にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

ゼノブレイド3を遊んで「老い」を実感する

「老い」は、大なり小なり人に変化をもたらす。

 


肉と言えばカルビ、寿司と言えば大トロ、ハンバーガーにはコーラ!
若い頃は大好きだった食べ物を、年齢を重ねるごとに重く感じるようになる。
学生を終え、就職して社会人になったり、結婚して家庭を持ったり、または自分のように年齢にふさわしい振る舞いが出来ず焦りを覚えたり……
そうした環境の変化は、物事に対する向き合い方や、感性を変化させる。

 

 

 

 

もし、10年前の自分がこのゲームをプレイしていたら、どんな感想を抱いただろうか。
そんな「老い」を実感させてくれたゲームが、ゼノブレイド3でした。

 

 

以前から触れたいとは思っていたものの、なかなか手が出せなかった「ゼノブレイド」シリーズ。時間が出来たこともあり、意を決して最新作の3を購入。
1から順々にプレイした方が楽しめることは分かっていたのですが、さすがに全作ぶっ通しでプレイする気力はなかったことと、一応3から遊んでも概ね問題はないことを調べたので、一番興味を惹かれた3から手を出しちゃいました。
何故かというと、作品中で複数カップルが成立する作品好きなんですよ。ちょっと古いですがWORKING!!とか。
なので、「どう考えても3組の男女が最終的にイチャコラするんだろ!」と予想できる3をプレイしてみたかったんです。まあその甘い幻想は作中のあまりに過酷な世界に一瞬で砕かれるんですが。

 

ひとまずメインストーリーは最後までクリアしたので、良かった点悪かった点書いていきたいと思います。
ちなみに、ゼノブレイドシリーズは1、2、クロスどれも未プレイですが、ギアスとサーガは遥か昔にプレイしてます。

 

まず、ネタバレ(ほぼ)無しのシステム面から。


乱暴な書き方ですが、switchって同世代の他ハードと比べるとスペックで劣るというか、グラフィックの美麗さよりも、ゲームとしての面白さで勝負している印象があったんです。
それをゼノブレイド3は一気にひっくり返してくれた。
美麗かつ広大で、作りこまれたフィールドに圧倒され、そこに息づくモンスターたちの数や細かい挙動に圧倒される。
さすがにオープンワールドではないものの、そのままMMOに流用できそうなビジュアルは、素晴らしいの一言に尽きます。
若干処理がカクつくマップはあるものの、ゲームの進行を妨げるような重さはほぼ無し。
失礼ながら「switchでここまで出来るんだ……」と口を開けずにはいられませんでした。


MMOといえば、バトルシステムも「それっぽい」ですよね。
メインメンバー6人+ヒーロー1人の最大7人のパーティと、大小様々な敵が入り乱れるバトルは、各キャラクターの役割(ロール)、攻撃を行う時の位置取り、敵を行動不能にしてから繋げるコンボシステムに、シナリオ上でも大きな意味合いを持つ「インタリンク」、パーティ全員で総攻撃を仕掛ける「チェインアタック」等、とにかくやれることが多く、あれこれ試行錯誤するのが好きな人にはたまらない仕様になっています。
この辺の「最適解は自分で見つけよう」を提示するシステムは、キャラクタービルドに重きを置いた旧世代のMMOを彷彿とさせます。

 

 

が。


上記のゼノブレイド3の特色とも言える要素が、「老いた自分」には重い、はっきり言ってしまえば煩わしく感じてしまったんです。

 


確かにフィールドは綺麗で広いですが、探索して得られるゲーム内のメリットは(メインストーリークリア上は)無いと言っても過言ではなく、目的地にたどり着くまでの時間が苦痛に感じてくるように。
それに拍車をかけているのが、「バトルの長さ」です。やれることを多くしたせいか、ボスどころか雑魚敵も異様に固く、倒すまでに時間がかかる。
フィールド内の至る所にモンスターが配置されているため、少し歩いただけですぐ戦闘が発生。面倒なので逃げようとすると他のモンスターが引っかかってしまい、いわゆるトレイン状態になってしまうこともしばしば。こっちはそこに落ちてるアイテム拾いたいだけなんですけど……
通常フィールドのモンスターはある程度レベル差が開けば無視できるようになりますが、ラストダンジョンの雑魚敵は全部向かってくる。そしてラスダンだけにボス並みに固い。
もう敵に発見されたときのバシーンってSE聞くたびに、イライラを通り越して放心してました。雑魚にいちいちチェインアタックなんてやりたくないよ……
始めた頃は難易度ノーマルで頑張ろうとしてましたが、この仕様に気付いてからすぐイージーに下げましたね。こんな部分でプレイ時間水増しされたくないんじゃ。

 

また、フィールドに落ちているアイテムの収集を頼まれるクエストも、必要個数がやたら多く、落ちている場所はランダムかつ一度フィールドを切り替えないと再配置されない仕様なので、これまたストレスが溜まる。しかも倒した雑魚敵も同時に再配置されてしまうため、さらにやる気を削がれる。
中には推奨レベルよりも遥かに高レベルの雑魚敵が闊歩するフィールドに赴かなければ条件を達成できないようなものもあり、これを「理不尽や不親切」と感じるか「スリルがあって面白い」と感じるかで、評価が真逆になる気がします。

 


総じて、ゼノブレイド3のシステムは、良い点も悪い点も旧世代MMOを煮詰めたような作りだったというのが、正直な感想です。
中盤以降はバトルに楽しさを見出せなくなってしまったのが残念なところ。チェインアタックはBGMが最高にテンション上がる良曲で、ボス戦に限れば爽快で良かっただけに、FF14を連想させるような方向指定とか全部取っ払って、もっと大味にしてほしかったなぁと思ってしまいました。

 

 

 

これはイベントシーン終わりに急に現れたノアの尻のドアップ


続いて、シナリオについて。


ここからはメインストーリーエンディングまでのネタバレを含みますので、これから遊ぶ予定がある方はご注意下さい。

 

 


ゼノブレイド3で一番楽しめた点は、メインキャラであるノア、ミオ、ランツ、セナ、タイオン、ユーニ、そしてリクとマナナの旅を見届けられたことです。
シナリオ上での掘り下げはもちろんですが、フィールドを探索中に何かを見つけたら「あっちに何かあるぜ!」と言ってくれたり、天気や朝昼夜の変化に「雨かぁ」「もう夜かよ」と言及したり、戦闘中は騒がしい程に喋ってくれる。キャラの掛け合いには事欠かない。
休憩ポイントで休んでいるときは、ノアとミオが一緒に笛を吹いたり、ランツとセナが筋トレしていたりと、セリフは無くても仲良くリラックスしている様子を見せてくれる。
また、本作ではクエストの発生に「相談」というシステムが必要となっており、耳にした噂をパーティメンバーで話し合うところが見れます。一つの物事に対して各キャラの考え方やスタンスの違いが垣間見えるので、よりキャラクターに愛着が湧く。


出会いは敵同士、行動を共にしたのは成り行き上仕方なく。それでも旅を続けるうちにお互いを知り、認めあい、支えあうようになっていく。
その一連の流れに説得力を付与すると同時に、どうしようもない「エモさ」を重ねてくる。これをシナリオだけじゃなくてゲームシステムの至る所に組み込んでいるのは、ゼノブレイド3の素晴らしい部分だよなと強く感じました。

 

 

 

作中屈指の萌えシーン


特にお気に入りなのはタイオンとユーニのコンビですかね。


パーティの頭脳として理性的に常識的に振舞おうとするタイオンも、勢いや感情を優先しがちなメンバーと絆を深めるうちに徐々に染まっていき、苦笑いしながらも「君たちならこうするだろう?」「言っても聞かないだろうから仕方がない」と合わせてくれるようになる。メンバーの中では一番変化が分かりやすいキャラでしたね。なんだかんだでタイオンも理性より感情優先しがちなタイプで、愛されいじられキャラのポジションを不動としているところも好きです。マフラーをバカにされてキレるくだりは笑わざるを得ない。


