にわかオタクの雑記帳

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「遅効性SF」謳い文句は伊達じゃない ワールドトリガー195話感想

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アニメ二期放送を控えた、大人気漫画ワールドトリガー

 


もはや説明不要だと思うのであらすじやら説明やらは省略するとして。
この作品の面白さをひとつ挙げるなら、「集団戦の巧さ」
数を読んでいるわけではないので一概には言えないのですが、バトル漫画には珍しい、多人数の挙動や思考が入り乱れての乱戦がメインの漫画です。
「体のいいバカがいない」と表現すればいいのか、都合の良いやられ役が(ほぼ)存在せず、それぞれのキャラクターが自分なりに考えた結果、行動しているのが伝わってくるので、ストーリーの構成も含めて、巧いなぁと思ってしまうワケです。

 


その醍醐味がいかんなく発揮されるようになった、B級ランク戦。
遠征選抜入りをかけたラストバトルも、いよいよクライマックス。
最新話を読み終え、感動と興奮が収まらず、何度も読み直してしまうので、心を落ち着ける意味でも感想を書き残したいと思います。


以下、今月号までのネタバレ注意です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


かつて、玉狛第二が文字通り「完敗」した二宮隊。
遠征選抜入りが決まる最終ROUNDでぶつかることになり、点をもぎ取るには超えなければいけない壁。
強力すぎる新戦力、ヒュースを軸に、打倒二宮さんの戦略を練ってきたものの、初期転送位置の不運により、二宮隊とぶつかる前にヒュースは脱落。
この展開に、師匠である京介は「修がヒュースの代わりをすることになる」と言う。
とはいえ、修の力不足は明白。

 

なので、俺は1VS1では引けを取らない弓場サンを二宮さんにぶつけて、その隙を突くのかな、なんて予想していて、その通りに二人のタイマンが実現したのですが、そこに玉狛が絡むことは無く。
二宮さんが追尾弾での一人時間差という曲芸で、弓場サンを撃破。
ヒュースを欠いた初期玉狛第二と、(犬飼君が負傷してるものの)フルメンバーの二宮隊の激突という展開に。
完敗した初対戦の時から何が変わったのか、成長したのか否か、覚悟があるのか否かを計る最高のマッチアップ。

 


少し話は戻りますが、この最終ROUNDでの見所は、

 

・二宮隊に見抜かれたヒュースの「隠し玉」、通常弾と見せかけた変化弾をいつ撃つか。
・千佳は追い込まれれば本当に人を撃てるのか。

 

この二点だと思っていました。
前者のヒュースの「隠し玉」はすでに消化したので、残る焦点は千佳。
修や遊真を守るために、人を撃つ覚悟が決められるのか。
そこが二宮隊との決着を付けるための最大の要因になると予想していましたし、作中でも「雨宮のトリオン以外に二宮隊が崩れることはない」と言及されました。

 

 

その言葉に、遊真は「リクエストに添えなくて悪いけど、あんたを倒すのはオサムだよ」と返し。
最大の壁だった二宮を(実質)撃破したのは、この戦場で間違いなく最弱の修だった。

 

 

主人公が決着を付ける、期待通りの幕引き。
ただ、ここに至るまでの流れが本当に本当に本当に本当に本当に――
何度「本当に」を重ねても足りないくらい素晴らしくて、涙が出ました。

 


バトル漫画における逆転の手法のひとつとして、「未知の力の覚醒」があります。
読者には明かされていない設定が引き金となり、強力な力が目覚める……
これはこれで燃えますし、王道だとは思うのですが、乱発し過ぎたり、過程がおそろかだったりすると、
後付け感が強くなり、逆に冷めてしまいかねません。

 

今回の対二宮さんの決着のさせ方で、俺が一番素晴らしいと感じたのは、
読者に提示されている情報の中から、弱者である修にしかできない手札で勝利を掴んだこと。
それは、「通常弾と見せかけての追尾弾」
種を明かしてしまえば単純ですが、ほとんどの読者が予想できなかったであろう奇策。
それでいて、読み返せばいくつも布石が打たれているという周到っぷり。
まさに脱帽。伏線回収っていうのはこういうものを言うんだなと、再認識させられました。

 

この話のキモと思われたヒュースの「隠し玉」。
それを、対戦前に「通常弾にしては威力が低いから、変化弾や追尾弾なんじゃないか」と見破った二宮隊。
これらが全て修のラストショットへの布石だとは、読んでる最中は思えないでしょう。
もし修のトリオンが人並みだったら、牽制のために撃った弾で、威力の低さに違和感を持たれてしまう。


「持たざる者」だったから。


修のトリオンはカツカツで、新武器を持つ余裕はないと、最終戦が始まる前に何度か言及され。
以前の戦いでは、身の丈に合わない新しい戦い方をしようとして、真っ先に脱落し。
「スパイダー」による援護を習得してから、そのスタイルは変えないだろうと思い込ませてからの追尾弾。
追尾弾といえば、先月号で二宮さんの一人時間差を説明する流れで解説された、弾丸の特性。
あれも「追尾性能を切って通常弾と誤認させる」戦法に、説得力を与えているわけです。
読み返す度に、新たな発見がある。まさに「遅効性SF」。相応しいキャッチコピーだと思います。

 

 

 

 

 

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もうひとつ良かったのが、超えるべき壁である二宮さんの「強さの格」が全く落ちなかったこと。


無傷だった遊真をあっという間に重傷に追い込む両攻撃や、狙撃手の射程で放つ炸裂弾といった能力面での脅威。
それに加えて、修との駆け引き勝負の中で見える内面での強さ。
遊真とのやり取りで「つまんないウソつくね」が出たことから、二宮さんが修を軽んじておらず、脅威と認識していたことは確定。


決着までの流れも、千佳狙いを思わせて修狙い→両攻撃をして隙を晒せば修は間違いなく狙ってくる→辻ちゃんを向かわせる→修の撃破に失敗したら、撃ってくるはずだと警戒→予測通り撃ってきたので回避と、戦術の読み合いでは勝っているわけです。


修がレイガストを投擲したのを見て、彼のトリガー構成が変わっていないのも把握済み。
もし二宮さんの予測通りに事が進んでいれば、修の攻撃を回避したあと、両攻撃で遊真を撃破し、間髪入れずに位置の割れた修を炸裂弾や通常弾で追い込んでいたのでしょう。
修の戦闘能力をしっかり認識していたからこそ、追尾弾を読めなかった。
単純に裏をかかれたやられたーではなく、お互いの手札を読み合った上での攻防。
戦術を知っていたメンバー以外全員が、出水でさえも驚きに目を見開いた一手。


決着に至るまでの過程が、それを描く演出が(回避されたあとすぐに種明かしせず一呼吸置くの最高かよ)巧みすぎて、カタルシスが何十倍、何百倍にもふくれあがったワケです。
わずか2話で二宮隊との戦いが終わったのですが、読み返しも含めると密度が濃すぎるってマジで……

 

 

 

 

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もちろん、今回の見所はここだけじゃなくて、ついに人を撃った千佳も「ここしかないってところに持ってくる」最高の展開でした。コマ割りがまたいいんだこれが……
修の作戦ではなく、千佳が自分の意志で撃ったが正解であってほしい。


とにかくもう「最高かよ」の言葉しか出てこない、最高かよが鳴り止まない最高の回でした。
次回でやるであろう感想戦を読んだら、きっとまた読み返したくなる。
そのループが完結まで続いていくことを期待しつつ、まずは来月を待たせていただきたいと思います。