にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドS 7-6

「俺のターンだな。ドロー」
 創志の手札はわずか2枚。<ジュラック・タイタン>を倒したとはいえ、<ジュラック・ギガノト>も同じように対処するのは不可能だ。
 幸い、ドローしたカードは<ジェネクス・サーチャー>。時間稼ぎにはうってつけのモンスター……支部での敗北の際にばらまかれたカードの中で、無事だった物の1枚だ。
「モンスターをセットする。ターンエンドだ」
 竜美が後続を召喚してくれば、流れが大きく傾く可能性が高い。

【創志LP2900】 手札1枚
場:伏せモンスター、マシン・デベロッパー(カウンター4)、伏せ2枚
【竜美LP1700】 手札1枚
場:ジュラック・ギガノト(攻撃)、血の代償、伏せ1枚

「私のターン、ドロー」
 創志の防戦的な手に茶々を入れることなく、自分のターンの開始を告げる竜美。
 赤髪の下から覗く鋭い視線には、デュエルを始めたときのような余裕は感じられない。
 同時に、慢心もない。
 全力で相手を叩き潰す――竜美の放つ威圧感が、それを訴えてくる。
「魔法カード<一族の結束>を発動! 私の墓地には恐竜族のモンスターしかいない。よって、<ジュラック・ギガノト>の攻撃力は800ポイントアップし、3700!」

<一族の結束>
永続魔法
自分の墓地に存在するモンスターの元々の種族が
1種類のみの場合、自分フィールド上に表側表示で存在する
その種族のモンスターの攻撃力は800ポイントアップする。

「ぐっ……まだ上がるのかよ!?」
 <ジュラック・ギガノト>の咆哮が、周囲の大気を震わせる。
 とさかのように燃える炎が、ますます勢いを増す。
「<ジュラック・ギガノト>! その伏せモンスターを踏み潰せ!」
 強靭な筋肉が振るう橙色の足が、創志の場の裏守備モンスターを踏み潰す。
「破壊されたモンスターは<ジェネクス・サーチャー>! このカードが戦闘で破壊されたとき、デッキから攻撃力1500以下の<ジェネクス>と名のついたモンスターを特殊召喚出来る!」

<ジェネクス・サーチャー>
効果モンスター
星4/地属性/機械族/攻1600/守 400
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキから攻撃力1500以下の「ジェネクス」と名のついた
モンスター1体を自分フィールドに表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。

 無惨に潰されたパーツのひとつ、赤色のパトランプが、かすれたビープ音を鳴らす。
 さらに、<マシン・デベロッパー>にジャンクカウンターが乗る。合計カウンターは6にまで増えた。
 ――<一族の結束>を発動したが、モンスターは召喚しなかった。つまり、今竜美の手札にはモンスターがいないということだ。
 それなら、次に繋がるモンスターを呼べる。
「俺はデッキから<A・ジェネクス・ケミストリ>を特殊召喚!」
「……!?」
 フィールドに現れた、赤と緑のタンクを背負った小型の機械兵――<A・ジェネクス・ケミストリ>を見て、竜美が不可解そうに眉根を寄せる。

<A・ジェネクス・ケミストリ>
チューナー(効果モンスター)
星2/闇属性/機械族/攻 200/守 500
属性を1つ宣言し、このカードを手札から捨てて発動する。
自分フィールド上に表側表示で存在する
「ジェネクス」と名のついたモンスター1体の属性は宣言した属性になる。
この効果は相手ターンでも発動する事ができる。

 <A・ジェネクス・ケミストリ>は、手札から自身を捨てることで効果を発揮するモンスター。フィールドに召喚してしまっては、ただのチューナーでしかない。それが不思議なのだろう。
 正直なところ、創志も新デッキの力を十分に引き出せているわけではない。
 しかし、慣らし運転をしている暇などないのだ。今考えられる最良の戦術で戦うしかない。
「…………」
 <ジュラック・ギガノト>の攻撃が終わり、竜美の場に追撃が可能なモンスターはいない。
 <A・ジェネクス・ケミストリ>と2枚の伏せカード――創志の場のカードを順々に確認したあと、
「ターンを終了する」
 竜美がターンの終わりを宣言した。

