遊戯王 New stage サイドS 7-9
真っ赤に燃え上がる炎を見つめながら、竜美は思案する。
――加減はしないと言ったはずなのに。
炎が鎮火しないと正確な状況は掴めないが、以前<ジュラック・メテオ>を召喚したときよりも、明らかに衝撃が少ない。無意識のうちに力をセーブしてしまったのだろうか。
しかし、これだけの炎だ。無事ではいられないだろう。
数秒前まで目の前に立っていた少年の姿を思い浮かべ、竜美は奥歯を噛む。
<ジュラック・メテオ>の効果により、フィールド上のカードは全て破壊された。その後、自分の墓地からチューナー1体を特殊召喚できるが、それで勝負が決するわけではない。
どんな手を使ってでも勝つ。
<ジュラック・メテオ>の激突が生んだ衝撃により、相手デュエリスト本人に傷を負わせ、デュエル続行を不可能にさせる。それが竜美の狙いだった。
少年の荒削りな戦術に腹を立てていた自分を思い出し、心が乱れる。自分の方が、ひどい悪手を指しているではないか。
深いため息を吐いて、気持ちを静める。
そもそも、このデュエルはセキュリティ本部襲撃を前にしての、肩慣らしだったはずだ。にもかかわらず、予想以上に苦戦してしまった。その事実に動揺し、<ジュラック・メテオ>本来の力を引き出せなかったのだろう。
――決して、あの少年に「何か」を感じていたわけではない。
「私は勝ち続けなくちゃいけない。負ければ、居場所を失うのだから」
炎の中で身を焼かれている少年への手向けの言葉のように、告げる。
不本意な幕切れだが、これで終いだ。
――加減はしないと言ったはずなのに。
炎が鎮火しないと正確な状況は掴めないが、以前<ジュラック・メテオ>を召喚したときよりも、明らかに衝撃が少ない。無意識のうちに力をセーブしてしまったのだろうか。
しかし、これだけの炎だ。無事ではいられないだろう。
数秒前まで目の前に立っていた少年の姿を思い浮かべ、竜美は奥歯を噛む。
<ジュラック・メテオ>の効果により、フィールド上のカードは全て破壊された。その後、自分の墓地からチューナー1体を特殊召喚できるが、それで勝負が決するわけではない。
どんな手を使ってでも勝つ。
<ジュラック・メテオ>の激突が生んだ衝撃により、相手デュエリスト本人に傷を負わせ、デュエル続行を不可能にさせる。それが竜美の狙いだった。
少年の荒削りな戦術に腹を立てていた自分を思い出し、心が乱れる。自分の方が、ひどい悪手を指しているではないか。
深いため息を吐いて、気持ちを静める。
そもそも、このデュエルはセキュリティ本部襲撃を前にしての、肩慣らしだったはずだ。にもかかわらず、予想以上に苦戦してしまった。その事実に動揺し、<ジュラック・メテオ>本来の力を引き出せなかったのだろう。
――決して、あの少年に「何か」を感じていたわけではない。
「私は勝ち続けなくちゃいけない。負ければ、居場所を失うのだから」
炎の中で身を焼かれている少年への手向けの言葉のように、告げる。
不本意な幕切れだが、これで終いだ。
「そうかよ」
届くはずのない少年の声が、竜美の鼓膜を震わせる。
「俺はあんたがどんな人生を送ってきたのか知らねえけど――」
徐々に炎の勢いが弱まっていく。
「たった一度の負けで失っちまうほど、あんたの居場所は脆いのかよ!?」
フィールド上のカードを巻き込んで爆発しているはずの<ジュラック・メテオ>の姿が、竜美の視界に映る。
その体に、深緑の鎖が巻きついている。
「もしそうだとしたら――たった一度の敗北で居場所を失うんだとしたら! そこは本当の居場所じゃないんだ!」
ギシギシと鎖が軋む。
<ジュラック・メテオ>の巨体の向こうに、必死に叫ぶ少年が見える。
「ふざけるな! アンタに……甘っちょろいことばかりぬかすガキが知ったような口を利かないで!」
状況の把握も忘れ、竜美は怒りを顕わにして吠える。
何も知らないくせに。
地獄を見てきたわけでもないくせに。
「本当の居場所っていうのは、壊れたり失ったりするもんじゃないんだよ!」
理想ばかりを語って。
綺麗事ばかりほざいて。
「俺は――」
それなのに。
「俺は、俺のために戦ってくれた――俺の居場所を守ってくれたティトのためにも、負けるわけにはいかない!」
どうして、少年の言葉はこんなにも胸を刺すのだろう。