そんなタイオンの相方であるユーニは、口が悪く喧嘩っ早い、ランツと同じく直情タイプのキャラが初見の印象でしたが、過去――再生される前の記憶が蘇り、メビウスに対して恐怖してしまう等、作中で一番「弱さ」を見せてくれたキャラ。ランツもそうでしたが、強がる人ほど自分の弱さを恥じ、隠したがる。


「恐怖に怯まず前に進むこと」はストーリー中のテーマとなっており、共に過去の恐怖に囚われながらも、それでも前に進むことを決めたタイオンとユーニは、アイオニオンでの旅を通じて最も印象に残ったコンビでした。恋愛方面では終始ユーニが上に立っていたのもポイント高し。

 

 

 

 

 


ゼノブレイド3のメインストーリーでは、「悲劇の上に成り立つ永遠」「未来へ進むことへの恐怖」「停滞する今より不確かな未来を望む」等、非常に青臭いテーマが、非常に青臭く描かれます。
誰だって、先に進むことは怖い。今が幸せなら、今を続ければいいじゃないか。
黒幕であるゼットの思想を、ノアたちは否定しません。やり方は間違っていても、その考え事体は間違いじゃないと。
ヨランやシャナイアを通じて描かれた「持たざる者の葛藤」も、明確な回答は示さない。
それでも自分たちは未来を望むと、メビウスが支配する世界からの脱却を訴える。
正しいと思って取った行動が、必ずしも正しい結果に繋がるとは限らない――


メインテーマに対する感じ方は、プレイヤーの世代によって大分異なったんじゃないかと、自分は思いました。
自分の前に無数に広がっていた道は、歳を重ねるごとに狭まっていき、いつしか選ぶことすらできなくなる。
選んだ時点では、その道が正しいかなんて分からないし、選んだ道が崖に繋がっていると分かっても、引き返すことはできない。
かと言ってずっと立ち止まっていても何も変わらないし、急に足元が崩れてしまうこともある。
自分が今どんな道を歩いているのか。どんな選択をしてきたのか。前を向いているのか後ろを振り返っているのか俯いているのか――
プレイヤーの立場によって、ノアたちに共感するのか、エヌの絶望に頷くのか、ゼットの思想に理想を見てしまうのか、感じ方が大きく変わると思います。


かくいう自分は、ノアたちが懸命に足掻く姿を見て「若いなぁ」としみじみ感じてしまい、老いを再認識する結果になりました。
ストーリーに入り込むのではなく、一歩引いた立場から見てしまう辺り、歳を取ったことを強く実感します。
もう、彼らと一緒に夢を見られる歳じゃないんだな、と。

 

 

 

 

 

「老い」を実感したもうひとつの点は、膨大な量のシナリオに対する感じ方でしょうか。
今回、自分はメインストーリーとヒーロー加入に必要なクエスト、そしてメイン6人の覚醒クエストのみをクリアし、その他のサブクエストはほとんど未消化のままクリアしました。
これは別にシナリオがつまらなかったわけではなく、単純に数が多すぎて辟易したからです。
ゼノブレイドはメインキャラだけではなく、各地に住むNPCそれぞれに人生があり、関係性があることを描いてくれます。
サブクエストはそんなアイオニオンという世界に暮らす人々の様子を描き、いわば作品全体の深掘りをしてくれるのですが、あまりにも量が膨大。1つのメインクエストをクリアしたら10個のサブクエストが発生する感じ。
これを「やり込み要素満点で嬉しい!」と感じるか、「やること多過ぎだろ……」と感じるかは人によって違うと思いますが、自分は元々後者の気が強かったのに、オッサンになったことでさらにその傾向が強化されました。


昨今、作品をオススメする際に「〇巻までは読んで!」「〇章まではプレイして!」といった文言をよく見かけますが、それに対しても「どれだけ時間かかるねん」と否定的な感情から入ってしまうんですよね。
「やり込み要素満載!」をセールスポイントだと感じられなくなっている。タイムパフォーマンスを言い訳にしてしまう。


本当に、嫌な歳の取り方をしたもんです。

 

 

 

 

 

最後に、個人的な好き嫌いの感想を。

 

まず、好きポイント。

 

シナリオのボリュームに比例するように、本作ではイベントシーン、カットシーンを眺めている時間が多くなりますが、巧みなカメラワークと演出力が随所に光っていたと感じました。そのまま抜き出せば映像作品として再構成できるんじゃないかと思ったくらいに。
特にバトルシーンではカメラを大きく、かつ細かく動かしてスピード感を際立たせており、この感覚を実際のバトルでも体感出来たらなぁと。勿体ない。
ボリュームがボリュームなので若干演出過多でくどく感じてしまう部分もありましたが、許容範囲内。
カットシーンの演出力は、物語を盛り上げることに一役も二役も買っていたと思います。


細かいところでは、ウロボロス体のデザインが、ゼノブレイド以前のゼノ作品を彷彿とさせるもので嬉しかったですね。ヴェルトールとかKOS-MOSとか。僕は未だにゼノサーガに登場するESアシェルがたまらなく好きです。
ゼノシリーズのSFファンタジーな世界観なりロボデザインは、自分の好みと非常にマッチしていて最高でした。いいぞモノリスソフトもっと性癖出していけ。

 

 

 

 

右が下記で言及するゴンドウ



次に、嫌いポイント。


ストーリー5話から登場する、シティ長老の娘で、ヒーローの一人でもあるゴンドウですが、このキャラがまぁーーーーーーーーーー好きになれなくて。
ノアたちに絡んできた初見の印象からかなり悪かったのに、特に改善することもなくそのまま重要人物のポジションに収まったので、大分プレイ意欲が削がれました。シャナイアの離反ってお前が何とか出来たんじゃねえのかって。まあ親が大分クズだったんで原因はそっちにあるかもですが。


5話の収容所脱出から6話って、この作品におけるひとつのクライシスポイントというか、ここまで仄めかすだけだったエヌとエム、そしてメビウスに関する謎が明かされ、囚われの身のままミオの寿命が来てしまい消滅を見届けることになり、そこからミオとエムが入れ替わっていた事実が明かされる怒涛の展開なんですよ。
その入り口部分である収容所のくだりでゴンドウが出てきて物凄いテンション下げられたので、イマイチ乗り切れなかったのがとても悔しい。
もしかしたらもっと心を揺さぶられて、それまでの不満なんか全部吹き飛ぶくらい感動したかもしれないのに、そうならなかった。冷めた気持ちの方が広がってしまった。
セナのサイドストーリーが実質ゴンドウとシャナイアの話だったことも、すっげー不満でした。セナはメインキャラの中でもちょっと掘り下げが足りないと感じていた分、余計に。これはゴンドウの覚醒クエストでやればいい話だろ……

 

 

 

 

 

総括すると、分かっていて注文したはずなのに、予想以上の特盛っぷりと味付けの濃さを味わうことになり、「若い頃なら完食できていたはずなのに……」と自らの老いを嘆きながら、半分くらい残してしまった感じでした。ゼノブレイド3。
日々の生活もさることながら、こうして「自分が好きなもの」で老化を感じてしまうのは、言いようのない虚しさを覚えます。

 

 

老いた根っこじゃ、充分な水分を吸い上げることは出来ないんだよ。
……悲しいけど、これが現実ってやつさ。

方舟ショックが抜けない

 

各所で評判で気になっていたミステリー小説、「方舟」を読んだ。

 

 

※ここからネタバレ無しのぼやきが始まりますが、今後読む予定がある方はあらすじ以外の情報を仕入れずに読むことを強くオススメします。

 

