にわかオタクの雑記帳

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バック・アロウ 感想 超絶スロースターターなバッキャロウたちに熱狂する

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ロボアニメの不作が嘆かれてもう何年目になるでしょうか。
ある監督が言った「そもそもロボアニメの需要がない」が示すとおり、新作アニメのポスターやイメージビジュアルの中に映るロボットは減少し、そんな中で作られた作品も、シンカリオンのような一部例外を除き、胸を張って「ヒットした」「面白かった」と言える物はほとんどありませんでした。
今現在だとガンダムの新作である閃光のハサウェイや、エヴァの完結編シン・ヱヴァンゲリヲンが大ヒットを記録していますが(ちなみに自分はどっちもまだ未見)、これらはすでに実績を残し基盤が出来ている、既存ファンが存在しているシリーズ作品での新作で、これはこれでうれしいのですが……

 

願うのは、完全オリジナルロボアニメでの傑作。

 

自分の中でこの枠はクロスアンジュで止まっていて、調べたらもう6年以上も前の作品。
つい先日最終回を迎えたダイナゼノンもロボアニメにカテゴライズしていい気がしますが、一応ジャンルは特撮。
コードギアスのようなエンタメ性に富んだものでもいいし、グレンラガンのような熱血ノリで押し切るものでもいい。新規タイトルで、胸を熱くさせてくれるロボアニメが生まれないだろうか……

 

とまあ後付けの期待をくっつけましたが、ギアスを手掛けた谷口監督と、グレンラガンの脚本を担当した中島かずき氏がタッグを組んで始まった「バック・アロウ」
放送開始に合わせて玩具のリリースが打ち出される等、気合いの入ったプロモーション展開。
新規タイトルにもかかわらず、今時期には珍しい分割ではない通しの2クール構成。
間違いなくギアスやラガン級のヒットを期待されてのスタートだろうと、素人目で見ても分かりました。
そうなると、こちらも「これはきっと面白くなるんだろうな!」とハードルを上げざるを得ません。

 


で、実際はどうだったのかというと。
ここからは最終回までのネタバレ込みで感想を書いていきますので、これから視聴予定の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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偽りなき本音をぶっちゃけると、序盤どころか1クール終わりどころか2クール始まってもあんまり面白くなかったんですよ。
自分が熱中できなかった理由を簡潔に言うと、「絶妙な古臭さ」
キャラクターデザイン然り、ロボデザイン然り、シナリオ然り、平成の時代に乱造された微妙なロボアニメの雰囲気がかなり濃く感じました。一線級の声優を揃える気合いの入れっぷりが空回りしているような肩すかし感。
本作は壁に囲まれた世界「リンガリンド」が舞台になりますが、現代に生きるオタクならどうしても進撃の巨人を連想せざるを得ません。となれば、話のオチは……と無駄な思考が膨らみます。
中華風にデザインされた「レッカ凱帝国」、西洋風の「リュート卿和国」、そして西部劇風の「エッジャ村」と、国々によって明確に特色が色分けされていますが、どうも魅力に欠ける。
期待していたロボによる戦闘シーンも、個人の「信念」を核として能力に反映させる「ブライハイト」は、知略を巡らせる能力バトルにも言ったもん勝ちの熱血バトルにも振り切れず、見ていて心が滾ってこない。


ならばストーリーはと言うと、主人公であるバック・アロウの登場によって故郷を追われ、隠されていた巨大戦艦「グランエッジャ」で安住の地を見つけるために出発したエッジャ村の面々(アロウの目的は壁の外に戻ることでしたが)。
ガン・ソードのように各地を旅して交流を深めつつ次第に本流に入っていくのかと思えばそうではなく、一応アロウの望み通り壁には向かったものの、その後は状況に流されるばかりで主体性が無い。一時期は主人公組がいなくても話が回るのではないかと思うくらいの影の薄さ。せっかくのダブルヒロインなのに、恋愛要素がプッシュされないので魅力が増すこともない(この辺ギアスは上手くやっていたよなぁ)。壁の外からやってきたと豪語するバック・アロウの過去を掘り下げて謎を解き明かす展開も特になく、記憶喪失のアロウがエッジャ村の人たちと親交を深めるハートフルな展開もなく、ストーリーの本筋はレッカとリュートの全面戦争にシフトしていきます。これもまた「壁の中の小競り合い」と斜めに見てしまうと、途端にショボく思えてしまうんですよね……

 

数多のフィクションが生み出され消えていく昨今では、純度の高いオリジナリティを出すのは難しい、どうしても手垢の付いた要素を盛り込まざるを得ない……それは重々承知していますが、それにしたってきらりと光る何かが欲しい。
鳴り物入りで始まったバック・アロウからは、その光がしばらく見つけられませんでした。

 

 

 

 