「俺はあんたがどんな人生を送ってきたのか知らねえけど――」
徐々に炎の勢いが弱まっていく。
「たった一度の負けで失っちまうほど、あんたの居場所は脆いのかよ!?」
フィールド上のカードを巻き込んで爆発しているはずの<ジュラック・メテオ>の姿が、竜美の視界に映る。
その体に、深緑の鎖が巻きついている。
「もしそうだとしたら――たった一度の敗北で居場所を失うんだとしたら! そこは本当の居場所じゃないんだ!」
ギシギシと鎖が軋む。
<ジュラック・メテオ>の巨体の向こうに、必死に叫ぶ少年が見える。
「ふざけるな! アンタに……甘っちょろいことばかりぬかすガキが知ったような口を利かないで!」
状況の把握も忘れ、竜美は怒りを顕わにして吠える。
何も知らないくせに。
地獄を見てきたわけでもないくせに。
「本当の居場所っていうのは、壊れたり失ったりするもんじゃないんだよ!」
理想ばかりを語って。
綺麗事ばかりほざいて。
「俺は――」
それなのに。
「俺は、俺のために戦ってくれた――俺の居場所を守ってくれたティトのためにも、負けるわけにはいかない!」
どうして、少年の言葉はこんなにも胸を刺すのだろう。
「罠カード<デモンズ・チェーン>を使わせてもらった。<ジュラック・メテオ>の効果は無効になり、攻撃することができない!」
創志の場のカードから伸びた無数の鎖が、<ジュラック・メテオ>の巨体をフィールドに縛り付けていた。
創志の場のカードから伸びた無数の鎖が、<ジュラック・メテオ>の巨体をフィールドに縛り付けていた。
<デモンズ・チェーン> 永続罠 フィールド上に表側表示で存在する 効果モンスター1体を選択して発動する。 選択したモンスターは攻撃する事ができず、効果は無効化される。 選択したモンスターが破壊された時、このカードを破壊する。
場を覆っていた炎が完全に消え、熱気だけが残る。
「また助けてもらっちまったな、ティト」
創志とティトを守っていた水色の障壁――<氷結界の守護陣>が生みだした防御陣が、風に流れて消えていく。
「……ううん。助けてもらったのは、わたし。そうしががんばって戦ってるのに、後ろで震えてるだけじゃ、ここに来た意味がない」
いまだ顔に生気が戻ったとは言い難いが、しっかりと自分の足で立ったティトが、弱々しい笑みを浮かべる。
「――ッ!!」
ティトの身を案じた瞬間、創志の頭を激痛が駆け抜ける。
暴れ狂う<ジュラック・メテオ>を抑えるために現出させた<デモンズ・チェーン>。それを保つために、脳に高い負荷がかかっているようだ。
これ以上戦いを長引かせることはできない。
「まさか、生き延びるとはね……ターンエンドよ」
次のターンで、今度こそ決着をつける。
「また助けてもらっちまったな、ティト」
創志とティトを守っていた水色の障壁――<氷結界の守護陣>が生みだした防御陣が、風に流れて消えていく。
「……ううん。助けてもらったのは、わたし。そうしががんばって戦ってるのに、後ろで震えてるだけじゃ、ここに来た意味がない」
いまだ顔に生気が戻ったとは言い難いが、しっかりと自分の足で立ったティトが、弱々しい笑みを浮かべる。
「――ッ!!」
ティトの身を案じた瞬間、創志の頭を激痛が駆け抜ける。
暴れ狂う<ジュラック・メテオ>を抑えるために現出させた<デモンズ・チェーン>。それを保つために、脳に高い負荷がかかっているようだ。
これ以上戦いを長引かせることはできない。
「まさか、生き延びるとはね……ターンエンドよ」
次のターンで、今度こそ決着をつける。
【創志LP2900】 手札1枚
場:A・ジェネクス・アクセル、デモンズ・チェーン、伏せ1枚
【竜美LP400】 手札2枚
場:ジュラック・メテオ(攻撃・攻撃不可)、血の代償、一族の結束、化石発掘(使用済み)
場:A・ジェネクス・アクセル、デモンズ・チェーン、伏せ1枚
【竜美LP400】 手札2枚
場:ジュラック・メテオ(攻撃・攻撃不可)、血の代償、一族の結束、化石発掘(使用済み)
<ジュラック・メテオ>の効果を封じることには成功したが、その攻撃力は<一族の結束>の効果を受けて3600。超えるのが容易な数字ではない。