 

 

 

 

 

 

はぁー…………

 

 

 

 

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はぁー………………………………

 

 

 

 

 

 

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はぁー……………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

文字通り、言葉を失う。ページをめくる指は震え、妙に喉が渇いていた。

 

読書と言えばラノベ、そのラノベすらも昨今は触れずに活字離れしてしまった自分。

ミステリーどころか、そもそも一般小説をロクに読んでこなかったので、語れるほどの知識がない自分。

そんなにわか丸出しの自分でも、絶句してしまうほどの衝撃。

帯の推薦文や各所の感想で、オチが凄まじいことが分かっていても、なお。

これまで創作物で味わった衝撃の中では、一番かもしれない。

 

 

これを越える衝撃は、しばらく味わえそうにない。

ファイアーエムブレム エンゲージ 感想 木村良平に筋トレ褒めてもらう合間に世界を救う劇場版オールスターFE

※ネタバレ有ですご注意ください。

 

 

 

邪竜との戦いで傷つき、千年の眠りについていた主人公、神竜リュール。
目覚めた彼or彼女は、母親である神竜ルミエルとの再会を果たすも、自身の名前以外の記憶を失っていた。
それでも、愛する我が子が目覚めてくれたことを喜ぶルミエル。
しかし、幸せな時間は瞬く間に終わりを告げる。
謎の集団による、突然の襲撃。ルミエルは愛する我が子をかばい、命を落としてしまう。
悲しみに沈む主人公だったが、母の願いを胸に、世界を救う旅に出ることに。
まずは本拠地となる「空島ソラネル」で、出会った仲間たちと交流を深めることになるが……

 

 

 



うん、筋肉体操!!!!

 


発売日に購入したものの、ブルアカのシナリオを読むことに夢中になって、すっかり始めるのが遅れてしまったFEエンゲージ
ソシャゲの波が落ち着いたので、ようやっとプレイし始めて、クリアしました。
事前情報では歴代のFEキャラが登場すると聞いて「FE無双みたいな派生作品なんだろうなぁ」と勝手に決めつけていたのですが、ちゃんと調べたら伝統のSRPGかつ本作オリジナルキャラも出ると知り、俄然購入意欲が増しました。
風花雪月以来久々のFEでしたが、なんやかんや言って夢中になって遊べました。
ヌルゲーマーなので難易度上げて緊張感マシマシの攻略を楽しむというよりは、好きなキャラを育てて無双させるほうが好きなのですが、最近のFEはどちらの層にも配慮してくれているのがありがたいですね。ワイ、封印ノーマルでも難しいって感じるレベルやねん。

 

ちなみに、風花雪月の感想記事はこちら。

 

moonyuseiniwaka.hatenablog.com

moonyuseiniwaka.hatenablog.com

moonyuseiniwaka.hatenablog.com


難易度ノーマルなら強ユニット突撃させるだけでクリアできた風花雪月と比べると、敵の命中率が上がる+本作から導入されたチェイン攻撃のせいで被弾が増えるため、考え無しの進軍だと前衛ユニットが袋叩きにされたり、あっさり裏取りされて後衛ユニットが一発で落ちたりと、ヌルゲーマーにはなかなか歯ごたえのある難しさでした。リンの外伝マップで何度時を戻したことか……
歴代キャラとのエンゲージシステム他、終盤まで行けばキャラを無限に成長&クラスチェンジさせることもできるし、(自分は全く触らなかったものの)連戦マップやオンライン対戦等もあるようなので、単純に難易度を上げる以外にも様々なやり込み要素があり、好きな人にはたまらないゲームだったんじゃないでしょうか、FEエンゲージ。

 

 

 

筋肉体操終えた後、「めんどくせえ……」と不貞腐れているように見える顔すこ



やり込み要素と言えば、本作には拠点で遊べるミニゲームが何種かあるんですが、その中の一つが冒頭で挙げた「筋肉体操」です。
最初に開放されるミニゲームで、バーの上下運動に合わせてタイミングよくボタンを押したり、落ちてきた矢印に対応した方向キーを押したり音ゲーと、三種類のゲームが遊べます。好きな人だけ遊べばいい、スルーしてもデメリットはない箸休め的なものなのですが、この筋肉体操は、成功させると「絆のかけら」というガチャアイテムがもらえる他に、主人公のステータスが次のマップのみ微増するんですね。
レベルアップ時の1ピンに嘆き、ステータス永続上昇のアイテムは限りがあるFEで、微量とはいえノーデメリットでパラメータが上がるのって滅茶苦茶貴重じゃないですか!?
その感覚が刷り込まれているせいで、1マップクリアして本拠地に戻っては、アルフレッド役の木村良平ボイスで「がんばれ!」「カッコいいよ!」と筋トレを応援してもらわなければならない衝動に駆られてしまうのです。面倒くさいと思っても、単騎無双できるほどにレベルアップしてても、体が勝手に筋肉体操しに行ってしまう……悔しいビクンビクン。
それが終わったら、馬糞を含めたアイテムを拾い集め、飯を食い、犬を撫でてウ〇コを出させて、寝起きボイスを聴くために寝るというローテーションが待っているのだ……

 

 

 

 

 

本拠地探索は、風花雪月と比べると要素が減って楽になったし、強制じゃなくなったので面倒なら全スルー可能になったんですが、反面、シナリオ進行に合わせて話す内容が変わる場面が一部のみになってしまい、全体的に味気なくなってしまったなぁ、と。
本拠地だと私服になったり、主人公以外も着せ替えが楽しめたりするようになったり、色んな場所でキャラがくつろいでいる姿を見られるようになったのは良かっただけに、ちょっと残念でした。もっと料理食えるように胃袋鍛えて神竜様。

 

 

本作の一番勿体ないポイントが、キャラクターの魅力を生かしてきれていないところだと思うんですよ。
いや、自分がプレイした中のFE作品ではキャラクターとの交流に重きを置いた風花雪月がむしろ異端で、仲間は多いものの個々の深掘りはそれでもない作品の方が多かった。これは「キャラクターをロストしたらその後一切登場しない。救済措置もない」といったFE恒例の要素が原因の一つであり、キャラAが生存or死亡、キャラBが生存or死亡でいちいちシナリオ差分を作っていたら、キリがないといった理由も分かります。
ただ、加入時の顔見せ以降は本筋に全く絡まず、支援会話を観なければそのキャラの性格や人間関係がほとんど分からないのは、仕方ないとはいえ本当に勿体ないなぁ、と。
仲間同士の絆を深めることが容易だった風花雪月と違い、エンゲージは主人公との支援値上げは贈り物連打で何とでもなるものの、仲間同士は一緒に出撃させて傍で戦わせてあげないと支援値が上がらないのでかなりの労力を要します(先日のアップデートで多少やりやすくなりましたが)。
普通にシナリオを進めるだけだと出撃メンバーも固定されがちなので、出番のないキャラの不遇っぷりが余計際立ってしまうという……戦闘後の散策パートで「また前線で戦わせてください」としょんぼりした様子を見せるのも、地味に心に来る……

 

 

 

 

 

おもしれー女筆頭


ここまで「勿体ない」と感じてしまうのは、支援会話が風花雪月に負けず劣らずキャラを深掘りしてくれていたから。
全体の半分も見れませんでしたが、おもしれーキャラてんこ盛りだったので、キャラの魅力に関しては他作品に引けを取ってない。
キャラロストしてしまった人が積まないように、出撃枠に対してユニットが多すぎるのは分かるのですが、もう少しキャラ数減らして支援会話を見やすくすれば良かったんじゃないかなぁ、と思わざるを得ません。


あと、最大の勿体ないポイントは、キャラ同士のペアエンドなかったことです!!!!
エンディングの各キャラのその後で誰と誰がくっついたのかを見るのがFEお楽しみポイントのひとつだったのに、誰も結ばれてなくてがっかりだよ!!
もっとカプ厨に優しくしてくれても良かったんじゃよ!? ただしユアンてめーは許さん。

 

 

 

 

 


シナリオの大筋は「邪竜が復活したので倒す」といった良く言えば王道、悪く言えば先が読める内容でしたが、終盤の各要素の拾い上げ方は上手いなぁと、結構引き込まれました。主人公のキカイダーちっくなカラーリングもちゃんと意味あってびっくり。
ただ、味方陣営の掘り下げが支援会話に全振りされている分、やたらストーリー中で敵陣営のエピソード語られるのはどうなのかなと首傾げましたが。セピア引っ張り過ぎ!

