月姫R シエルルート感想 シエル……ルート……？【※ネタバレ有】
少し間が開いてしまいましたが、月姫リメイクシエルルートクリア！
そのままの勢いでバッドエンドも全回収し、ひとまずは完走しました。
あとは細かいチャート埋めですが、まあこの辺は後編発売前のおさらい代わりに……
エロゲ……もといフルプライスのADVをプレイしたのは久々でしたが、納得のボリュームと全体的な質の高さで、満足度は上々。
発売日購入即プレイではなかったため軽度なネタバレを踏んでしまったのですが、それでも面白さが損なわれませんでしたし、いい意味で期待を裏切る展開がいくつも用意されていました。
プレイ時間確保の面で購入を躊躇った本作ですが、そのままスルーしてしまわなくて良かった……
シエルルートの感想に入る前に、前述した「ADVとしての質の高さ」について少し掘り下げようかと。アルクルートの感想記事ではさらっと流してしまったので……
moonyuseiniwaka.hatenablog.com
一般的なADVというと、キャラクターの立ち絵が並ぶ会話シーンと、重要な場面で表示される一枚絵で構成され、基本的にはその繰り返しでストーリーが進行していきます。最近ではシナリオがあるソシャゲでもよく用いられる形式ですね。
月姫Rも大枠で言えば同じ形式なのですが、中身の充実度が段違いでした。
画面全体に文章が表示される旧月姫の頃から変わらないレイアウトは、「何よりも奈須きのこの文章ありき」を如実に表していると思いますし、それを「彩る」ことに重点を置いた演出が施されているなぁ、と感じました。
立ち絵が点滅するだけの単調な画面作りにならないよう、一枚絵とそうではない部分の差が感じられないほど絵作りは凝っていましたし、戦闘シーンもスリルや迫力が倍増しになるような臨場感でした。
最近のADVをプレイしていなかった自分としては、動きに動くので面喰いましたが、「動くならアニメでいいじゃん」とはならないバランスに仕上がっていて、ADVとしての質の高さを強く感じました。
アニメはアニメでもちろん面白いし、動画でしか味わえない爽快感や臨場感もあるとは思うのですが、「没入感」という点で見ると、やはり文章を音や絵で演出するADVのほうが一枚上手な気がします。
月姫Rは、奈須きのこがADVとして出力した文章を、最大限引き立たせる作りになっている印象を受けました。
だからこそ、もともと濃い原液が、濃度を保ったまま膨らんでゲームの形を成しているのかな、と。
……では、本題のシエルルートの感想をば。
記事タイトルにもありますが、一応再警告でネタバレ注意です。
漫画版で「予習」できていたアルクルートと違い、シエルルートは全くの予備知識無し。
旧作からは大分リメイクされてほぼ新作のような出来だったらしいですが、その辺の違いが分からなかったのは残念で仕方がないです。いつか旧月姫もプレイしてえなぁ……
シエルルートをプレイした感想として、まず真っ先に言いたいこと。
アルクェイドのヒロイン力が強すぎる……………………
いや、（個人の趣味嗜好もありますが）本人のルートより可愛いってどういうことやねん！！
シナリオ後半、特にトゥルールートのほうは話が進むにつれて「シエル……ルート……？」と困惑しちゃったぞ！
いや、シエル先輩のヒロイン力も十分高いんですよ。
カレー大好きでちょっと天然気味のお茶目な先輩と、真面目クールな仕事人の二面性。
ロアによって凄惨に塗り替えられた過去と、終わりのない贖罪――ゆえに自分の感情を殺し、愛しい人を手にかけることさえい問わない覚悟の重さ。そして、それが決壊したときに見せる脆さ。守る必要がないほど強いのに、守ってあげたくなる、傍にいてあげたくなる。
漫画やアルクルートだと「動かしやすい便利キャラ」の印象が強かったですが、彼女自身のルートではまごうことなき「ヒロイン」でした。
個人的にもシエル先輩のようにあれこれ武器を駆使して戦うスタイルは好きですし、アルクルートでは美少女吸血鬼に終始振り回されっぱなしだった志貴が、先輩相手だとやたらとアグレッシブになったり、感情をストレートに表現したりと、「元気になりすぎでは？」と思うくらい印象違いましたし、プレイしていて楽しかったです。
ヴローヴ戦の熱さはアルクルートと甲乙つけがたく、以降は志貴とアルクに訪れる「変化」にハラハラしっぱなしでした。興味本位で痛くて効かない注射打ったら、バッドエンド連れていかれて軽くトラウマになりましたしね……
