にわかオタクの雑記帳

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ロストジャッジメント 裁かれざる記憶 感想 血に染まる正義、先にある真実に光を当てる覚悟

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「キムタクが如く」なんて愛称とは裏腹に、(メイン)シナリオは硬派で絶対的な正解のない社会問題を取り扱った「ジャッジアイズ 死神の遺言」
今年の初めにプレイしたばかりだったので、まさかこんなに早く続編が遊べることになるとは思っていませんでした。

 

moonyuseiniwaka.hatenablog.com


「ジャッジアイズ」は期待していたものとはやや異なったものの、面白かったのは間違いないし、続編である「ロストジャッジメント」のPVを見てテンション上がったこともあり、発売日からやや遅れましたが購入してプレイ開始。
他ゲーとの兼ね合いでがっつりプレイ時間を取れず、合間が開きながらの進行になってしまいましたが、ようやくメインストーリークリアしました。
「時間無いからサブクエは後回しにしてまずはメイン進めよう」とあらかじめ方針は決めていたものの、仮に時間たっぷりあっても、寄り道最低限にしてメインストーリー進めていたと思います。それぐらい面白かったし、引き込まれました。自分は普段ドラマとか全く見ない人間なのですが、イベントシーンだけつなぎ合わせて地上波で流しても充分通用するんじゃないかと考えたくらい、良質なシナリオと演出でした。

 


ネタバレ有の感想を書く前に、システム面についてちょっとだけ。
と言っても、まだ学生たちとの交流を描いた「ユースドラマ」を始め、ミニゲームを含めたサブ要素を全くと言っていいほど触れていないので、メインの進行上必ず通る要素だけになりますが。

 


ロストジャッジメントは前作で良かった点はそのままに、イマイチだった点をきちんと改良していて、滅茶苦茶遊びやすくなっているのが最高でした。
いくつか例を挙げると、

 

・マップが神室町一つしかない→如く7の舞台でもある横浜異人町に行けるように
・移動がダルいしタクシーはお金かかる→スケボーでそこそこ速く移動できる
・本編無関係なのに強制的に絡んでくる京浜同盟がウザい→いなくなりました
・致命傷治すのが面倒→無くなりました
・事務所に帰る度に鍵選ぶの面倒くさすぎ→無くなりました(ピッキングはある)
・八神探偵事務所狭すぎじゃない?→いわくつきになった家具撤去
・「如く」と同じヤクザの話じゃ?→出ないわけじゃないけど「要素のひとつ」くらいのポジションに


難易度を下げていたおかげもあってか、ストレスフリーでシナリオに集中できました。
お話も「ロストジャッジメント」単体でちゃんと分かるようになっているので、シリーズ未経験者には是非お勧め……したいのですが、メインである八神探偵事務所とそれを取り巻く面々に愛着を持っていたほうが物語への没入感が深くなるので、個人的にはやはりジャッジアイズを遊んでからロストジャッジメントに触れることをお勧めしたいです。


では、本題であるネタバレ有のシナリオ感想をば。

 

 

 

 

 

 

 

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猫ちゃん探し無くなったのちょっと残念

 

シナリオに関しても、前作で良かった点を継承しつつ、首をひねってしまったパートや足りなかった部分を補っているように感じました。
最初は無関係だと思われた複数の事件が徐々に繋がっていく緊迫感、盤上に広げた要素、登場したキャラクターたちを最初から最後まで綺麗に生かしていく隙のなさ、盛り上げてほしいところでちゃんと盛り上げてくれる王道を外さない「点」の置き方。繰り返しになりますが、濃密なドラマ作品を見ているようで、序盤からずっと引き込まれていて、その熱を最後まで絶やすことなく、むしろさらに熱くさせてくれました。人によって好みは分かれるでしょうが、自分としては前作よりも面白かったです。

 

 

その最大の要因は、桑名や相馬といった「主人公である八神と対立するキャラクター」でしょうか。


前作ジャッジアイズの黒幕だった生野と黒岩。「人類を救うためなら多少の犠牲は厭わない」と歪んだ正義を抱えた研究者だった生野はともかく、モグラの正体である黒岩は消去法で正体がわかってしまったり、動機がいまいち不明瞭だったりと、クライマックスで対峙しても演出パワーで無理矢理盛り上げられている感が多少あったんですね。

 

「世界的な難病であるアルツハイマー認知症を根治する薬を開発するために、ヤクザを犠牲にするのは是か非か」と人の倫理観を問う社会問題を取り上げたジャッジアイズ。
それに続き、本作ロストジャッジメントでは「悪いことだと認識されているのに無くならないイジメ問題」に焦点を当てます。

 

 

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異人町で便利屋を営む男、桑名仁


プレイ前にさらっとネタバレ無し感想を読んだとき、「桑名のキャラが良かった」という意見が多かったのですが、その割に登場以降は影が薄く、中盤までは頼れるシーンもなく首をかしげていたのですが……
彼の正体が「教え子たちのいじめを軽く流してしまった結果、自殺(結果未遂)者を出した元高校教師」だと判明してからは評価が一変。
「イジメをすれば報いを受ける」を世間に知らしめるため、罪を逃れたかつてのイジメ加害者たちを殺して回る、現代の必殺仕事人。自らの手を血で汚しても、自ら信じる「正義」を貫くダークヒーロー。
復讐の代行者と化した彼の正義を、法では裁けない悪を断罪する彼の行為を、「それは間違っている」と否定するのは簡単です。
しかし、「復讐は何も生み出さない」――そんな綺麗事が、凄惨なイジメを受けた被害者たちに、イジメにより愛する子供を失った家族に、果たして通用するのか? 悲しみや絶望に暮れる彼らに、加害者たちの「形だけの謝罪」は何の意味があるのか?


