上・墓地から、
融合モンスターカードによって決められた
融合素材モンスターをゲームから除外し、
シンクロモンスターを融合素材とするその融合モンスター1体を
融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。
また、セットされたこのカードが
相手のカードの効果によって破壊され墓地へ送られた時、
自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 瞬間、前部甲板を覆い尽くすほどの「影の沼」が、創志たちの足元に広がる。
「これは……!?」
 <レアル・ジェネクス・クロキシアン>が召喚された時に生まれたものに似ているが、規模が違いすぎる。それに、影を彩る「黒」も濃くなっているように見える。
「――<レヴュアタン>!?」
 レビンが発した叫びに、創志は魔の主のほうへと視線を向ける。
 足元に出現した黒い沼に、<魔轟神レヴュアタン>の体が玉座ごと沈んでいく。背の羽は沼から伸びた触手によって縛り付けられ、羽ばたくことができないようだ。
「何が起こっている――!?」
 突如始まった異常事態に、輝王も動揺を隠せないようだった。
「……レビン。君はサテライトの人々を救うために、多くの仲間を犠牲にしてきた。目的を達するために、多くのものを切り捨てたんだ」
 光坂の声には感情がこもっていない。
 が、彼から発せられる有無も言わさぬプレッシャーに、全員が気圧されていた。

「次は、君の番だ」

「なっ……!? これは――」
 光坂の言葉を合図に、今度はレビン自身も沼に沈んでいく。
「くそっ! なんだこれは! 光坂ッ!」
 レビンは必死に手足を動かしてもがくが、体の沈没が止まることはない。
 ――あのままじゃやべえ!
 そう思った創志は、レビンを助けるために反射的に飛びだす。
 が。
「邪魔はダメだよ、創志」
 光坂の一言で、全身が石になったかのように動かなくなる。
「僕は<ミラクルシンクロフュージョン>の効果で、墓地の<レアル・ジェネクス・クロキシアン>とフィールドの<魔轟神レヴュアタン>をゲームから除外……」
 <魔轟神レヴュアタン>とレビンの姿が、闇に呑まれ完全に見えなくなる。

「さあ、この戦いに幕を引こう。融合召喚――これが進化の先に辿りついた『闇』<レアル・ジェネクス・ジエンド>」

 足元に広がった黒い沼から、闇がせり上がる。
 金色の鎧が沼の中から這い出て、秩序なく蠢く闇を形作っていく。
「――――」
 言葉を失う。
 創志は――隣に立つ輝王も、呆然とその光景を見つめるしかなかった。
 鎧によって模られた姿は、翼を失った悪魔の上半身。
 下半身は、いまだ影の沼にうずめたまま。
 金色の鎧に圧迫された闇が、関節部などの隙間から漏れ出ている。
 兜を被った頭には、顔も瞳もない。
 見えるのは、永久の闇だけだ。
 伝わってくるのは、虚無。
 あらゆる生物を消し去ろうとする、虚無だ。
「クライマックスだ。舞台を華麗に彩ってほしいな」