 

 

ずっと引っかかっていた「これ歴代FEキャラ登場させる意味ある?」も、作中でそれなりの理由付けがあったので、納得は出来ました。ああ、映画仮面ラ〇ダーばりのオールスターやりたかったんだなって。
派生作品であるFE無双や、ガチャ有のヒーローズはともかく、FEってそんなオールスター感をプッシュするようなシリーズだったっけか? という疑問はまだ残っているのですが、ヒーローズで初めてFEに触れた人にとっては、知ってるキャラが出るから手に取りやすいかもしれませんね。

 

 

 

 


とまあシナリオ面に関してはそこまで熱くはなれなかったのですが。
個人的にぶっ刺さったのが、ヴェイルの突き落とし方。


ヴェイルは、敵に不意を突かれそうになっていた主人公を助けた謎の少女として登場し、それがきっかけで友達になるのだが、その正体は邪竜の娘で、敵の幹部とも知り合いだったことが明かされる。
また、ヴェイルには心優しい本来の人格の他に、邪竜の娘として相応しくあるよう作られた裏人格が存在し、自分では知らない=裏人格が体を動かしているときに、主人公の母親ルミエルを殺害する等、数々の凶行に及んでおり、敵の本拠地に乗り込んだ主人公一行を窮地に陥れる。
そんなことがあったとはつゆ知らず、目覚めた表人格のヴェイルは、主人公との再会を喜ぶのだが――

 

向けられる敵意。「もう友達じゃない」と冷酷に突き放される。

 

この時点では主人公たちもヴェイルに裏人格があることを知らないため、まあ気持ちは分からなくもないのですが、明らかに様子違うんだから少しは事情訊いてやれよと……
それはともかくとして、ヴェイル側からしてみるといきなり友達の態度が一変し、身に覚えのない凶事を糾弾される。
しかも、「自分はそんなことやっていない」と弁明しても、欠片も信じてもらえない。
それは当然。だって、「本当は自分がやったのだから」。
知らない内に血に染まる両手。知らない内に積み重なる罪。知らない内に断絶する友達との絆。
このメンタルの追い込み方がね……その……匠の業過ぎてね……
ヴェイルから事情を聞いた敵幹部のセピアやグリも、すぐには真実を教えず「それはきっと誤解だ」とはぐらかすのもたまんねぇ~もう少し種明かしを引っ張っても良かった位。
何というか、「悲劇のヒロイン」として、満点の描かれ方だったんじゃないでしょうか。

 

 

 

ここまで突き落とされたからこそ、悲劇で終わることなく、報われてよかったねと心から思えるんですよ(恍惚の笑み)。
「キャラクターが不幸な目に合うのが好き」なんて性癖は持ち合わせていないのですが、本作でこのポイントが一番心に残ったかもしれません。

 

 

 

 

 

おっぱいの……ほくろ!!!!


その他良かった点は、まずキャラクターのモデリング。キャラデザをそっくりそのまま3Dモデルに落とし込んでて素晴らしい。
そして、さらにプッシュしたいのは、戦闘アニメのスピード感とカメラワーク。
エンゲージユニットの必殺技はもちろんのこと、通常攻撃のモーションや、クリティカル時の表情アップ等、FEとは思えない(失礼)ほどカッコよく、特に剣や斧といった近接系ユニットのモーションは何度見ても飽きないクオリティ。
最初に仲間になるシーフのユナカですが、キャラ自体の二面性も相まって、必殺モーションで惚れてしまった人も多いのでは?
次回作がエンゲージシリーズを続けるのか、完全新作になるのかは分かりませんが、この路線はマジで継続してほしい。出来れば魔法攻撃組のモーションももう少し凝ってあげて欲しいです。

 

 

 

 

 


最後に、ちょろっと自分のプレイ状況とかを。
一軍メンバーは強制出撃の主人公(男)の他に、ルイ、ユナカ、スタルーク、ラピス、アイビー、オルテンシア、アンナさん、パネトネ、ゴルドマリー、セアダス、ヴェイルで、最終盤出撃枠が増えたときにモーヴとロサードでした。女比率高いですね……へへ……
使いやすかったのは魔法キャラなのに耐久も高いアイビー&攻撃も支援もこなせる万能オルテンシアのイルシオン王女姉妹。終盤こそパワー不足を感じたものの、紋章士リンとの相性が抜群だったスタルーク、火力最強でハマれば爽快のパネトネでしょうか。パネトネは頼りにし過ぎてフルボッコパターンも何度かあったのですまん。
ラピスは「同じ剣枠ならカゲツのほうが強い」って情報見ちゃったんですが、ビジュアルが好みだったのと、支援会話の度に貧乏キャラが強化され(後日談では芋女神の称号を得た)、どんどん好きになったのでずっと使ってました。意外に力が伸びたので、最強回避盾キャラになったなー
逆にユナカはステの伸びがイマイチで、思った以上に避けない&火力も出ないでちょっぴり運用しづらかったです。まあそれでもカムイと組ませると凶悪だったんですが。

 

 

性能抜きにして好きだったキャラは、やっぱりゴルドマリーですかね。
ビジュアル見たときから気になってたんですが、中身が予想以上におもしれー女だった。同性受け悪そうな性格なのに、結構女性キャラとの支援会話あって草なんだ。パネトネみたいに常識外の人に振り回されるの好き。
あとは、アイビー王女が割と茶目っ気たっぷりで、大分印象変わりました。アイビー王女もそうですが、セリーヌ王女も愛が重いよ!!

 


ちなみに僕は、約束の指輪の渡し方が分からず、誰とも結ばれないままエンディングを迎えました。
いやマイルームのチェストとか調べなくない!? 最終決戦に向かう前に一言アナウンスしてくれ!!!!

 

 

 

 

指輪磨きのシュールさも伝えておきたい


シナリオも分岐なく一本道なのでさすがに周回する気は起きませんが、楽しめましたFEエンゲージ。
同じシステムで、DS組の覚醒とかifリメイクしてくれないかなぁ。

アークナイツ 【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】 感想 ただ、最大限の感謝を【ネタバレ有】

 

積み上げた仮面は、悲しみの記憶であり、無力さの象徴。
しかし、それは。
彼女の「覚悟」を支える、礎でもあるのだ。

 

 

以前に書いたかもしれませんが、アークナイツのアニメ化を知ったとき、期待と同程度の不安があったんですね。
原作がゲームのアニメ化、特にソシャゲは非常に難しい。
ひとたび舵取りを間違えれば、新規層からは「つまらなくない?」とケチをつけられ、原作ファンからは「原作の面白さが全然伝わらない。もっとこうしろ」と批判される。
自分はソシャゲ原作のアニメを深掘り批評できるほど本数を見ているわけではないのですが、新規既存共に好評な作品は、原作シナリオを大幅にアレンジしている例が多いんじゃないかという印象があります。
退屈な部分はカットする、もしくはアニメ専用にほぼ作り直しレベルの改変を行う。
一方で、キャラクターは原作のイメージを損なわぬよう大切に扱い、出番が偏らないよう配慮する。ゲームで人気だからといって贔屓し過ぎない。
こうした「広く浅く」受け入れてもらえるような作り方が、ソシャゲアニメにとってひとつの正解なんじゃないかと思います。