<A・ジェネクス・アクセル>の効果で、墓地に存在するレベル4以下の機械族モンスターを特殊召喚するとしても、<ジュラック・メテオ>を倒せるカードはない。墓地にいるモンスターでは、攻撃力が2倍になっても届かないのだ。
(結局は、ドロー頼みか)
創志と戦ったとき、常に次の手を用意していたセキュリティの男を思い浮かべ、自分の進歩の無さを呪う。
「俺のターン……ドロー!」
デッキが応えてくれることを信じ、カードをドローする。
「――俺は<A・ジェネクス・バードマン>を召喚!」
黄色い大きなくちばしが目立つ、鳥人をデフォルメしたかのようなモンスターが、創志のフィールドに現れる。
<A・ジェネクス・アクセル>の効果で、墓地に存在するレベル4以下の機械族モンスターを特殊召喚するとしても、<ジュラック・メテオ>を倒せるカードはない。墓地にいるモンスターでは、攻撃力が2倍になっても届かないのだ。
(結局は、ドロー頼みか)
創志と戦ったとき、常に次の手を用意していたセキュリティの男を思い浮かべ、自分の進歩の無さを呪う。
「俺のターン……ドロー!」
デッキが応えてくれることを信じ、カードをドローする。
「――俺は<A・ジェネクス・バードマン>を召喚!」
黄色い大きなくちばしが目立つ、鳥人をデフォルメしたかのようなモンスターが、創志のフィールドに現れる。
<A・ジェネクス・バードマン> チューナー(効果モンスター) 星3/闇属性/機械族/攻1400/守 400 自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を手札に戻して発動する。 このカードを手札から特殊召喚する。 この効果を発動するために手札に戻したモンスターが風属性モンスターだった場合、 このカードの攻撃力は500ポイントアップする。 この効果で特殊召喚したこのカードは、 フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。
<リミット・リバース> 永続罠 自分の墓地から攻撃力1000以下のモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。 そのモンスターが守備表示になった時、そのモンスターとこのカードを破壊する。 このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。 そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。
<A・ジェネクス・ソリッド> 効果モンスター 星2/闇属性/機械族/攻 500/守1200 自分フィールド上に表側表示で存在する「ジェネクス」と名のついた 水属性モンスター1体を墓地へ送って発動する。 自分のデッキからカードを2枚ドローする。 この効果は1ターンに1度しか使用できない。
「<A・ジェネクス・ソリッド>? いつの間にそんなカードが……」
<A・ジェネクス・トライアーム>の効果を使った際に、手札から捨てたモンスターだ。
水色のボディに赤いツインアイを光らせる機械兵が、墓地から蘇る。
「<A・ジェネクス・ソリッド>に、<A・ジェネクス・バードマン>をチューニング! 残された結晶が、数多の力を呼び起こす!」
2体のモンスターが光柱に包まれる。
「またシンクロ召喚……!?」
<A・ジェネクス・バードマン>が持つ2つの翼が、形を変えて現出する。
「機械仕掛けの翼となれ! シンクロ召喚! 解き放て<A・ジェネクス・ストライカー>!」
光の中から飛び出したのは、翼型のブースターを携えた戦闘機だった。
<A・ジェネクス・トライアーム>の効果を使った際に、手札から捨てたモンスターだ。
水色のボディに赤いツインアイを光らせる機械兵が、墓地から蘇る。
「<A・ジェネクス・ソリッド>に、<A・ジェネクス・バードマン>をチューニング! 残された結晶が、数多の力を呼び起こす!」
2体のモンスターが光柱に包まれる。
「またシンクロ召喚……!?」
<A・ジェネクス・バードマン>が持つ2つの翼が、形を変えて現出する。
「機械仕掛けの翼となれ! シンクロ召喚! 解き放て<A・ジェネクス・ストライカー>!」
光の中から飛び出したのは、翼型のブースターを携えた戦闘機だった。