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ならどうして視聴を続けられたのかと問われれば、シュウ・ビというキャラクターのおかげと答えます。
レッカ凱帝国出身で、将軍カイの幼馴染。己の武力を磨いて将軍にまで上り詰めたカイは真逆で、己の頭脳、知略を持って大長官の地位に就いた、いわゆる軍師ポジションのキャラクターです。
以前、鉄血のオルフェンズの感想でも書いたことなんですが、ロボアニメにおける軍師キャラ、ロボットに乗って前線で戦うパイロットとは違い、後方で指示を出す「だけ」に見えてしまうポジションを有能に描くのは、塩梅がとても難しい。
作戦が陳腐なら敵が馬鹿なだけになってしまうし、味方にとって都合が良すぎれば興ざめしてしまう。
シナリオ上での説得力を持たせつつ、それが視聴者にも伝わるようにしなければならない。そのバランスが、シュウは絶妙だったと思います。


いきなり故郷と親友を裏切り、エッジャ村の面々から疑いの眼差しを向けられようと、レッカに留まるだけでは得られなかった知識を得て、知勇によって「最強」を得るために動き(暗躍し)続ける。
飄々としていていかなる場面でも余裕な態度を崩さない、時には非情に見える作戦を選択する冷徹さもあるキャラクター性と、声優を務めた杉田氏の声質・演技が絶妙にマッチしていて、振り返ってみると「シュウありき」でストーリーが作られているのに、その贔屓っぷりが嫌らしくなく、むしろ「シュウなら何とかするだろ」の期待に繋がる描き方は、面白さを見いだせなかった序盤では視聴意欲を繋ぎ止めてくれましたし、勢いが爆発した後半でも他キャラに見劣りすることなく、最後まで輝いていました。カイやレンとの信頼関係が相手からの憎悪に裏返り、しかしお互い認め合っている人間模様は、物語を動かす大きな原動力になっていましたしね。

 

 

 

 

 

 

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シュウの活躍を見るためだけに視聴を続け、前述のレッカとリュートの戦争が本格的に始まったのが2クール目に入ってから。この辺りでは、「内乱だけで終わって壁の外とか世界の秘密は触れずに終わるんだろうなぁ」と思ってました。
ただ、ゼツ凱帝の規格外っぷりが明らかになって、久しぶりに真っ当な最強ジジイキャラ出たぞと、ちょっとテンション上がってきてたんです。もうレッカvsリュートを主軸にして、ゼツ凱帝とフィーネが暴れ回ってくれたら満足かな、と。


そんな俺の予想を裏切るように、ここから「バック・アロウ」がエンジンを吹かし始めます。


グランエッジャの活躍により戦争が終わり、リュートの動乱も一応の決着を見て、世界が新たな一歩を踏み出そうとしていたとき。
リュートの選帝卿であり、全てを影で操っていたルドルフが本腰を入れて動き始めてからは、もう怒濤の展開。毎話毎話がクライマックス級の熱さで、これまでのスロースターターっぷりは何だったのか、どうしてもっとバランス良く盛り上げ所を配分出来ないのか、いや、「だからこそ」の嵐なのかと、毎週釘付けにされました。

 


この熱さを生んだのが、ようやく名実ともに主役になったアロウ……ではなく、ゼツ凱帝を始めとしたレッカの面々なのもまたすげえなあと。
リンガリンドが神による殲滅対象に選ばれたのもゼツが強すぎたせいだし、圧倒的な力を見せるルドルフに対して唯一対抗できたのもゼツだし、殲滅者になってしまったアロウを力業でねじ伏せ希望を見せたのもゼツだし、ストーリーにおけるゼツの重要度がグランエッジャチームよりも遙かに高いという……唐突に若返って主人公(剣)を振り回し大暴れするジジイキャラなんていないでしょ……この方向に舵を切れる思い切りの良さが、爆発的な推進力を生んだのだと思います。
最高に場が温まったところで、ただ喚いているだけだったお飾り大元帥であるビットと、彼をいいようにあしらうシュウが仕掛けた策がお披露目。ここの関係だけは序盤から積み上げていたものがあるだけに、理想的な形の盛り上がりでした。
1クール目を見ていた頃は、まさかここまで熱い展開が待っているなんて、想像もしていませんでしたよ……


シナリオとしては主人公をしていたものの、「主役」にはなれなかったアロウの扱いの悪さには同情を禁じ得なかったですが。

 

 

 

 

 

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最終盤はやや盛り下がりそうになったところを押し切った感がありましたが、スルーされると思っていた世界の成り立ちに関しての謎もほぼ解明され、無駄に引っ張らない綺麗な幕引きでした。
いやあ、手放しでは絶賛出来ないというか、「序盤中盤の要素や伏線を回収したが故の面白さ」ではなく、レッカ凱帝国の強烈さが突き抜けてもうこいつらが主役でいいよと圧倒される奇異な面白さで、期待していたものとは違ったものの、終盤の熱狂だけでお釣りが来るくらい楽しませてもらったアニメでした、バック・アロウ。

 


冒頭で挙げたギアスやグレンラガンのようにここから裾野を広げていくのは正直厳しいとは思いますが、とりあえずスパロボ参戦にはこれ以上ないほど向いているので、是非出てもらってゼツ凱帝の最強っぷりをゲームでも体感させてほしいですね。