選択肢をミスったからロアに体を乗っ取られたのかと思いきや、正規ルートでも乗っ取られかけて志貴がおかしくなるのは変わらないんだもんなぁ……「またバッドエンドなんじゃないか？」という不安が最後まで拭えませんでした。
アルクもアルクで、表面上はそこまで変わらないのに、何か決定的なボタンの掛け違いをしている感が、いつ爆発するのかと……
ただ、ただね。
「志貴のことが好き」という気付きを経て、自身の欲望に忠実になったアルクェイドは、まあ簡潔に表現するならヤンデレ気味なんですが、これがまた滅茶苦茶かわいいんすよね…………
ヤンデレ暴走といってもそこまで頭がおかしくなっているわけではなく、志貴がアルクへ好意的な反応を返せば、それに素直に喜んだり、逆に自分が相手にされなかったら拗ねたりと、彼女らしい「純真さ」を保ったままの暴走だから、まぁーーーーーつらい。おそらく今後発表されるであろう真アルクルートがあるなら、ここからの派生でもいいくらい。
シエル先輩が弱いわけじゃないのに、アルクェイドが強すぎるせいで、ラスボスなのにヒロインよりもヒロインしてる奇妙な感覚を味わうことになってしまいました。トゥルールートのラストは、志貴とロアの凸凹コンビがわがままアルクを鎮める話で、シエル先輩すげえ影薄いしな……
シエルルートはノーマルとトゥルーの2つのルートがあり、後者のほうがまあ救われる人が多くてハッピーエンドなんですが、志貴を助けるためにシエル先輩が犠牲になるビターエンドなノーマルも、結構好きなんですよね。そういうテイストが流行った頃のエロゲを多くプレイしてきたので。
拙者、妄想が広がる後日談やエピローグが大好き侍。そして、一般人だった主人公が、ヒロインが生きていた世界や職場、環境に踏み込むラストも大好き侍。
マーリオゥの部下として働きながら、先輩からもらった命を再度返還する方法を探す志貴のエピソードは、あれやこれや妄想が広がって大好物です。
マーリオゥの名前を出しましたが、彼を始めとした聖堂協会の関係者は、ここで掘り下げがされるかと思いきや、あまり触れられずに終わってしまいましたね……
明らかに遠野家ルートで関わってきそうな斎木業人や、ほとんど実態が明かされない、というか大半のユーザーが名前すら知らずにエンディングを迎えることになる謎の少女、みおは、まあ後編への目配せなんだろうなと予想できたのですが、聖堂協会所属のシエルのルートで、ちゃんと描かれたのがノエル先生だけとは……
前も書きましたが、マーリオゥの「非常に優秀だが口の悪さだけが難点」な描かれ方はかなりツボに入ったので、彼の真意を早く知りたいところです。
が、後編だとあまり出張りそうにないし、実装が期待されているさっちんルートか、アルクトゥルーまでお預けなのかなぁ。
あとは、こちらも後編の重要キャラかと思っていた阿良句博士が、意外にもノエルの死徒化にかかわる不穏なムーブを見せたので、彼女の正体も気になるところです。二十七祖の1人という予想は当たってそうですがはてさて。
意外といえば、本作の黒幕であるロアも、意外な方向で掘り下げされましたね。
有彦という親友はいるものの、異形が跋扈する裏社会のこととなると基本1人で頑張るしかなかった志貴に、ロアが相棒ポジションに収まるなんて誰も予想できないでしょう？ 暴走したアルクを見て「1000年の恋も冷めた」と言った辺り、いくら求めようとも決して手が届かない天上のものだと思っていた彼女が、俗にまみれてしまったのを見て、転生を諦めるくらいショック受けたんですかね……なんにせよ、「利害関係の一致で仕方なく手を組む」系のコンビのやり取りは、ある意味王道と言える面白さでした。最終盤限定だったのがもったいないくらい。
アルクルートでは典型的なイキリキャラに過ぎなかったロアが、ノーマルルートでは人間を内側から作り変える恐ろしさを、トゥルールートでは優秀なカーナビキャラをと、新たな側面を見せてくれて、俄然魅力が上がったと思います。
アルクルートを終えた段階では不足気味だった「新鮮味」に溢れていて、かつそれだけではなく様々な側面での面白さを見せてくれたシエルルート。
繰り返しになりますが、プレイしてよかったと思える満足度の高い作品でした。
……が！ やっぱ俺にとっての月姫は、ここからが本番なんですよ！
キャラクターとしては、アルクやシエルといった「外」の人たちよりも、秋葉、琥珀さん、翡翠の「中」の人たちのほうが好きですし、志貴が無理をして外に出向くたびに、心を痛める遠野家の面々の姿が痛々しくてもう……
早く、早く幸せにしてあげたいんですよ！ 隠された謎も多すぎて気になりますし！！
それで、後編の発売はいつなんです！？
4年後！？ ウソでしょ！？！？！？！？！？