【創志LP2900】 手札1枚
場:A・ジェネクス・ケミストリ(攻撃)、マシン・デベロッパー(カウンター6)、伏せ2枚
【竜美LP1700】 手札1枚
場:ジュラック・ギガノト(攻撃)、一族の結束、血の代償、伏せ1枚

 <A・ジェネクス・ケミストリ>と、マシン・デベロッパーに溜まった6個のジャンクカウンター。
 <ジュラック・ギガノト>を攻略する下準備は整ったが、まだピースが不足している。
 ――このドローで打開するしかない。
「俺のターン……ドロー!」
 指先に神経を集中させ、デッキからカードを引く。
 そして、かろうじて道は繋がる。
「魔法カード<リサイクル・チャージ>を発動! 手札の<A・ジェネクス・ベルフレイム>を除外することで、互いのプレイヤーはデッキからカードを3枚ドローする!」

<リサイクル・チャージ>
通常魔法(オリジナルカード)
手札の「ジェネクス」と名のついたモンスターを1体除外する。
互いのプレイヤーはカードを3枚ドローする。

 相手の手札も増やしてしまうのが難点だが、3枚のドローは大きい。
 創志、竜美、どちらも無言のままカードをドローする。
(――よし!)
 手は呼びこんだ。<ジュラック・ギガノト>の攻撃力は3700。<リミッター解除>を使ってしまった今、この壁を超えるのは至難の業だ。
 しかし、<ジュラック・ギガノト>を倒せなければ勝機はない。
 ――覚悟を決めろ。
 何のために戦場に戻ってきたのかを思い出す。
 背後で震える少女のためにも、負けるわけにはいかない。
「<マシン・デベロッパー>の効果発動! このカードを墓地に送ることで、このカードに乗っているジャンクカウンターの数以下のレベルを持つ機械族モンスターを、自分の墓地から特殊召喚出来る!」

<マシン・デベロッパー>
永続魔法
フィールド上に表側表示で存在する
機械族モンスターの攻撃力は200ポイントアップする。
フィールド上に存在する機械族モンスターが破壊される度に、
このカードにジャンクカウンターを2つ置く。
このカードを墓地へ送る事で、このカードに乗っている
ジャンクカウンターの数以下のレベルを持つ
機械族モンスター1体を自分の墓地から選択して特殊召喚する。

「せっせと溜めてきたカウンターを、ここで使うのかしら」
「――乗っているジャンクカウンターは6つ。俺はレベル6の<A・ジェネクス・トライアーム>を特殊召喚する!」
 限界を超えた力を振るったせいで自壊してしまった黒き機械兵が、創志のフィールドに戻ってくる。
「レベル6の<A・ジェネクス・トライアーム>に、レベル2の<A・ジェネクス・ケミストリ>をチューニング!」
 <A・ジェネクス・ケミストリ>の体が2つの光球に変化し、<A・ジェネクス・トライアーム>に埋め込まれていく。
「ふん。必要だったのは<A・ジェネクス・ケミストリ>の効果ではなく、レベル2のチューナーモンスターだったわけね……!」
 それを見た竜美が、不快そうに顔を歪める。創志の荒い戦術が気に食わないのだろう。
「残された結晶が、数多の力を呼び起こす! 未知なる領域へ加速せよ!」
 <A・ジェネクス・トライアーム>が緑の光輪に囲まれ、新たな姿へ生まれ変わる。

シンクロ召喚! 駆けろ! <A・ジェネクス・アクセル>!」

 銀色の閃光が、フィールドを駆け抜ける。
 数瞬遅れて、車輪が地面を滑る音が響いた。
 華麗に回転して体勢を整えたモンスター――<A・ジェネクス・アクセル>。
 白銀のボディに、紫色のバイザー。黄金色の手が空気を掴み、その姿を人々の目に焼き付ける。