 


そうやって諸々を考えていくと、アークナイツはかなりアニメ化に向かない作品だった気がします。

 

・特殊な世界観に数々の固有名詞。難解な言い回し。
・作品の雰囲気もシナリオ自体もひたすら暗い。
・戦闘が集団戦メイン。
・人気キャラのほとんどがメインシナリオに絡まない。登場しない。
・主人公が後方援護タイプ。

 

一番最後の項目が特にネックで、ドクターの指揮能力の高さを映像で表現するのって至難の業だと思うんですよ。
分かりやすく戦場に飛び出して行って華麗に誰かを助けてもいけない、しかし後方でぼったちさせているわけにもいかない。
シナリオ中発言する機会は少ないものの、がっつり主軸に絡んでいるので存在を消すわけにも描写を薄くするわけにもいかない。
ソシャゲにありがちな色んなキャラから好き好きアピールされる要素もかなり薄いし、メインシナリオ中にはほぼ皆無。


な……なんて扱いの難しい主人公なんだ……ワルファリンにドーピングしてもらってムキムキになってレユニオンを蹴散らしていくサクセスストーリーの方にしたほうがいいんじゃと考えてしまうレベル……
それは冗談としても、ドクターが登場しないイベントシナリオ――(コラボだということを考えないようにして)初見にも優しく分かりやすくテラの厳しさも描いてくれるオペレーション・オリジニウムダストや、雰囲気が(アークナイツにしては)明るく、水着でサービスシーンもばっちりな密林の長辺りを映像化した方が、より新規層を取り込めるんじゃないかと、素人ながらに考えるくらいには不安でした。

 

 


放送日が近づくにつれて続々と情報解禁され、順当にメインシナリオを描くこと、全8話構成であること、ドクターがちゃんと喋ることを知るにつれ、何か不安の方が割合を占めるようになりました。
今でこそアークナイツの世界観やシナリオにどっぷり浸かっている身ですが、グローバル版のサービス開始日に初めて触ったときは、ストーリーにさっぱり惹かれなかったんですよね。
物語が始まっていきなり敵地からの脱出戦、乱れ飛ぶ固有名詞、続々と現れるキャラクター……
「一回腰を落ち着けて説明してくれないか? たぶん理解できないけど」と言いたくなるような情報の渦に、これはついていけないと早々に離れました。
それを、ゲームよりも遥かに短い尺しかないアニメで? しかも他作品よりも少ない8話で? 普通に無理では?

 

 

 

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……そんな杞憂を、全部吹き飛ばしてくれたアニメ化でした。
ありがとう……本当にそれしか言葉が見つからない……

 


早々に二期決定しましたが、「このスタッフの方々に任せれば安心」と不安ゼロの期待MAXになりましたね、ええ。


一番に感じたのは、とにかく「原作を大事にすること」と「アニメから入った人への配慮」のバランスが絶妙だったこと。


原典の雰囲気を大切にしつつも、その中で最大限アニメ組に伝わりやすいような表現、構成を組み立てていく。
説明すること、やらなければならないことが多い以上、どうしても説明不足になってしまい、予備知識がないと置いてけぼりになってしまうだろうストーリーの中で、脱落する人が少しでも減るように細かく細かく配慮していたのが、ゲーム勢である自分にも伝わってきました。
その上で、決して単なる「モブ」ではない名もなきキャラクターたちの描写や、ロドス艦内で過ごすオペレーターたちのチラ見せ等、原作ファンにも嬉しい目配せも忘れない。これ以上無いと言ってもいいくらい、理想的なアニメ化でした。

 

前述の「広く浅く」ではない、あくまで原作に沿いながら、それをアニメという別媒体で出力するために解きほぐし、再構成していく。原作ファンが夢見る形に近づけつつ、間口は出来る限り開いて。

 

あくまで個人の意見にはなりますが。
このアニメを見て惹かれるものがなければ、原作のシナリオも肌に合わないからプレイをオススメしない、もしくは(勿体ないけど)スキップしてゲーム部分だけを楽しんだほうが良い。そう言えるくらい「アークナイツ」という作品の入り口として、最適なアニメでした。

 

 

 

 


トラウマ……と表現すると過剰かもしれませんが、アークナイツアニメを8話まで見終えるまで「良かった」と言い切れない大きな懸念がありまして。


それは、「露骨過ぎるファンサービスを盛り込む」こと。


以前、グランブルーファンタジー、略してグラブルがアニメ化され、その一期を見ていた時。
原作ゲームを触ったことはあったものの、シナリオはよく言えば王道、悪く言えばありがちで大した印象に残っていなかったのですが、アニメで改めて一から見直すと、予想以上に楽しめていたし、グランを始めとしたメインシナリオのメンバーにも愛着が湧いていたんですよ。
そのままストレートに終わってくれれば「良作だったな」と心中でうんうん頷きつつ、もしかしたら当時すでに触らなくなっていた原作ゲームを再開した可能性があったくらい、いいアニメ化だったんです。


ところが、一期のラスボスであるリヴァイアサン戦にて。
ゲームの人気キャラたちが何の脈絡もなく続々と登場し、助太刀してくれる流れを見て、一気に熱が引いたんです。自分でも驚くくらい白けました。
「そこはメインキャラ達だけで乗り越える場面じゃないの?」と脳内ツッコミをした後、グラブルアニメに対する感情が反転したのを今でも覚えています。
仲間たちが助けに来てくれるシチュエーションはむしろ好きな方なんですが、納得のいく理由付けがないとただの水差しにしかならない。
この経験は随分時が経った今でも、自分の中に小さな傷を残しています。

 

 

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当時の感想記事。5年前……5年前!?

 

 


だから、三章ラストのスカルシュレッダー戦が怖くて仕方なかったんです。
原作を改変したとして、ニアールやドーベルマン教官が救援に来てくれるまでは、まだ許容できる。
シルバーアッシュやらソーンズやらスルトやらサリアやら、原作の強キャラたちがいきなり現れてレユニオンをぶっ飛ばし始めたらどうしようかと。
7話まで見て「ここまで原作を大事にしてくれてるんだからそんなことしないだろ」と信じつつも、最後の最後まで疑念を拭えなかった。「メインシナリオに絡まない人気キャラが大勢いる」、そのたった一つの共通項が、ずっと棘を刺していた。


だから、原作通りに、いや、原作よりも湿度高めで三章を描き切ってくれて、最後の不安の種が消えました。結末を知っていてなお胸を締め付けられる描写。OPのささやかでしかし意地の悪い差異。


ああ、アニメ化してくれて良かったと、心の底から思えたんです。

 

 

 

 

 

 

二期はサブタイトル的に六章まで、と予想しますが果たして。
個人的には五章から加速度的に面白くなるし、フロストノヴァ関連のエピソードは涙を禁じ得ないシーンがたくさんあるので、六章を最後までやってくれることを期待しつつ、放送を心待ちにしたいと思います。

発売日に買ったのに今更(4日前)クリアした男のポケモンスカーレット感想【ネタバレ有】

ネタバレ防止用サムネ

 

結局買ったんですよね、ポケモンスカーレット


好きか嫌いかで問われたらもちろん好きだし、プレイ時間が確保できないほど忙しいわけでもないのに、何故か新作が出る度に毎回購入を迷うんですよ、ポケモン
初報に心躍らせ、速攻で予約し、新たな世界での冒険を今か今かと待ちわびるほどの熱量はないというか……もちろん、「ストーリークリア後が本番」のような対戦ガチ勢でもないですしね。
繰り返しになりますが、自分にとってポケモンは「好きか嫌いかで言ったら好き」くらいのポジションなんです。実際、ナンバリングタイトルでプレイしていない作品もありますし、直近のアルセウスはスルーしちゃいましたし。

 

じゃあなんでスカーレット・バイオレットは買ったのかというと、単純に流行りに乗りたかったという短絡的な理由なんですね~
ポケモン初の完全オープンワールドや、登場する新ポケモンに惹かれたわけではなかった。剣盾の時は時間の余裕がかなりあったのでランクバトルに少しだけ手を出してみましたが、新作を機に復帰しようなんて気はなかった。
「話題についていきたいから」なんて半分義務感に駆られながら、パルデア地方に足を踏み入れたわけなんですけど。

 


めっっっっっっっっちゃ面白かったです!!!!