<A・ジェネクス・ストライカー> シンクロ・効果モンスター(オリジナルカード) 星5/闇属性/機械族/攻1600/守1200 「ジェネクス」と名のついたチューナー+チューナー以外の機械族モンスター1体以上 1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に装備カード扱いとして 自分フィールド上の「ジェネクス」と名のついたモンスターに装備、 または装備を解除して表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。 この効果で装備カード扱いになっている場合のみ、 装備モンスターの攻撃力は1500ポイントアップする。
「<A・ジェネクス・ストライカー>は、自分フィールド上の<ジェネクス>と名のついたモンスターに装備することが出来る! <アクセル>に<ストライカー>を装備!」
<A・ジェネクス・ストライカー>のコクピット部分が分離し、翼型のブースターが<A・ジェネクス・アクセル>の背部に装着される。
「そして、<A・ジェネクス・ストライカー>を装備したモンスターは、攻撃力が1500ポイントアップする!」
「攻撃力……4100……!?」
竜美は苦虫を噛み潰したような表情で、目を見開く。
「そうし……!」
「終わらせる! <A・ジェネクス・アクセル>で<ジュラック・メテオ>を攻撃!」
静かに空気を震わせる音が響き、<Aジェネクス・アクセル>の翼に光が集まっていく。
右手を地に付け、加速する瞬間を待つ。
「私はッ……負けるわけにはいかないのにッ……!!」
銀色の体が、炎の隕石に向かって跳ぶ。
一瞬で間合いを詰めた<A・ジェネクス・アクセル>は、<ジュラック・メテオ>を文字通り蹴り上げる。
<デモンズ・チェーン>の鎖が引きちぎれる。
バゴォン! という破砕音と共に、鱗の破片をまき散らしながら、<ジュラック・メテオ>の体が宙に浮く。
「飛べ! <アクセル>!」
作り物の翼の力を借りて、銀色の機械兵が夜空へと飛翔する。
銀色の軌跡が、闇の中に浮かび上がる。
<ジュラック・メテオ>の上空まで飛んだ<A・ジェネクス・アクセル>が、車輪のついた右足を突き出す。
<A・ジェネクス・ストライカー>のコクピット部分が分離し、翼型のブースターが<A・ジェネクス・アクセル>の背部に装着される。
「そして、<A・ジェネクス・ストライカー>を装備したモンスターは、攻撃力が1500ポイントアップする!」
「攻撃力……4100……!?」
竜美は苦虫を噛み潰したような表情で、目を見開く。
「そうし……!」
「終わらせる! <A・ジェネクス・アクセル>で<ジュラック・メテオ>を攻撃!」
静かに空気を震わせる音が響き、<Aジェネクス・アクセル>の翼に光が集まっていく。
右手を地に付け、加速する瞬間を待つ。
「私はッ……負けるわけにはいかないのにッ……!!」
銀色の体が、炎の隕石に向かって跳ぶ。
一瞬で間合いを詰めた<A・ジェネクス・アクセル>は、<ジュラック・メテオ>を文字通り蹴り上げる。
<デモンズ・チェーン>の鎖が引きちぎれる。
バゴォン! という破砕音と共に、鱗の破片をまき散らしながら、<ジュラック・メテオ>の体が宙に浮く。
「飛べ! <アクセル>!」
作り物の翼の力を借りて、銀色の機械兵が夜空へと飛翔する。
銀色の軌跡が、闇の中に浮かび上がる。
<ジュラック・メテオ>の上空まで飛んだ<A・ジェネクス・アクセル>が、車輪のついた右足を突き出す。
「ブリッツ・メテオ・ドライブッ!!」
限界まで引き絞られた矢が放たれる。
銀色の弾丸と化した<A・ジェネクス・アクセル>が、<ジュラック・メテオ>目がけて急降下する。
「――!」
竜美が口を動かすが、言葉は出ない。
貫く。
<A・ジェネクス・アクセル>が着地すると同時――
体の中心を撃ち抜かれた<ジュラック・メテオ>が爆砕した。
銀色の弾丸と化した<A・ジェネクス・アクセル>が、<ジュラック・メテオ>目がけて急降下する。
「――!」
竜美が口を動かすが、言葉は出ない。
貫く。
<A・ジェネクス・アクセル>が着地すると同時――
体の中心を撃ち抜かれた<ジュラック・メテオ>が爆砕した。
【竜美LP400→0】