――被害者たちの憎しみを晴らしつつ、恐怖と苦痛を与えた末に殺し、見せしめとすることで将来起こりうるイジメの芽を摘み取るほうが、よほど建設的ではないか?


例え人の道を外れようと、為すべきことを為す。固い信念のもと動く桑名は、認めてはいけないのにカッコよかったですね……

 

ただ、彼にとって最大の誤算は、澤陽子の死。
完全に無関係……とは言えないまでも、巻き込んではならないはずの彼女を犠牲にしてしまったことで、桑名の「外道になろうとやり遂げる」信念に、小さなほころびが生まれたのではないでしょうか。
けれど、彼はもう止まれない。止まるわけにはいかない。だから自分の行く末の一部を、八神に託した。
八神に止められたときは、受け入れるしかないと。
事件解決後、逮捕されずに再び闇に潜った桑名は、少なくとも今までと同じ形でイジメ加害者の粛清は行わないでしょう。
その道は、とある探偵に「間違っている」と止められたから。

 

ジャッジアイズのときに足りなかった「魅力的なライバルキャラ」。桑名は、足りなかったピースを最高の形で埋めてくれました。

 


澤先生の名前が出たので、中盤以降の八神君が澤先生に固執しすぎ問題に触れておきますと。(ちなみに澤先生が殺されるのはストーリーPVで何となく読めていました)
桑名にも「またそれか」とツッコまれていますが、まさに八神にとっては「それ」しかなかったんでしょう。
事件解決の鍵を握る桑名や楠本事務次官を表舞台に引っ張り出すには、彼らにとっても想定外であり、答えに窮する澤先生の話題で責め、同情に訴えるしかないでしょうし、感情的にも八神は澤先生に拘らないと前に進めなかったのでしょう。
そこを譲ったら、桑名の語る正義を肯定してしまう自分がいたんじゃないでしょうか。
(ゲームシステム上仕方ないとはいえ)八神君も悪事を働いた連中を暴力でのして分からせていますし、事実イジメっ子たちを暴力で制裁していたりもします。つまり、暴力による恐怖や苦痛には一定の効果があると理解しているわけです。まあ八神たちが「ちょっとキツめのお灸」で済んでいるのに対し、桑名の「制裁」はやり過ぎだと反論はできますが。
「犠牲の上に成り立つ正義を認めることはできない」――前作の経験を踏まえた上で、それが八神の原動力を支える唯一の柱だった。
だから、事あるごとに澤先生の名前を出して、自分にも言い聞かせていたんじゃないでしょうか。
例え桑名の心情を理解できようとも、例え楠本親子の感動の再会を引き裂くことになろうとも、「ここだけ」は絶対に譲ってはならない、と。

 

 

 

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もう一人の「敵役」である相馬は、桑名と違い明確な悪でした。
が、彼にも彼なりの正義があったというか、「自分は人とは違う特別な存在」という自覚に酔いしれていたんだと思います。
乱暴な言葉で言えば、「厨二病を卒業できなかったか悪化させて狂ってしまった男」。
自分の感情に素直で、立ち位置に満足している相馬の立ち振る舞いは、派手な活躍こそないものの黒幕の一人に相応しかった。「倒すべき敵」を全うしていました。まあ演じた玉木さんの魅力も大いにあると思いますが……

 

 

 

 

 

 

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前作よりは影が薄めになってしまった感のある、海藤さんを始めとしたメインメンバーですが、
サブキャラだった九十九がメンバー入りしてさらに賑やかになりましたし、
不愛想に見えて相変わらず「非日常体験」にノリノリなさおりさん、
出番が少ない分オイシイ登場シーンをもらい、ツンデレは変わらずも態度が軟化しつつある東君、
源田先生と星野君のキャバクラ突入には笑わせてもらいましたし(星野君いじられ過ぎでしたが)、
ラストの武闘派4人による突入の流れは、前作よりも納得感があって最高に燃えました。


まっつん達イジメっ子の成長や、鷹野検事が単なる無能で終わらない等、本当に回収の仕方が上手いと舌を巻きましたわ。
昏睡状態だった楠本充が目覚めるタイミングが誰にとっても予期せぬ出来事で、味方側・敵側に都合が良すぎない絶妙なバランスでストーリーが進行していくのは、最後まで没入感を失わなかった要因のひとつだと思います。
如く7との繋がりを匂わせる部分がいくつかあったり、終盤のチャプタータイトルに前作のキーである「モグラ」を持ってくる等、シナリオ面だけでもファンサービス欠かさないのもうれしかったですね。

 

 

メインストーリーを終えただけで、プレイした価値があったと思える満足感。いいゲームでした。
サブシナリオ全部回収……まではやらずとも、せめてユースドラマくらいは触れてみたいですね。