 


些事を忘れてゲームに没頭する、なんて経験、久しぶりに味わいました……
自分の嗜好上、「シナリオが面白くて没頭する」「ストーリーの続きが気になるからのめり込む」といった方向性は何度もあるんですが、単純にゲーム自体に夢中になる、という感覚は、長らく味わっていなかったと思います。

 

 

 

 


その一番の理由は、ポケモンオープンワールドの相性の良さ」でしょうか。


隅から隅までとは言わずとも、マップをそれなりに探索したい自分にとっては、オープンワールドって広すぎて逆に苦痛だったんですよ。
取りこぼしがストレスになるというか、道中の宝箱は全部回収したい性質なもんで。
探索しなかった部分にレアなアイテムが落ちている、なんてことがあったら嫌だから、とりあえず行けるところには行っておきたい。
で、探索の時間が長すぎたり、色んなイベントを並行して発生させてしまって本筋が分からなくなったりと、オープンワールドのメリットよりもデメリットをより強く感じてしまったんです。

 


そんな「マップを自由に散策することの楽しさ」を見出せなかった自分に、道筋を示してくれたのがポケモンでした。
街から一歩出れば、見慣れたポケモン、知らないポケモンが、あちこちに点在している。
少し足を延ばせば、別のポケモンが姿を見せる。じゃああっちに行ったら? こっちの道に進んだら? ここから崖を飛び降りたら?
見たことのない新ポケモンの登場にワクワクするのはもちろんのこと、別地方ではレアだったり、普通にはゲットできなかったりしたポケモンがとことこ歩いていると、「あ! ゲットしなきゃ!!」とテンション上がっちゃう。


横道に逸れ過ぎて明らかにレベルの高いポケモンと遭遇した時の緊迫感。でもこれ頑張ればゲットできるんじゃないかと思考を巡らせ、必死になってHPを削り、揺れるボールを祈りながら見つめる「原初の楽しみ」。
「ストーリーだけ楽しめればいいかな」なんて軽い気持ちで始めたのに、いつの間にか夢中になってパルデアの大地を駆け回っている。
これ、全く同じシステムだったとしても、完全新規タイトルで、全て見知らぬモンスターだったとしたら、ここまで夢中になれなかったんじゃないかと思ってしまい、ポケモンの「積み重ね」と「新鮮さ」をダブルパンチで繰り出せる強みを実感しました。


バトルシステムは今までと変わらず、安心を与えてくれるのもオッサンゲーマーにはありがたいところです。年食うと新しいこと覚えられなくなるからね……

 

 

 

 

 

ゲームとしての楽しさに加えて、シナリオとキャラクターがこれまた良い。
クリアするのが遅かったので「ストーリー良かった」という評判と、ちょこちょこネタバレ食らってたんですが、それでも最後までパルデアに浸れるくらい楽しませてもらいました。

 

ここからは、本編のネタバレを含みますので未クリアの方はご注意ください。

 

 

 

 

チャンピオンを目指すためのジム巡りと、○○団との戦いに加えて、本作ではヌシ探しという本筋が追加され、3つのエピソードを進めることになりますが、全部良かったです。いや、全部良かった


第一印象では「なんだこのエラそうなヤツ?」となりがちなペパー君が、まさかあんなにいいヤツで、相棒を助けるために必死になれる漢だったなんて……ボールが落ちてからの流れで涙した方も多いのではないでしょうか。


泣いたと言えばスター団の結束もそうで、姿を見せないマジボスを退学覚悟で待ち続けるスター団ボスたちの絆と、仲間たちを大切に想っているからこそ、退学させたくないし、命令は出来ないから掟に従いスター団を解散させようとするボタンの覚悟。
スター団の迷惑行為って本当に冒頭だけで、最初のボスを倒した時点で「悪い連中じゃないな」って分かるし、仲の良さが伝わってくる。
だからこそ、クラベル校長の粋な計らいによりハッピーエンドで幕を閉じてくれて、ああ良かったなぁって感動できました。

 

今までのポケモンって、ほとんどの作品で明確な悪役が現れて、それが「偉い立場の大人」であることが多かったと記憶しています。
本作でもラスボスは博士(のAI)なので、一応お約束を踏襲したと言えばそうなのですが、クラベル校長を始めとしたオレンジアカデミーの先生たちや、各地のジムリーダー、そして四天王と、「いい大人」を描いてくれたことが物凄く印象深かった(ポピーちゃんはまだ子供ですが)

 

特に、スター団を一方的に悪だと決めつけず、「ネルケ」として自らの足で歩み寄り、自らの耳で彼らの言葉を聞き、もっと良い道を見つけられるよう取り計らったクラベル校長は、ポケモン界の「大人像」を塗り替えた素晴らしいキャラクターなのではないかと思います。

 

個人的には、感情豊か過ぎてすぐ漢泣きしてしまうハッサクさんもツボでした。
あと、チリちゃんが夢女製造機になっているのは納得しかない。本作の四天王はバランス良すぎて過去作一好きなので、クリア後のジムリーダー訪問みたいに、四天王の面々とも追加イベント欲しかったです。追加DLC待ってるで!!

 

 

 


単純に要領の問題なのか、それとも代々続いてきたゲームデザインを守るためか、本作にもキャラクターボイスは入っておらず、テキストも簡素で、各キャラのセリフもそこまで長くありません。
ドット絵時代から比べたら表現方法に幅が出来たものの、他ゲームよりも明確に勝っているわけじゃない。
それでも、ここまで心に刺さるストーリー、愛着が湧くキャラクター達を生み出せるのは、脱帽するしかありません。


感受性が薄くなった大人でもこれなので、まだ多感な子供たちは、より濃い体験をしたんじゃないでしょうか。
そんな彼らに向けての問題提起として、「いじめ」「勝負事への向き合い方」「居場所」等、今後向き合うことがあるかもしれない題材を取り扱ったことも、ある種ポケモンらしいな、と思いました。

 

 

 

 

 

なんだこのボール!?

 

……と、ここまで良い点を語ってきましたが、不満がなかったわけではありません。
細かい要望としては「自由に行き先が決められるなら各地のボススポットのレベルを調整欲しかった」とか、「剣盾くらい主人公の服装をカスタマイズしたかった」等ありますが、最大の不満は方々から散々言われている「処理の重さ」です。これに尽きる。

 


プレイヤーがオープンワールドに慣れてきてしまい、探索の楽しみが薄れてきた終盤、大型ポケモンが集結するせいか余計にカクつくのは本当に何とかしてほしかった。オージャの湖とか探索する気が失せましたわ……
幸い自分は致命的なバグには遭遇しなかったものの、場面によってはせっかくの良シーンを台無しにしてしまうものもチラホラ目にしますし、何より、過去作の剣盾やアルセウスでは大して騒がれなかったバグ方面でここまで話題になってしまっているのは、勿体ないと言わざるを得ません。次回作はオープンワールドじゃなくてもいいかな……

 

地味にストレスだったのはショップの位置が分かりづらい。マップを見てもどの建物に入れるのかどの建物がハリボテなのかさっぱり分からない。
マップがマップとして機能していない問題は、もう少し何とかならなかったのかと……
ここも剣盾では全く気にならない部分だったので、過去作で出来ていたことが改悪されてしまうのは余計に印象悪くなりますね。わざマシンとか。

 


まあ、不満点のほとんどは、プレイした大半の人が感じていた部分と同じだったんじゃないかと。
あとは個人的な後悔として、バイクで爆走したかったからバイオレット買えばよかったなと思う気持ちがちょっぴりあります。あとソウブレイズ。
デザインだけで言ったらコライドンの方が好きなんだけどね!

 

 

 



最後に、ちょろっと旅パ語りをば。
新作が出た際は新ポケだけで旅パ組む、という方が多いと思うのですが、自分はそこまでこだわりなかったので、普通に自分が気に入ったポケモンで冒険してました。地味に好きなんですよねゴルダック


御三家はホゲータとニャオハで迷い、癒されるアホ面が決め手でホゲータ選択。最終進化のラウドボーンもカッコよくて好きなんですが、マスカーニャのえっちさも捨てがたかったな……と。ウェーニバルは……すまぬ動きがちょっと無理。

 

ポケモンでは断トツでデカヌチャン好きです。
御三家以外では旅パ採用率ナンバーワンなんじゃないですか? デカヌチャン。カヌチャンが序盤にゲットできるし、タイプも優秀だし。少なくとも、オタクは絶対採用してるでしょ。
剣盾のフェアリー三段階進化枠のブリムオンが「進化前の方が好きだったな……」派だったので、デカヌチャンのデザインにはニッコリ。小さい子が凶悪なデカい武器持ってるの最高だよなぁ!?

 

 

 

かわいい



ガチ対戦には手を出さない気持ちは変わりませんでしたが、追加DLCが出るならやりたいな、と思えるくらい楽しかったです、ポケモンSV。
SVのキャラを含んだAcacia見てみたい。

ライブアライブ(リメイク版)感想 錆びたアンテナを震わす「音」の力 

 

歳を重ねるごとに物事に対する関心が薄くなり、新しいことを始めようとする意欲が衰えていく……
と、こういった愚痴を書くのも、これで何度目になるでしょうか。
嫌いなもの、無関心なことはもちろんのこと、今まで大好きだった事柄に関しても、「面白そう!」「やってみたい!」といったポジティブな感情よりも、「面倒くさそう」「時間がない」といったネガティブな感情が先行するようになってしまう。
さらに酷いのは、SNS等で誰かが作品をオススメする際、「これは全人類プレイしろ」「このゲームをプレイせずしてRPGは語れない」といった強い言葉を使われると、逆に興味を失ってしまう天邪鬼っぷり。自分も使ったことある癖にね……
この鈍重さ、言い訳癖、アンテナの錆付きは、加齢によるものだけではなく、これまで趣味を共有できる人の輪を広げてこなかった自分の過ちでもあるのですが……

 


そんな「今まで楽しんでいるものを継続しているだけ」のにわかオタクっぷりに磨きがかかってしまった自分が、珍しくピクリと反応したゲームがあったんですよ。

 

 

 

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伝説のRPGとして名高い、ライブアライブのリメイク版です。


SFCで発売され、プレイしたことがなくても(ネットの海に浸かっていれば)一度は名前を聞いたことがある作品。
「あの世で俺に詫び続けろオルステッドーーー!」のセリフは現代でも擦られるほどの名言。また、心底楽しみにしている作品以外はあまりネタバレを気にせずむしろ嬉々として踏みに行く自分は、ライブアライブ最大の仕掛けとも言える「真相」も知っていました。
その頃は、どうせ自分じゃプレイしないだろうしなーと思っていましたし。はっきり言うなら、あんまり興味なかったんです。

 


そんな状態の自分が、リメイク発表記念のトレーラーを見て、心を揺り動かされた。

 


「オクトパストラベラー」で好評を博したHD-2Dによる、高級感を出しつつもドット絵の温かみを残したリメイク。
確かにドット絵世代の人間なので、HD-2Dの絵面に懐かしさや安心感を覚えました。
けれど、心を動かしたのは、錆びたアンテナが一番反応したのはそこじゃない。

 

ストーリーを知らなくても熱さが伝わる声優の方々の演技と、トレーラー後半で流れるMEGALOMANIAです。


音楽面については関心が薄く、好きな作品を語る際にはシナリオに重きを置きがちな人間なのですが、MEGALOMANIAだけは聞いてからすぐに「これなんて曲?」と調べるくらいにはびびっと来ました。その過程で知りましたが、ライブアライブは良曲揃いなことでも有名だったんですね……全然知らなんだ……

 


こうしてライブアライブに興味を持ち、いざ購入して、時間を掛けつつもクリアしました。
何かと忙しく時間がない現代人、時間があっても継続プレイしているソシャゲ等に時間を割かれ、じっくり腰を据えてゲームをする暇はないと嘆く人の多い昨今ですが、オムニバス形式で、一つの編をクリアするにはそこまで時間のかからないライブアライブは、プレイ間隔が空いてしまってもモチベーションを維持しやすくて助かりました。
通しのボリュームで見ると(やり込み要素を抜きにすれば)フルプライスのゲームにしては物足りなさがある、と言われれば確かにと頷いてしまいますが、エンディングまでが長すぎて途中で投げてしまうよりはいいかな、と個人的には思いましたね。

 

 

 

 


まず、一言で感想を述べると、めっちゃ面白かったです。
良作に触れた後、余韻に浸りながら他の方の感想やらレビューを漁るのが好きなのですが、今回のライブアライブリメイクでもそれを堪能することが出来ました。
前文で書いた通り、自分はゲーム体験にもシナリオ上での感動を求めるタイプで、その点もかなり満たされたのですが、ライブアライブが「面白かった」と感じることができたのはそこだけじゃありませんでした。

 


これは以前に聖剣伝説3のリメイクをプレイした時にも感じたのですが、SFC時代のゲームシナリオを「キャラクターを深める」ことを重視した現代のゲームに慣れてしまった身で体感すると、どうしても淡白に見えてしまうところがあるんですよね。このイベント、こんなにあっさり流していいの? みたいな。
もちろん、淡白=つまらないということではありません。ただ、もしライブアライブがリメイクではなく、新作として現代に作られていたとしたら、それぞれのシナリオのボリュームやキャラクターのセリフは、倍以上に膨れ上がっていたでしょう。
今は、とにかくキャラクターを好きになってもらうことが、最重要視されていると言っても過言ではないですから。

 


アンテナが錆付き、アニメも漫画も流し見してしまいがちな自分が、SFC版の原作ライブアライブをプレイしたとしたら。
想像ですが、リメイク版ほどの感動は得られなかったと思うんです。
ストーリーやセリフが今の時代に合わせて大幅加筆されたわけでもないのに、何故リメイク版のほうが感動できたと言えるのか?

 

 

 

 

その一番の要因は、「声」。

 

キャラクターたちの息吹を、心を、熱を伝えてくれた、声優さんの方々の演技があったからです。
各編のクライマックスを最高に盛り上げてくれる「声」と「曲」。流し見を絶対に許さない熱量。この場面でMEGALOMANIAが流れて熱くならないヤツなんていねえだろ! そうだろ、松ッ!!
ストーリーの威力を何倍も、何十倍をも高めてくれる「音」の力。これがあってこその感動なのだと、プレイを終えてから時間が経つにつれ、ひしひしと実感しております。
自分で熱を追う気力が衰えてしまった今、画面の向こう側から想像以上の熱を届けてもらいました。
ああ、まだ俺はゲームを好きでいられるんだ……なんて感傷的になってみたり。


今回触れなかったシナリオの内容についても、淡白とは表現しつつも28年前に作られたとは思えないほどの完成度の高さにでした。セリフも、今だからこそ余計に刺さる物も多い……
好きな編を一つ挙げろと言われたら功夫編とSF編で甲乙つけがたい……

 


switchをお持ちでRPGに飢えている方は、是非プレイしてみてはいかがでしょうか。
普通のRPGとはまた違った体験を得られると思いますよ。

 

 

 


最後に重大なネタバレを含んだ感想なのですが。

 

 

 


真エンディング、sinオディオって追加ボスだったんですね……クリアした後調べて知りました。
選ばなかった3人が助けに来る演出、最後にオルステッドを操作して魔王を討つ演出、あれは原作をプレイしていた人しか味わえない唯一無二の感動があっただろうなぁ……
最初からリメイク版を遊んでよかったと思っていましたが、この点に関してだけはSFC版をプレイしていなかったことを後悔です。

仮面ライダーオーズ 復活のコアメダル 感想 刻まれた思い出が邪魔をしてくる

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公開から日が経った今、この作品を観るということ。


以前ブログの他記事にも書いたかもしれないが、自分が仮面ライダーをちゃんと見始めたのは「W」からであり、W、オーズと非常に完成度の高い作品を入り口にしてしまったものだから、変に目が肥えたオタクになってしまった。
ただ、オーズという作品が自分の中でとてつもなく大きなものだったかといわれるとそうではなく、だから完結編が劇場公開されても、未だ出口の見えないコロナ禍の中でリスクを抱えてまで劇場に足を運ぶかどうか迷ってしまい、見に行くのが遅くなってしまった。

 

詳細なネタバレは見ないようにしていたものの、割と深刻なレベルで賛否が真っ二つに分かれていることは知っていた。
自分は人の意見に流されやすい人間なので、ネタバレが伏せてあっても深い感想ツイートなどは避けつつ、「何故賛否が分かれているのか」を確かめに映画館へと赴いた。

 

ちなみに、自分は「これこそオーズ」「こんなのオーズじゃない」と論じられるほど愛も知識も深くないことを前置きしておきます。

 


以下、ネタバレを含む感想になるので注意です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「賛否が分かれる内容」という点を踏まえた上で見ると、「映司は人造グリードであるゴーダに体を乗っ取られていることでかろうじて生き永らえており、実質的には死んでいる」という事実が明かされた時点で……いや、それ以前に冒頭で復活したアンクの前に現れた映司の様子が少しおかしい時点で、誰かが命を落とすだろうこと、ハッピーエンドにはならないだろうことを察してしまった。
映司がそのまま死んでしまうのか、それとも瀕死の映司を助けるために再度アンクが犠牲になるのか……例え結末が予想できたとしても、その過程が納得のいくものなら安易に否定してはならない。そう思いながらスクリーンを見続けた。


終幕で、火野映司は死んだ。


1年間を駆け抜けてきた最終回ではなく、10年後に描かれた「完結編」で迎えるヒーローの死。
その衝撃は、自分と違い真っ新な状態で見た人々にとって凄まじいものだっただろうし、「仮面ライダーオーズ」という作品とどう捉えていたかによって、この「終わり」を受け入れられるかどうか分かれるだろう。

 

もし、自分が公開初日に何のネタバレも匂わせもない状態で鑑賞したら、どうだっただろうか。
「アンクの復活」と「手が届いた明日」の代償を、自らの命で払った映司。
欲望を満たすためには、同等の対価が必要になる。その真理を貫くために、安易なご都合主義を盛り込まなかった結末。
受け入れられたか、否か。正直判別できない。
ただ、「ヒーロータイム」を卒業したからこそ、10年の時を経たからこそ描ける「完結編」なんだという点については、何度でも首を縦に触れるくらい納得した。一夜限りのお祭り騒ぎではなく、ここからまた新たなオーズを描いていくためではなく、「明確に仮面ライダーオーズを終わらせる」制作陣の覚悟は、作品とパンフレットのインタビューを通じて痛いほど伝わってきた。

 


だからこそ。

 

だからこそ。

 


ポジティブでもネガティブでも、内容について語りたかった。ここがよかったあそこがよかったああじゃないこうじゃないと言葉を並べたかった。
自分は、その土俵に上がれなかった。

 

 

 

理由は、「最終回の再演」にある。

 


もはや内容を語るまでもないだろう、TVシリーズの最終回。アンクの命を賭したタジャドルコンボへの変身と、ドクター真木との決着。割れるコアメダルと「命を得た」と語るグリードとの別れ。10年経った今でも鮮明に思い出せる、心に刻まれた最終回である。
自分としてはあのラストと「MOVIE大戦MEGAMAX」があったからこそ「仮面ライダーオーズ」という作品の評価が確立されたと思っているし、後世に語り継ぐに相応しい名シーンだと今でも言える。

 

オーズといえば真っ先に浮かぶ人も多いであろう、象徴的なラスト。

 

厄介なことに、オタクは時が経てば経つほど昔に自分が感銘を受けたものを神格化しがちで、安易に触れてほしくなくなる。
自分にとって、オーズの最終回もその域に入っていたのだ。
それを痛感したのは、「平成ジェネレーションFINAL」での「一度目の再演」である。
映司役である渡部さんの意見も取り入れたというオーズパートは、(疑似的とはいえ)アンクの復活を劇的に演出してくれた。
ただ、そこから再度の別れに至るまではまさしく最終回の再演であり、セリフまで同じなのは度が過ぎる、とスクリーンから目を逸らしたくなるほどの拒絶反応が出てしまった。雑な言い方をするなら、二次創作を見ているようで恥ずかしくなってしまったのだ。

 

 

moonyuseiniwaka.hatenablog.com

 

あれは「オーズの最終回」のためのシーンで、他に持ち出してほしくない。
最終回以外で、あのシーンは見たくないのだ。

 

 

そんな神格化をしてしまっていたからこそ、今回の完結編で映司に憑依したアンクが、タジャドルコンボエタニティに変身する直前。
心の中の自分は、「ま……まさか……や……やめてくれ……頼む……」と必死に祈り続けていた。
あれは、あそこまでアンクと共に辿り着いた映司だからこそ言えたセリフであり、「エモい展開」を演出するために持ち出していいものじゃない。今、ここで、再現するものじゃない。
……冷静になった今なら、アンクが意趣返しをしたという風にも取れる。だが、一度目の再演で刺さった棘が、判断力を奪っていた。
そして、アンクが「お前が一番やりたいこと」と口にした瞬間、「あっ…………終わった…………」と自分の心は急速に冷え切ってしまった。あれこれ考えていたこと、感じていたことが全部崩れ去った。映司の死を受け入れるどうこうを考えられる熱は、ほとんど残っていなかった。


一連の流れを「最終回の焼き増し」「エモ展開の演出」と捉えてしまった自分のせいで、「復活のコアメダル」もまた二次創作的な枠に入ってしまった。
公式が打ち出した覚悟を、刻まれた思い出が邪魔したせいで、きちんと受け取れなかったのだ。

 

 

 

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「復活のコアメダル」は映司ではなくアンクの湿度を十二分に盛り込んだ作品で、アンクが映司のことをどれだけ認めていたか、どれだけ信頼していたか、どれだけ大切に思っていたかを感じられる作品だった。

 


だからこそ。

 

だからこそ――

 


タジャドルコンボエタニティに変身し、決着に至るまでのシーンは、テレビシリーズ最終回を模したもの、映司とアンクの立場を入れ替えたものではなく、アンク自身の言葉と、最終回に囚われない演出が見たかった。


例え結末がハッピーエンドだったとしても、この一点だけはずっと受け入れられないだろう。
刻まれた思い出が、風化してしまうまでは。